表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/49

22 おやつと携帯電話




 莉子です。

 本日もリオンさんの提案で森へ行くことになっています。

 なぜならリオンさんがナントカベリーを食べたくなっちゃったから。

 きのうはドラゴン形態で食べられなかったので今日はちゃんと服を持って行って人間の姿で満腹になるまでナントカベリーを食べたいとのこと。そこまでおいしかったかな、と思うけど好みがあるから。リオンさんはナントカベリーが大好物なんでしょう。


 今日のわたしはきのうとほぼ同じ格好で袋を背負ってます。中にはリオンさんの人間の時用の服とサンダル。ドラゴンも千花ちゃんみたいに洋服補正があればいいのにね。

 それ以外には袋、これはナントカベリーをお土産に持って帰るため。それから携帯。もちろん圏外ですがあっちの世界で出かける時に充電器から取り上げたので電池は満タン。今は電源オフです。今日は上空から携帯のカメラで写真を撮ろうと計画しているのです。電池切れしたらただの箱というか金属ですがそのうち千花ちゃんが魔法で充電器を開発してくれるかも!とこっそり期待をしているのであります。


 あ、背中の袋に入れっぱなしだと上空で出すのが大変かもしれませんね。携帯はスキニーのポケットに入れておきます。ぴったりしてるから落ちませんしね。ほんとにビバ☆スキニー。ジーンズほどごわごわしてないし、のびのびストレッチでちょっとおなかが出ても対応可だし、そのくせシルエットにはハッキリ出るから太り過ぎ注意の警告効果もあるなんて!携帯の充電器の次に千花ちゃんに魔法で出してもらいたいかも。


 それからスマホに変えてなかったわたし、えらい!スマホじゃポケットに入らないもの。充電もすぐなくなるって聞くし。でもさすがに使わなかったら電池減らないか。そういえばなんでスマートフォンなのにスマホなんだろう。そのまま略したらスマフォ、だよね。スマートホン?言わないよね?


 とかなんとかひとりで考えてたらリオンさんがきました。すでにドラゴンです。

 でも一度見てみたいですよね、人間からドラゴンになるところかドラゴンから人間になるところ。人間からドラゴンになるとき、着衣のままだったらケンシロウっぽいかもと思ったけれど彼が服を破るのは上半身だけでしたものね。リオンさんの場合下半身の服も破れるの確定ですからね、危ないです。アニメになっても放送できません。

 逆の場合は特に問題ない気がしますが、どっちにしろ変身シーンを見たいとか言ったらわたしが痴女確定コースなので後ろ髪ひかれつつ断念です。あ!女性のドラゴンさんだったら見ても大丈夫じゃないでしょうか。リオンさんに知り合いとか紹介してもらえないかしら?でも女性でぼんきゅっぼんのひとだったらやばいかも。男性のナニみたら正直おそらく引くと思うんですが、あまりにきれいな女のひとの裸だったら鼻血出ちゃうかも、とかいろいろ考えたり妄想したりしましたがちゃんと体は動かしていたので既に今は上空、えーと、40mくらいでしょうか。





 きのうと同じ場所に着地しました。何本も木が根こそぎ抜かれた跡があるので間違いないです。リオンさんの服とサンダルを大きな木の根元においてわたしはリオンさんを背に森の中へ。と言いたいところですが蛇や虫が出て来たら怖いので背中を向けているだけです。


「おまたせしました」


 振り返ると銀髪イケメン執事。

 二人で仲良くナントカベリーをむさぼり食うのかと思っていたらリオンさんが「こちらですよ」とか言いながら森の奥へ。進むこと15分くらいでしょうか、思ったより歩かされたところで目の前にいきなり崖です。リオンさんに笑顔で登りますよ、と言われたので笑顔で登れませんと答えました。だって垂直ですよ。ロッククライミングなんてテレビで見たことしかないですよ。

 結局リオンさんが先に登りわたしの体に巻きつけた紐を上からひっぱってくれました。わたしもわたしなりに協力しましたが崖に手足を添えるのが精一杯です。


 そこはまさかのお花畑でした。

 リオンさんってばどんだけロマンティック執事やねん!と思ったらそういうわけではなく、ここはナントカベリーの群生地でした。しかもナントカベリー以外の食べられる果実みたいなのが何種類か生えているんだそうです。リオンさんが気をつかって二日連続同じおやつを回避してくれたようです。

 そこはとっても不思議な場所でした。テーブルマウンテンのミニチュアみたい、というんでしょうか崖の上はバスケットコート二面分くらいの広さでまっ平ら。少しだけ低木が生えていますがあとは色とりどりの花が咲いているだけです。芝生のように短い草が生えているので地面がむき出しのところはないようです。ええ、めっちゃきれいです。


 わたしはポケットの携帯を思い出して写真を撮ろうと思いました。帰ったら千花ちゃんに見せてあげよう。小梅も見たらよろこぶだろう。そう思いながら携帯の電源をいれてカメラを起動させるとリオンさんが気になるのかナントカベリーを食べるのをやめてこちらを見ています。

 そうそう、リオンさんほんとに大好物みたいです。執事然とした気品を失わないまま超高速でナントカベリー食べてましたから。あれを見て吹き出さなかったわたしは大人だと思います。


「携帯のカメラです」


 わたしが説明するとリオンさんがこちらにやってきました。


「こうやってパシャって記録するんです」


 リオンさんが画面をのぞきこめるように花畑が映っている液晶の角度を調整してからシャッターを切りました。


「ね」


 いま撮影した方向に背を向けて手元の携帯の写真を見せます。


「おおっ!」


 びっくりと感動がまざったんでしょうね。執事っぽくない歓声です。


「わたしのいた世界では魔法じゃなくて科学が発達したんです。この機械は誰でも作れるわけじゃないけど操作は誰でもできますよ。リオンさんも写真撮ってみます?」

「いいのですか?」


 目の輝きが違います。遠慮とかそういうの永遠の彼方に押しやっちゃったんでしょうね、好奇心少年は誰にも止められない。

 携帯を渡し使い方の説明をしようとしたのですが屋外で明るすぎるのと場所が悪いのか液晶画面がよく見えません。


「リオンさんすみません座ってもらってもいいですか?」


 リオンさんでかいんですよ。多分190cmとかじゃないかな。2mとかあるのかな。おにいちゃんが180cmだったのでその高さは大体わかるんですがそれ以上になるとよくわかりません。わたしは155cmです。平均かと思っていたのですがどうやら平均よりはちょっと小さいみたいですね。


「ええっとですね」


 花畑に座り込んだリオンさんの横から液晶をのぞきこみますがやはり画面がよく見えません。


「ちょっと失礼しますよー」


 わたしはリオンさんの横から後ろへと移動しました。おお、リオンさんのつむじです。新鮮な眺め!

真後ろから携帯をのぞきこみます。反射がひどくてよく見えません。


「もうちょい失礼しますよー」


 リオンさんの肩に両手を置いてぐっと画面を覗き込みました。自分で日影を作りつつ画面を覗く感じです。かっこいい男性に自ら密着状態ですがドラゴン形態とはいえ全裸のリオンさんの背中に何度も乗っていることを考えればこれくらいどうってことありません。恋人でもない男性の全裸の背中に乗るとか冷静に考えれば非常識もいいところですからね。


 よく見えないのはわたしが液晶に覗きこみ防止シールみたいなのを貼っているからかもしれません。シールがちゃんと仕事をしています。

 うーん、右側左側と方向をかえたりしながら覗くのですがいまいちよく見えません。

 あれ?

 何か違和感が。

 なんだろう、よくわからない。


「わたし何かした方がよいですか?」

 

 いつまでも背後でごちゃごちゃやっているのでリオンさんに声をかけられました。


「いえ、角度がですね、まぶしくて画面が見にくいんですよね」

「影を作った方がよいのですか?」

「ええ、反射もあるんですけど横から覗きこめない仕組みになっているので」

「でしたら場所を交換しましょうか」






 なんじゃこりゃ。

 というわけで我々は現在どこのバカップルやねんというラブラブモードです。見た目だけ。

 体育座り(三角座りとも言うらしいですね)の足を開いた状態の(っちゅうか足長すぎるwww)リオンさんの足の間にわたしが体育座りです。

 照れないのかって?わたしは全裸の男の背中にまたがる女で(以下略)

 さすがに後ろからわたしのおなかに腕をまわす、なんてことはなくリオンさんは紳士的に?携帯の画面をのぞきこみながらふむふむとわたしの説明を聞いています。

 まあ押せば撮れるんですが男のひとというのは意外と説明書が好きらしいのでモードとか(夜とか屋外とか)画面サイズとかフラッシュとかもひととおり説明。ピント合わせの話もしてから「じゃあこの花から撮ってみましょうか」と少し離れたところにある水色のかわいらしい花を指差し、いったん画面を待ち受けに戻してからリオンさんに渡しました。なんとなく最初からぽちぽちやりたいだろうなと思ったのです。ちょっと電池がもったいないかな、とも思ったんですが今までもこれからもリオンさんにはお世話になるのであまりケチケチしないことにします。


 あら?

「はいどうぞ」と携帯を手渡したときにまた違和感が。

 うーん……。


 考え込みつつリオンさんが操作する携帯画面を見ます。ちゃんとカメラボタンでカメラを起動させ日本語は読めないでしょうけどサブメニューボタンを押して画像のサイズなどを選んでいます。顔は見えませんが楽しそうな雰囲気が伝わってきます。


 カシャ。


 花畑に機械音が響きます。


「この次はどうすればよいのですか?」


 そうだ、撮るところまでしか教えていなかった。次はですね、とリオンさんから携帯を預かっ…。




 「どぅあーーーーーっ!!!」




 背後でリオンさんがびくりと震えたのがわかりました。そりゃいきなり叫ばれたらびっくりするよね。でもね、びっくりしたのはこっちです。


 あ、アンテナが三本。

 がっつり三本アンテナが。

 さっきから何度か感じた違和感はおそらくこれだったと思います。

 圏外のはずがなんでアンテナが、しかも三本も。どれだけ基地局近いんですか?

 ちょっと手が震えそうです。っていうか既に震えてるし。 


 ってあれ?圏外だ。

 わたしってば白昼夢?

 いやいや見ましたとも。確かにわたしは見ました。間違いございません。


「リコさま?」


 リオンさんの心配そうな声が背中から。っていうかリオンさん、わたしのいないところではリコさんじゃなくてリコさまって呼んでるんですね、きっと。この件については今はどうでもいいですね。


「えっとですね、見間違いじゃないと思うんですけどさっき確かにアンテナが立っていたんです」

「あんてな、ですか?」


 ここの、とわたしは画面の左上を指さす。今は赤い「圏外」の文字。でもさっきは確かにアンテナが三本立っていました。


「ここが今は文字で圏外ってなってますけどさっきアンテナが立ってたんです」

「あんてなというのが立つと何か問題なのですか?」


 この世界、魔法はあっても電波はないからアンテナの概念がないんだろうなと思いつつ説明します。


「アンテナが立っていると、つながるはずです、わたしの世界に」


 手だけじゃなく声もちょこっと震えていました。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ