第14話
僕はしばらく琳が走り去った方向を見つめていた。
追いかけなくて良いのだろうか。
そもそも何で追いかけなきゃいけないんだ?
琳は僕の最愛の人を殺したんだ。
何で、そんな子を追いかけなきゃいけない?放っておけば良い。気にしなくて良い。勝手にさせとけば良いんだ。
でも・・・。
僕は結香に、あの子の傍に居てって言われた。僕が居たらあの子は寂しくないからって。
ああ。琳が僕を殺さなかった理由は、そういう事か。
枷を外して自由になりたくても、1人にはなりたく無かった。 誰かに傍に居て欲しかったんだ。
本当に、君達は不器用だね。
言えないんだ。母親になれないとも、傍に居て欲しいとも。
僕は、貴女の為に、君の為に、存在してるのかもね。
僕は立ち上がり、琳の元へ走った。
彼女の居場所は、ここしかない。
桜井の家の今の襖を開けると、案の定琳は居た。泣きながら、震えながら部屋の隅で膝を抱えてうずくまって居た。琳の傍には包丁が落ちていた。
「何で、何で、人を殺すのは容易かったのに、自分を殺すのはこんなに怖いの?」
僕の存在に気付いているのか、琳は口を開いた。
「琳・・・」
「結局私はあの人と言う枷を外せなかった。今でも苦しいもの。自由になれてない。それに1人だし。もう、疲れた」
琳は声をあげて泣いた。
泣かないで、泣かないでよ。僕は結香を殺した君が許せないけど、でも、君の傍に居る事が君の救いになるなら、結香の救いになるなら、それで良い。
「僕が、傍に居る」
君が寂しく無い様に。
君が自由になれる様に。
僕の頭に貴女の声が聞こえる。
『ナイトって言う名前は、琳が考えたのよ。ナイト、かっこいい名前ね。あの子を笑顔に出来る素敵なナイト(Knight)になってね』
大丈夫だよ。結香。
今度は僕が、貴女が大好きだったあの子の、琳の笑顔を守るから。君が出来なかった分、僕が琳を寂しくはさせないから。
僕は膝を抱えてうずくまる琳をそっと抱きしめた。
「1人じゃ無いから」
僕が、結香と琳の想いを繋ぐ存在になろう。




