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2 なぜにオカマの天使?



 えーと。

 ぐるりをまわりを見回したらどうやら宙に浮いているようだった。景色が違う。ビルよりももっと高いところ。東山とかの見た目がいつもと違う。っていうか街並みが下にある。真下に駅ビルを見て「ああそうか」と思いのほかすんなりと現状を受け入れた。多分死んだんだ、わたし。


 幽体離脱とか魂だけとかそんなことになっているのだと思う。

 自分の体を見ようとしたけれど、あるはずの脚もかざしたはずの手も見ることは出来なかった。何か見えるかと駅ビルの階段を見ても今の位置が高すぎて詳細まではわからない。

 よくよく目を凝らしたらなんだか光る球がすーっと浮かび上がってくるのが見えた。あれが魂?落ち着いてもう一回周囲を見たら光の球がふぃよふぃよと浮いている。いくつかの球は動いていてそれらはみんな同じ方向に進んでいた。


 西の方向。


 京都の街は東西南北がわかりやすい。

 遠く、今の自分の位置よりやや高いところに門があった。っていうか、多分門だと思うのだけど。門柱らしきものが二本浮いていてその間は一番上が眩しい白というか光そのもので一番下が黒、漆黒。どちらかというと闇。


 意外なことに三途の川とお花畑は見えなかった。上が天国で下が地獄なのかしら。わたしあたりの凡人は真ん中あたりがちょうどいい気がする。


 こういうのってきっと自分で選べないんだよね、あそこまで行ったら自動的に吸い込まれるのだと思う。ここにとどまることも出来そうだけれどきっとそれって地縛霊とかになるパターンだよね。それはイヤ。


 しゃーない、行くかな。


 手も足もわからないけどなんとなく行けそうな気がした。念じれば多分動く。もう一度天空の門を見た。いくつもの光の球がゆっくりとそちらへ進む中、ひとつだけやけにトリッキーな動きをしているものがある。高速で移動してカクカク曲がったり螺旋を描きながら上昇したり。・・・・・なんだあれ?


『あなたと同じ、タ・マ・シ・イ♪』


 突然聞こえた声にわたしは慌てて振り返った(つもり)

 目の前にモデルさんですか?というようなとんでもなく綺麗な、でも女顔じゃなくてしっかり男顔の天使がいた。だって何だか羽が見えてるし。天使でしょう、これはやっぱり。


 服装はギリシャの神官風葉っぱの冠添えじゃなくてシルク系か何かの質のよさそうな少し光沢のあるクリーム色のパンツに上はアイボリーのVネックのカットソー?ニット?これまた一目で質がよいことがわかるものを着ていた。最低でも三万円はしそう。


 しかし背中の部分はどうなっているのだろうか。羽用に穴があいている?それにしてもなんでこんなにしなしなしてるのかしら?くねくねじゃなくってしなっしなっとしてる。無駄にポーズを変えたりしてるし。


 ・・・・・オカマ?


「あのー、天使さんですか?」

『天使以外の何に見えて?』


 オカマ(推定)天使は右に左にしなっしなっと首を傾げてから最後にウィンクした。


「天使さん(断定調)、何か御用ですか?なければわたしあそこに行きたいんですけど」


 手がなければもちろん指もないので指差せないわたしはもう一度西の空に浮かぶ門を見た。もたもたしていたら地縛霊になってしまう。それは避けたい。


『や・だ~♪用があるから声をかけたに決まってるじゃな~い♪』


 や・だ~♪の「だ」でほっぺをつんとつつかれた。どうやら今のわたしは光の球でほっぺなんてないけど本人(オカマ天使)はおそらくそのつもりだ。


「じゃあ手短にお願いします。わたし地縛霊とかにはなりたくないんです」

『あら、そんなこと気にしてたの?だいじょーぶだいじょーぶ』


 何が楽しいのかキャハハと笑いながら肩を(多分オカマ天使はそのつもり)バシバシ叩いてくる。


「あのー」

『まずは自己紹介させてもらうわね。わたしは天使。いわゆる名前はないわ、特に必要ないから。人材派遣というか請負派遣業みたいなことが仕事。具体的にはあの世に行く寸前の魂に声をかけて第二の人生を送ってみないかとスカウトしてます。ここまでオーケー?』


 オカマ天使はよどみなく一気にしゃべるとこちらを見た。


「はい」

『よろしい。ある程度説明させてもらってから質問を受け付けるわ。話を聞いてよく考えてから結論を出してくれればいいから。もちろん断ることも可能よ。それからわたしがあなたに説明している間、時間はとてもゆっくり流れるからあの門が消えてなくなったり地縛霊になったりすることはないから安心して』


 一応仕事モードなのかさっきよりしなっとする回数が少なくなったような。でもゼロになったわけじゃないから合い間の無駄な動きは健在だったりします。


『まずはあなたの現状から。ひとは死ぬとまず肉体から精神、魂が分離する。その魂があそこに見えている門の向こう側に行った時点でそのひとは完全に死んだことになるわ。見たまんまだけどおそらく上が天国、下がその逆ね。いわゆる生前の行動や思想なんかで決まるみたい。わたしはあそこの担当じゃないから詳しくは説明できないけどね。あの向こう側に行ってからどうなるかはわたしも知らないわ、行ったことないし。あっち側に行って帰って来たひとはいないから誰も知らないの。で、あの向こうに行ったところで完全に死ぬということは今はまだ完全に死んだわけじゃない。聞いたことあるでしょう、心肺停止したけど蘇生したとか、長い植物状態から目覚めたとか。たまにそういうラッキーなひとがいる』


 オカマ天使がこちらを見たので今までの分は理解出来ていますという意味でうんうんと頷いた(つもり)


『とりあえず死ぬと今のあなたみたいな光の球になってあの門に進む。あるひとは光に、あるひとは闇に吸収される。そこでとりあえず終了。でも中には吸収されずに弾き飛ばされてしまうひとがいる。そのひとの魂は自然と元の体に還る。それがさっき言った心肺停止とかから復活するひとね。ちなみに自力では戻れないわ。この状態、光の球のまま地上に降りて自分の体に入ろうとしてもそれは無理。そんな無駄なことしてる間にチャンスが減ってしまうからほとんどみんな本能的にあの門に進む。あなたもそうしようとしたでしょう?』


 わたしはうんと頷いた。地縛霊になりたくなかったからだけど、なんとなくあの門へ行った方がいいと思ったのだ。


『最近の人間界の医療は高度化してきているしね。さっさと審判の門に行った方がよみがえりの可能性も高くなる。まあ生き返りたくないひともいるでしょうけれどそこは人間自身ではどうにも出来ないことだからあきらめてもらうわ。』


 しばらく説明を続けたあとに天使さんは唐突に言った。


『というわけで異世界に行ってくれないかしら』

「いきなりすぎませんか。それになぜわたしが異世界???」

『日本人だからよ。なぜか魔法を使って召喚したりする世界って金髪銀髪にその他カラフルな髪と瞳の人間が多いのよ。ただし黒は除く、いても少数派、だったりね。黒って魔力を高めやすいらしくて黒髪で黒い瞳の人間は何もしなくても勝手に魔力がついたり上がったりするから召喚すると重宝するらしいのよ。それとわたしたちの都合』

「天使さんたちの?」

『ええ。日本人の、特に若い子はこういう話を聞いてもそんなに考え込まずに「いっすよー」とか言って引き受けてくれることが多いから。やっぱり何か特定の宗教とか神様を信じていたひとにはちょっと無理というか理解もしたくない話ではあると思うわ』


 オカマさんはそう言って苦笑する。確かにちゃんと何かの宗教を信仰していたら死んだあとに異世界に行くとかありえないだろうしなあ。

 その点日本人はそこらへんおおらかなひとが多いもんね。神様も仏様もときどきは何かをお願いしようかな、という程度には信じているしキリスト教の神様もまあいてもいいんじゃないですか、という感じ。

 でもその存在を確実に思ったりそこに命を捧げられるほど信じたりするのは無理。日本人は熱烈な信仰が苦手なんだと思う。なぜかはわからないけど。なんでだろう。恥ずかしがり屋?


『あとはゲームとか漫画とかの影響か異世界をすんなり想像出来るのよね。説明が楽』

「へえ」

『それと困っているひとがいるから助けてもらえないかしら、とお願いされると弱い。親切ともいうしお人よしとも言うと思うわ』

「ふむふむ」

『そんなわけで最近はほとんど日本上空で仕事をしてるわね、わたしたち』

「へぇー」

『というわけで、召喚されて異世界に行ってみない?』

「いいですよー。なんてねwww」

『あら!ありがとう!よろしく~』



 ありがとう?よろしく?

 決定なの?異世界決定なの?

 わたし「なんてねwww」って言いましたよね。「www」の部分、結構重要だと思うんですけど、そこのところ却下ですか?

 軽いノリで返したわたしが悪いんですか?京都上空の景色が極彩色のマーブル模様に変わってきたのはなぜですか・・・・・。


 天使さーん!

 おーい!

 おーい!おーい!!!


 返事無し。


 まじ、ですかい・・・・・。

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