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11 覚悟を決めようか




 どうにかわたしたち三人を勇者認定したあと、エルフの王様と(レギアさんという名前は覚えたけれど王様にさんづけとかちょっとびびります)ドラゴンのレジェさんだけは東の大陸へと帰っていきました。王様はそんなに暇じゃないというか王様自ら出向いてきたということがちょっと驚きなのかも。

 相談の結果、わたしたちはこの島でしばらくこちらの世界の常識と現在の情勢、それから千花ちゃんは魔法の使い方、わたしと小梅は護身術を習うことになりました。わたしは慰め程度の護身術になりそうだけど小梅は本気の武術になるんじゃないかな。

 夕食の頃には結構みな慣れて話もそれなりに弾んだと思う。


 その後三人でわたしにあてがわれた部屋に集まった。一応ひとりに一部屋ずつもらったんだけど慣れるまでとわたしの部屋に千花ちゃんと小梅のベッドも入れてもらってあります。ひとりで寝るのはやっぱり不安。

 リラックス効果のあるというハーブティーを魔法瓶にいれてもらって部屋に持ち込みました。この砦、執事だらけのせいかお茶の種類がめっちゃ多かったりします。カフェ・砦とか開業すればいいのに。そして魔法瓶は本物の魔法瓶です。普通のティーポットに魔法をかけて冷めなくしてあります。魔法瓶じゃなくて魔法ポット?

 部屋の窓際にある応接セットみたいなところで三人でローテーブルを囲みました。


「あのさあ、ちょっと真面目な話してもいい?」


 珍しく小梅が口を切りました。

 三人でいるときは基本わたしがだらだらとどうでもいい話をして千花ちゃんがつっこんだりして小梅は聞き役のことが多いのです。


「莉子は覚悟出来てる?」

「へ?」


 わたし?


「天使に声かけられてこっちの世界きたじゃん。天使はあの門の向こうに行くまでは完全な死じゃないって言ってたらしいけど、あたしはもう死んだと思うんだ」

「・・・・・」

「莉子とちーちゃんがどうなって魂が分離したかは知らないけど、あたしは多分首の骨が折れたと思う。きっともうあっちの世界で蘇生はしない」

「わたしも無理だと思う。わたしは多分圧死っていうのじゃないかな、どんどん上に人が乗ってきてあばらとか折れるのわかったし」


 わたしは小梅と千花ちゃんが淡々と話すのを黙って聞いていた。

 わたしは、わたしは・・・・・。


「あたしはあっちの世界で20年ぽっちりで人生終わっちゃって、そりゃあ今となっては悔い残りまくりだけど、でも、こっちの世界で生きるチャンスをもらえたのはすごくラッキーだと思うから。それに必要とされたからここで二度目の人生を生きることができるわけだし、だから本気でがんばろうと思うんだ。でね、魔物を倒すってほんとに命懸けだよ。こっちの世界のひと何人も死んでる。その戦いに参加する覚悟、莉子は本当にちゃんと出来てる?」


 わたしは出来てるって即答出来なかった。

 オカマの天使さんの話を聞いてあのオカマさんの強引さもあって異世界召喚されて、目が覚めたら三人一緒で、だからあんまり怖くなくて、そしてなんとなくいつか目が覚めたら日本の病院のベッドの上なんだろうって。自分はあの京都の西の空に浮いていた門までいって弾き飛ばされる数少ない魂のうちのひとつなんだって。小梅も千花ちゃんもきっとそうだって。

 そう、思ってた。


 鼻の奥と目の奥が熱くなって勝手に涙が出てきた。

 両手を握りしめて嗚咽をこらえても涙は次から次へとあふれてくる。


「りーこ」


 応接テーブルの向こうのソファに座っていた小梅が腕をのばしてわたしの頭をぽんぽんと叩いた。


「じゃああたしは先に寝るね。おやすみ」


 小梅はそういうと自分のベッドに行ってしまった。

 わたしは何も返せなかった。しゃべったらもっといっぱい泣いちゃいそうだったから。でも何をしゃべったらいいかもわからなかった。


「莉子ちゃん、わたしたちも寝よっか」


 千花ちゃんがそういってわたしを横から支えて立ち上がる。ここでいいとだだをこねるのも子供な気がしてわたしは千花ちゃんに誘導されるまま自分のベッドに入った。


「今日は一緒に寝よう」


 千花ちゃんがわたしのベッドに入ってくる。

 それは全然鬱陶しくなくてむしろうれしかった。千花ちゃんがやさしく肩をとんとんし続けてくれるのを感じながら、わたしはいつしか眠りにおちていた。

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