M? or S?
昨晩は疲れた。取引先
の担当者にキャバクラへ
連れて行かれたからだ。
だから、打ち合わせは
イヤなんだ。終わった後は必ず、
カラオケかキャバクラに誘われる。
キャバクラだけは長年
勘弁してもらっていたのに
最近はそうもいかなくなってきた。
担当者の押しが滅法強い。
人付き合いが苦手で人見知りな自分には、
もっともふさわしくない場所だ。
あ〜あ、なんでまた
来ちゃったかな!?
なんとか言って断れば
良かったよ・・遅いけど
こんなとこ面白くも
なんともねーや。
だいたい、娘ぐらいのキャバ嬢と
何を話せばいいんだよ!?話ねーよ。
あっ!き、来た!っ
「カレンでぇーす!」
またコイツか!?
友達のトッシー(男)にそっくりなキャバ嬢。
それにしてもよく喋る。
お喋りな九官鳥よりもさらに喋る。
オイルでも飲んできたのか!?
『少し、黙れよ!トッシー!』
と念じつつ、黙って話を聞いていた。
カレン
「ええっとぉー、涼さんはぁー、たぶんー、
めっちゃ、おとなしいタイプでぇー」
見たまま言いやがったな!?
カレン
「それでぇー、かなりの恥ずかしがり屋さん!?
って言うか、照れ屋さん!?」
同じ意味だよ!トッシー
カレン
「涼さんて、静かですよね♪
いつもこんな感じなんですか?」
「そんなことないよ。ただ、スゴい人見知りでさ、
賑やかな所も苦手なんだ。だからゴメンね!」
全くその通りだが、
全部、あんた(担当者)が
言っちゃった。
いや、フォローしてくれたのか!?
カレン
「そうなんだ!?えっ!じゃあ、キャバクラなんて一番来ちゃダメじゃないですか!?なんで来ちゃったの?」
急にタメ口になる
涼
「さ、さあ?・・・僕にもさっぱりでして」
カレン
「わかった!ひょっとして、
私目当て!身体目当て!子供手当!?」
な、なんだそれ!?
「ウヒャヒャヒャヒャ!面白〜い!カレンちゃん」
担当者の笑い声。
どこがだよ?
ちっとも面白くねーよ!
それにしても、こんな笑い方すんのか?
このオッサン・・・!?
このあたりから、徐々に
おかしな話になっていった。
カレン
「涼さんみたいなタイプはぁー、たぶんー、
Mだと思う!って言うか、絶対、Mって感じ!?」
だから同じだろ!っつうの・・なんだ?コイツ?
しかも、このオイラを『M』呼ばわりしやがって!
よりによって『スーパーS』のこのオイラを。
一回、お仕置きしてやろうか!?
カレン
「ねっ!当たってるでしょ!?」
担当者
「うんうん、当たってる、当たってる!さすが、
カレンちゃん!」
当たってねーよ、って言うか、
アンタは酒でも飲んでろよ!
チッ、仕方ない。少しだけ乗ってやるか!?
・・・軽くだけどな
涼
「ま、まあ、どっちかって言えばそうかもしれないですね」
カレン
「いやいやいや、涼さんはMですって!それもドMです!」
担当者
「うっぴゃ〜あ!」
だから、アンタは飲んでろ!って
ク、クソっ!『S手帳』でもあれば、
コイツの目の前に突き出してやれるのに・・・
コイツ、泣かしてやろうか!?
それも普通に泣かすんじゃなくて、
一回笑わせてから泣かしてやろうか!?
どうにか反撃してやりたい、が、何かないか!?
ん!?あった!アレがいい!ようし!ふふふ
見てろ!今すぐギャフン!と言わせてやるぜ!
涼
「え、ええとですね、あの、トシ子さんは」
カレン
「えっ!?トシ子さん!?・・・誰?トシ子さんって?」
し、しまった・・・や、やっちまった!
カレン
「私、カレンですよぉ!?やだあ、涼さん、
からみにく〜い!」
負けたよ・・・トッシー