第11話〜琳・回想〜
私が14歳の時に、父と母は離婚した。
母の浮気が原因だった。
父が毎日遅くまで働き家計を支えていたのに、母はそのお金のほとんどを遊びに使っていた。私が学校に行くお金さえ無くなりかけていた。
父が母と離婚する事を決めた時、泣きながら話してくれた。
「もう、耐えられない」と。
私に与えられた選択肢は二つだった。母についていくか、父についていくか。けれども、母にとって私は煩わしい存在でしか無いため、必然的に私は父と暮らす事になった。
父との生活は、不自由が無いとは言えないが、楽しいものだった。毎日遅くまで働いてくるけど、休みの日は私を好きな所に連れて行ってくれたし、テストが近づいてきたら勉強も教えてくれた。
そんな父がある日、髪の長い、優しそうな女性を連れてきた。
「この人と、暮らそうと思う」
母と離婚して、1年後だった。
父が連れてきた女性は、結香と名乗った。
結香は、見た目の通り優しい女性だった。でも、私はなかなか受け入れる事が出来なかった。15歳というと、反抗期の時期でもあるだろうし、何より、私にとっては、どんな人であろうと母は1人だけだから。私は結香が煙たい存在に思えた。けれども、結香は私のために苦手な料理を沢山勉強してたし、私の好きなものだって覚えてくれた。
私が高校生になった頃、結香がお弁当を作ってくれていた。にこにこしながらお弁当を渡してくれる結香と、母の姿が一瞬重なった。確か、私がまだ小さい頃の母も、こうやってお弁当を渡してくれたな。
でも、目の前の人は母じゃない。
私は、何とも言えないもどかしい気持ちを抱いてしまった。そして、結香に向かって、「母親でも無いのに・・・」と口にしてしまった。
結香は相当ショックだったのだろう。あるいは、今まで胸にしまっていたはずの感情の糸が切れてしまったのだろう。
パシンッ。
乾いた音とともに、私の頬が熱くなる。結香ははっとして、私にすぐ謝ったが、私は何も言わずに家を出た。
それから、結香は私のために色々してくれる様になったが、私が結香の思う反応をしないと手を上げる様になった。「あなたのために考えたのに」というのが彼女の口癖になっていた。
もちろん、優しい時は優しい。私が欲しがっていた猫も家に連れてきてくれた。彼女にばかり懐いていたけど。
でも、事あるごとに襲い来る暴力は日に日にエスカレートしていった。私はまるで枷をはめられてる様で、自由を奪われてしまった。思考さえ、彼女の意思が働いている様だった。




