8 わお!本物ファンタジーとご対面!
異世界召喚二日目、わたしたちは島の砦の会議室のようなところでファンタジーな方々とご対面中です。
今回の魔物の騒ぎで種族を超えて連携してことにあたっているらしいんだけどそこの事務局みたいなところから何人かが派遣されてきたみたいです。
まだ自己紹介ははじまらず砦の執事たち(つまり兵士さんたち)がお茶をそれぞれに配っているところ。
長方形に配置された机の短い辺にセバスチャンさんとコブシちゃん。
長い辺の方、コブシちゃんたちに近い方からエルフ1・2、人間1・2、ドワーフ1・2・3、ゴブリン1、妖精1。妖精は座らずに浮いてるけどね。
そして長い方のもう片方、コブシちゃんに近いほうから千花ちゃん、わたし、小梅。
リオンとその他の執事さんたちは壁沿いに立っています。
どうやらまだ始まらないようなので心の中で実況中継して時間をつぶしたいと思います。来ているのはエルフ、ドラゴン、ドワーフにゴブリン、妖精それと人間。ほかに少数民族な種族もいるらしいんだけど今回は来ていません。この会議終わったら外にドラゴン見に行くぜ!
でました!エルフです。
どう見てもエルフに間違いないです。背が高くて美人で耳の先っちょが尖ってます。神秘的なオーラも感じます。やっぱりローブですか。その杖みたいなのは魔法使いのアイテムですよね?なんだか宝石みたいなの埋まってるし。
うっかり「エルフすげえ」と呟いたら千花ちゃんに「しっ」とたしなめられました。以後気をつけます。
それからあれは人間っぽいなあ、人間の代表かな。特記事項なし。
ドワーフもいます。某指輪物語のイメージだったのですがドワーフはただのちっさいおじさんでした。そんなにずんぐりむっくりもしてないし。職人さん風な感じです。あるいは板前さん。
そして、これが一番びっくりですよ、ゴブリン。
やばい、ゴブリン、超かわいいんですけどwwwww
某指輪物語のオークを想像していたら、やられました。なんなの、この超かわいい生き物は!
確かに三次元なんですが雰囲気が二次元?コミカル?普通の漫画の中に突然出てくる二頭身キャラ、みたいな感じです。エルフとはちがうキラキラオーラ。
ほんとに二頭身ではありません。どっちかっていうと小顔かなあ。すごくかわいい小学生みたいな感じ。いやちょっと大きすぎる幼稚園児?ドワーフよりも小さくて、といってもドワーフはおっさんでゴブリンは少年っぽいのでこれから大きくなっちゃうのかな?
髪の毛はさらっさらで天使の輪が。服装はブラウスに膝までの半ズボン。ネクタイの代わりにリボン。多分普段着とか民族衣装じゃなくて着せられてるんだと思う。でも似合ってるの。超かわいい。
それから妖精だよね。バスケットボールの中に入っちゃうくらいの羽根の生えたかわいい女の子が飛んでいます。疲れたら椅子に座るのかな。埋まっちゃうよね。机の上に座るのかな?
でもすごいよねえ。ほんとにファンタジーなひとが目の前にいるよ。特殊メイクでもCGでもないんだよ。ほえーーー。と、ボケっとファンタジーな人々を眺めていたら何やら始まった模様です。セバスチャンさんが話し始めました。
「みなさま、お忙しい中ありがとうございます。昨日コブシさまが召喚に成功されました。勇者さま方には簡単な説明のみしてあります。まずはこちらから自己紹介をお願いいたします」
コブシさまって。やっぱりコブシちゃん由緒正しいお嬢様なんじゃないの?
セバスチャンさんの言葉を受けて端にいるエルフのひとが立ち上がった。
「エルフ族のレギアです」
「同じくエルフ族のステラです」
ステラ?隣のおばちゃんが乗ってた軽自動車が確かそんな車種だったような。彼のあだ名は軽自動車クン、に出来たらおもしろいけど雰囲気が全然軽自動車じゃないわ。
セバスチャンさんの補足が入りました。レギアさん、まさかのエルフの王様!そしてステラくんその息子!王子様だよ王子様!
「みなさんと同じ人間、でよいのかな。ジャイロで黒の将軍をしているセムナイルだ」
ジャイロ?地名?黒の将軍、黒・・・・・。とりあえず流そう。
「ドラゴンのルジェだ、・・・・・ん?」
人間2のはずがまさかのドラゴン宣言です。わたしびっくりしておまぬけな顔になった自覚があるんですが、どうやら両隣の千花ちゃんも小梅も似たり寄ったりだったらしく、びっくりされたことが予想外だったのかルジェさんが困った顔になっています。
「セバスチャン殿?」
困り顔のままルジェさんがセバスチャンさんに助けを求めるまなざし。
「チカさま?リコさま?コウメさま?」
セバスチャンさんもちょっと困り顔。みんなしてそんなに困らなくてもいいです。人間だと思っていたらドラゴンとかいうからちょっとびっくりしただけで。これで人の姿からドラゴンの姿に変わるところ見せられたりしたらわたしたちきっともっと驚くというか、叫ぶと思います、ええ。
千花ちゃんが一番先に正気に戻って先を促したので自己紹介がすすみます。
「ドワーフのスールじゃ」
「ナールじゃ」
「ハールじゃ」
三人って一番多いよね。もしかしてドワーフがこの世界の最大勢力とか?ってパターンはないよね~。ちっさいおじさん三人で1セットぽいのは気のせいじゃないような。
次だよ次!ゴブリンくんだよ!
「フェイン・テル・シェロノマーリグル・カヤ・シグル・ラーズラーザラノイ・シノ・ヴィトニブル・パラン・ヴォルドスギエーブル・ノエンザライ・フェイハラトランスミーネン・ザガフェです」
待って。ごめん。覚えられない。その変声期真っ最中みたいな声は少年ぽくていい感じだけど、それより何より長っ!名前長過ぎ!最後の”です”は”です”でいいの?”デス”って名前?まさかの”death”?
あ、座っちゃった。シャイなの?ねえシャイなの?っていうかみんなにはニックネームで呼ばれてたりしないの?誰もフルネームで呼ばないでしょ?
「スノートラン・エルナーレ・コルガ・エミエイル・エイエイルリーナ・ソラチョ・ポニエールです」
ゴブリンくんのあとだと短く感じるけど十分長いよね。あなたはカンニバル・コープスな感じでデス!なわけないですよね・・・・・。
・・・・・。ごめん、妖精さんの名前も覚えられなかった。
っていうかエルフの王様の名前なんだっけ?ゴブリンくんと妖精さんの長い名前も覚えられなければ短くて覚えやすかったはずの王様の名前飛んじゃうとかなにこれ。
あとで千花ちゃんと小梅に聞けばゴブリンくんと妖精ちゃん以外の名前はどうにか出来そう。あ。セバスチャンさんに聞けば知ってるかな。あとで聞いておこう。そして忘れないようにちゃんとメモとろう。メモ。うん、メモ大事。
そして今度はわたしたちが自己紹介。
エルフの二人には千花ちゃんの魔力がわかるみたいでふむふむみたいな感じだったけれど、それ以外のひとはよくわかってないんだか正直弱っちそうな女の子三人でほんとに大丈夫なの?という心配をしている雰囲気がひしひしと伝わってきちゃって正直居心地悪かったです。