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6 えんどう豆のスープ




 しばらく三人と三人は無言のまま見つめあっていた。三人なのは男のひとがもうひとりいたからだ。


「とりあえず立つ?」


 わたしの提案に二人が頷いて三人でゆっくりと立ち上がった。

 わたしたちが動いたことで男のひと二人が剣の柄に手を置いたまま踏み出し、美少女を守るように両脇に立つ。


「友好的に行こう」


 千花ちゃんがわたしたちにだけ聞こえるくらいの小さな声で言った。


「はじめまして、千花です」


 千花ちゃんがにっこり笑って自己紹介した。わたしと小梅もそれに倣う。


「莉子です」

「小梅です」


 美少女がちょっと困った顔をした。


「@:.:***@*++」


 なんてこと!どうやら言葉が通じないらしい。

 美少女の意味不明な発音に今度はこちらの三人が困った顔になった。


「小梅、わかんないの?」

「わかるわけないでしょ!」


 小梅の家は町工場だ。小梅の家や近所の町工場には外国から来ている労働者がちらほらいる。

 小梅は英語とタイ語とマレー語は日常会話くらいは話せた。

 英語はともかく残りの二つがタイ語とマレー語なのは小梅の家に来た最初の外国人がタイ人だったためそのつてでタイ人ばかり受け入れていること。マレー語については覚えるのが簡単らしい。

 今熱いのはペルシャ語らしく町工場のおっちゃんズとペルシャ語を知らない外国人の有志で近々ペルシャ語の勉強会をはじめるとか。

 とりあえず異世界は英語でもタイ語でもマレー語でもないらしい。


「千花ちゃん、魔法で言葉どうにかなんないの?」

「とりあえず魔法の使い方を覚えないことにはさっぱり」

「”言葉よ通じろ!”とか呪文唱えれば平気なんじゃないの?」

「多分無理だと思うよ」


 そう言いながらも一応千花ちゃんは呪文っぽいのを唱えた。けど通じなかった。

 美少女の横にいる男のひとが何か言ったけど、やっぱり意味不明。

 六人で困り顔のまま立ちつくしているとき、


  ぐるーーーー。


 わたしのおなかが盛大に鳴った。静まり返った部屋にはとてもよく響き渡ったわたしの腹の虫の声。恥ずかしい!あわてて両手でおなかを押さえる。

 ぷぷっと吹きだしたのは多分小梅だ。

 正面では美少女が片手で口を押さえて「まあ」だか「あら」だかの表情をしていた。

 くくくっと低い笑い声が聞こえた方向をみたら男のひと、あとから姿をあらわした若い方が後ろを向いていた。肩がゆれている。いいのか、敵かもしれない人間に背中を見せて。

 もうひとりの年上らしい男のひとは表情を変えていない。大人だ。




 二時間後、わたしたちは庭園の中の東屋でのんきに茶などすすっていた。

 通じなかった言葉はこちらの食べ物を摂取することであっさり解決。シェフを呼びつけてしまいたいほどにおいしかったえんどう豆のスープを飲んだ途端此方の世界の言葉がすんなり頭に入って来たのだ。なんていうお気楽設定。

 なんで言葉も通じないひとたちが提供する食べ物をそんなにあっさり口にしたかって?

 わたしたち正規の異世界トリップスカウト組ですから。まさかトリップ直後に毒殺はないだろうと、ええ。

 もちろん”運”強化のわたくし龍泉莉子が毒見役として最初に口をつけましたとも。わたしが一番おなかがすいてたからではありません、念のため。


 異世界補正?とは不思議なものでわたしたちは日本語、彼女たちは異世界語をしゃべっているはずなのにどんなにくちびるをじっと見ても日本語をしゃべっているようにしか見えないのです。ほんとに不思議。


 城というよりは砦のような(これにそっくりな建物をレゴで見たことがあります。ナントカの砦という名前だったはず)建物の塔の一番てっぺんの部屋がわたしたちが召喚された部屋でそれからわたしたちは一階までおりて食堂で朝ごはんを食べ、食後のお茶を庭園の東屋で楽しんでいると、こんな状況であります、隊長。そして金髪美少女からざっくり説明を受けました。


  魔物をやっつけてほしい。

  詳しくは明日、世界会議のメンバーが集まってから説明します。


 ん?詳しくは明日?それほど緊急事態でもないのかしら?

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