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第四幕
司は、武者震いをしていた。
これから楽しい事が起こる、と歓喜に身を震わせていたのだ。
狸を捕らえると、司は一目散にギンの元へと急いだ。
「ギン!」
――なんだ?
司は、努めて冷静に言った。
「山の住人達と俺等、明日の夜やり合うみたいだ」
――それは、楽しそうだな。
声は穏やかであるが、ギンも毛がうなるところを見るに、歓喜しているようだった。
「それで明日の夜、どうしようか」
ギンは、瞳を見開いてこう言った。
――真っ向から挑んでやろうじゃないか。私も丁度、身体を動かしたい所だったのでな。感覚を鈍らせないためにも良い。
すっかりギンもご機嫌になったようだ。
「そう言えば、ギンはどんな風に“狩る”んだ?」
――ああ、そうか。レオにはまだ、私が人を狩る姿を見せた事はなかったな。
ギンは、月を仰いだ。
――長い話になる。レオ。
「良いよ。もとより、時間なんて腐るほどあるんだ」
ギンは、自身が何をみ、何を経験してきたのかを、ゆっくりと紡ぎ始めた。