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いつでも婚約破棄を

作者: ひつじ
掲載日:2026/09/09

今日も婚約者は、仏頂面でお茶を飲む。

お互い話も途切れがちで、たまに何かを思いついてはポツリと呟き、それに返して会話は終わる。

そんなお茶会を二週間に一度行っているのが、私達の習慣だ。

でも、私はこんなお茶会が嫌じゃない。

元々話は喋るより聞く方が好きだし、寡黙な方も嫌いではないのだ。

会話のない沈黙も、気詰まりに感じることはなく落ち着くと思えている。

ただなぁ……。


向かいに座り、微妙に目線の合わない婚約者を眺める。



ーーそんな顔してお茶を飲むくらいなら、婚約破棄した方がスッキリしない?



***



私が『自分は異世界転生というものをしたのだな』と感じ始めたのは、文字を覚え意識の言語化が出来た頃だ。

家庭教師の教える文字を見ながら、『これで私もバイリンガルか……!』と感動したり。

メイドの着付けてくれるドレスを選びながら、『ファストファッションとか一生縁がないんだな』とため息をついたり。

貴族生活を満喫しつつ、どこかで何かと比べてる感覚を追っているうちに、『現代日本』と呼ばれる文化で過ごしていた人生が確かにあったことを意識していった。

固有名詞としての名前や、具体的な職業や人間関係を覚えてる訳ではない。

なんとなく『あぁ、この世界にはアレがないんだ』と足りない物を惜しむ感覚があるだけなので、転生チートや文明の利器を発明なんてことも出来ない。

でも、今の世界観や文化が全てではないと知っていることは、私を物事に動じない人間にしたのは確かである。


そんな子どもであったとしても、婚約者と引き合わせられる時はやってくる。

つか、いたのか婚約者……いたのだ。

契約上は生まれた直後に結ばれていたらしい。

顔合わせはお互い少し道理が分かるようになってから、という配慮なのかなんなのかわからん思惑が親達にあったため、初めて婚約者と会ったのは八歳だった。

相手は一歳年上、貴族嫡男としては申し分ないが、いかんせん周囲に女の子の知り合いがいないため、女子との付き合い方が下手……かもしれない。

そんな前情報を齎されたとしても、八歳の少女が九歳の男の子に出来る事など多くはない。


案の定、婚約者:ハルト・ファブラック様は、顔合わせの時間を終始仏頂面で過ごした。


先方の両親は大変恐縮しっぱなし、うちの両親は引き攣りっぱなしである。

私はと言うと、『これくらいの男の子が親に言われて無理矢理引き合わされたら、そりゃこんな顔もするわなー』と持ち前の現代日本あるあるを考えていたので、特に気にしてなかった。

むしろ仏頂面で贈り物を渡し、仏頂面でエスコートをし、言葉が少ないながらも庭の花を説明するハルト様に『よし、よく頑張った!』と頭を撫でてあげたい気分にまでなっていた。

そんな私を見て親は「変わった趣味だな……」と呟いた。失敬な。

ハルト様の親であるファブラック侯爵夫妻は感激し、「ユリア嬢しかいない!」と確信したそうだ。

そうでもないと思うけどな、とは考えつつも、婚約の条件を付け加えてもらう。


ハルト様が望むなら、いつでも婚約破棄出来ると言う項目だ。


提案した時に親は目を見開いた。

そんなに驚く?と思ったが、確かにうちに不利っぽい文章だ。

ならば『ハルト様が』を『双方が』に置き換えることを提案したら、今度は向こうの親とハルト様が愕然とした顔になった。

全員を宥めすかし、「何事もなければ継続なので問題ない」と言うと、意外にもハルト様が頷いた。


と言うことで、私と仏頂面の婚約者はいつでも婚約破棄出来る状況を長年続けている。

条件のことは知ってるんだから、嫌なら自分から言い出しなさい。

やれる配慮はやり切った!と満足した私は、今日も目線の合わない婚約者を眺めつつ、私好みに淹れられたお茶を満喫している。



***



ハルト様も私も、同じ学園に通っている。

婚約者としての義務なので朝は一緒に向かうし、馬車から降りたらエスコートを受けて教室まで向かうが、婚約者は常に仏頂面だ。

『婚約に不服なのでは』と噂が立つのは当然だし、それをわざわざ言ってくる輩もいるのはしょうがないと思う。

が、例の項目があるので「ファブラック様が望まれてないのに縋るなんてみっともないわ」と何様目線かよくわからん令嬢に揶揄されても、内心『うるせえ本人が破棄出来るのにしないんだから黙っとけ』と悪態つきつつ微笑むことが出来る。

正直、仏頂面で口数の少ない婚約者が何を考えてるかなんてさっぱりわからんが、破棄されない以上婚約は継続だし、あと二年この状況が続けば私の卒業と同時に結婚だ。

嫌ならその前に破棄するだろう。

色々式の準備や新居の支度が始まったら、破棄した時の掛かりは当然ファブラック家になる。

そのことだけは入学当初念押ししたし、「っ、分かってる!」と仏頂面を赤面させて返事をしたので、これも言質を取った。

ならば私も泰然と構えていればいい。


「……ユリアはこのままでいいのか?」


念押しを終えてホッとした私に、珍しくハルト様が尋ねてきた。

会話が1ターン以上続くなんてホントに珍しい。

マジマジ見てると、赤面した仏頂面はさらにそっぽを向いてしまった。

「不満も文句もありませんよ」「……そうか」

これは1ターンで終わったけど。

私からどうこうする気はない、と伝わっただろうか。

なので、嫌なら自分で動いてね。

その意を込めて微笑んだが、婚約者は見てたかどうか。


***


そんなある意味有名になってる私達の元に、ハルト様の同級生である令嬢が絡んで来るようになった。

爵位は私と同じ伯爵、加えて一学年先輩でハルト様が許可しているなら、私がとやかく言うことではない。

「ハルトー、あ、ごめん婚約者さんと一緒だったね!」

朝連れ立って歩いている時に声を掛けられたのが始まりだった。

ハルト様は私と彼女の顔を交互に見ていた。

……私は彼女と面識がないんだから、あんたがなんとかしなさいよ。

でないと、走って捨て去るわよ?

そんな心の声を拾ったらしく、少し慌てた様子で紹介がされた。


「……俺の婚約者のユリア・サーヴィナル嬢だ。こちらは同級生のグレイシア・トレヴァン嬢」

「初めまして、トレヴァン嬢」

「初めまして!グレイシア、でいいよ。私もユリアさんと呼んでいい?」

「もちろん」


婚約者の顔が引き攣った気がしたが、気のせい気のせい。

グレイシア嬢は物怖じしない性格らしく、グイグイ距離を詰めてくる。

令嬢としてはアウト気味な振る舞いなのだが、これまた現代日本人感覚だと『いるよねーパーソナルスペースの極端に狭い人!現代日本でならともかく、この貴族社会でどうやったらこの距離感が身に付くのかしら……?』と言う率直な疑問に変わる。

私が興味を持ったことが二人にも伝わったらしい。

「ユリア、もう行こう」

「えー、じゃあ私も行く!」

「やめろ!」

ハルト様が令嬢に怒鳴るところなど初めて見た。

目を丸くして驚いてると、婚約者はあわあわとしだしグレイシア嬢はニヤニヤと笑った。

困ってる様子なので、ここは助けてあげよう。


「ハルト様、グレイシア嬢、お先に失礼しますね」

「ユリア!」

「え、ユリアさんハルトを置いてく気?!」

「?えぇ、グレイシア嬢がご用があって声を掛けられたのでしょうから。わたくしは教室に向かいますので、お二人でどうぞ」


そう言ってハルト様の腕から手を離し、スタスタ歩き出す。

背後で呼び止めるような声と笑い声が聞こえた気がしたが、気のせい気のせい。


***


それ以来、グレイシア嬢は何かと声を掛けてくる。

そのたびに仏頂面ハルト様が表情豊かに応戦しているので、私は初めて見る表情の種類をジッと観察するのが定常になった。

視線に気付くと途端に仏頂面に戻るのだが、それをグレイシア嬢に揶揄されるとまたムキになって口論し出すハルト様。

そんなやり取りを所構わず繰り返していれば、当然『ファブラック様の本命はトレヴァン嬢なのでは?』となるのだ。


「それはそうよねー」

「何を悠長な……なにやってるんですか二人とも」


わざわざご注進に来た弟が、呆れた顔をする。

まぁ可愛い。

イイコイイコ、と撫でると嫌そうに避けられた。

「何をやってるのかはあの二人に言って。私は見てるだけだもん」

「だもん、じゃないんですよ。そもそも、姉様とハルト様の不仲を疑われてることが問題じゃないですか」

そうは言われても。

不満に口を尖らせると、「それもやめなさい」と弟に窘められた。解せぬ。

「不仲を疑われるのも、ハルト様のお顔が原因でしょう?私がどうこう出来るもんじゃないわ」

「原因のハルト様のお顔の原因が、姉様です」

「えー」

そりゃそうだけど。いでよ、伝家の宝刀!


「嫌なら破棄すればいいのよ。破棄せず我慢してるのはハルト様でしょ?」

「姉様……」


一転、憐れむ表情をされた。解せぬ!

「……ハルト様を責めようかと思いましたが、姉様が悪いと思います」

「なんで?!」

そこからギャアギャア言い合いになり、二人してお母様に怒られた。

説教中も目線で『トーリのせいよ』『姉様が悪いんです』と交わしていたらそれも見咎められ、説教が倍伸びた。


***


それもこれも、全部ハルト様の仏頂面が悪いのよ!


おかげで夕食後のデザートが二人とも抜きになったし、説教のせいで足が痺れたし!

朝バッタリ遭ったトーリからそっぽを向かれたのだ!

いつも通りハルト様が迎えに来て、馬車に乗るために手を差し伸べるが、無視して乗り込んだ。

「……?!」

驚いているようだが、何も言わない。

馬車内も沈黙のままだ。

いつもなら仏頂面でそっぽを向いてるハルト様を私が眺める構図だが、今日は逆。

私が不機嫌面でそっぽを向き、ハルト様が困り顔で見詰めてくる。

学園に着き、馬車から降りるのにはさすがに手を借りたが、さっさと離そうとしたらそのまま握られてしまった。

「?」

「ゆり「ハルトー、ユリアさん、おはよう!」」

何かを言い掛けたハルト様の声が、グレイシア嬢に遮られた。

いつもなら笑顔で挨拶出来るが、今日は癪に障る。


「あれ、ユリアさんどうしたの?機嫌悪い?」

「トレヴァン、悪いが今日は控えてくれないか」

「なんでー?あれ、二人とも手を握ってる!仲直りしたの?」


グレイシア嬢の悪意なき大声で、周囲の注目が集まる。

手を握ってることくらいで、何を騒ぐのか。

「おい、控えろと言ってるだろう?やめろ」

「えー、なんでそんなに偉そうに言うのハルトってば。威張ってる男はモテないよ〜?」

「今はそんなことどうでもいいんだよ!いいから向こうに行ってくれ!」

いつもと同じやり取りに、また周りが囁き出す。

本命がなんだの、婚約者がなんだの、破棄がなんだの……鬱陶しい。

苛立ちがマックスになった辺りで、ふと周りの野次馬のさらに奥に、別の馬車で先に家を出たトーリを見つけた。


はん、と馬鹿にした顔をされた。

プチッとキレた。



「うるさいっっ!!」



令嬢にあるまじき声量で怒鳴りつけると、言い合っていた本人達も周りも一斉に静かになった。


「うるさいうるさいうるさい、人の婚約に口出すなんて何様のつもりなの?!本人同士の契約じゃない、家同士の話に一介の学生が口出し出来ると思う訳?!面白がって囃し立ててるだけじゃないの、どれだけガキなのよ!これ以上何か言ってきたら、『お宅のお子さんは、侯爵家と伯爵家の契約に物言いを出来るほど偉いんですね?』って抗議してやるからね!」


周囲に向かって言い切る。

これでもなんか言ってくるようなら、全面戦争だ!

「ゆ、ユリア??」

恐る恐る声を掛けてくるハルト様にも、勢いで向き直った。


「ハルト様も!毎度そんなに仏頂面なのに、なんで婚約破棄しないんですか?!ちゃんと契約に入れてるじゃないの、希望に応じて破棄するって!変な我慢なんかしてるから、私が縋ってるなんて噂されてるのよ!冗談じゃないわ、誰が縋ってるって?!こっちだって望めば破棄出来るのよ、いつだって応じてやるわ!」


そのままグレイシア嬢へと向かう。


「グレイシア嬢!あなたの性分だってことは分かってますけどね、毎度毎度私達に絡んでくるのを娯楽にするのはやめてくれません?!おかげで生徒達の格好の話題じゃないの!ハルト様と話したいなら、私がいないとこでやって下さい!その結果略奪されたって、こちとら文句を言う気はさらさらないんですから!」

「「「いやそこは文句を言おう?!」」」


ハルト様の悲痛な声と、グレイシア嬢の焦った声と、トーリの呆れた声が重なった。

見事なシンクロっぷりに驚き、私の勢いが止まる。

「ハルト、今よ!」

「わかった!」

「皆様、こちらへ!」

その間に、グレイシア嬢が声を掛け、ハルト様が私を抱き上げ、トーリが誘導する。

それも息の合ったコンビネーションで、目をパチクリさせている間に私は連れ去られていた。



***



空き教室に入り椅子に座らされると、向かいに座った三人が頭を下げてきた。

「ユリア、すまない。俺の態度が悪いばかりに噂が収まらず」

「私もごめんなさい。二人が微笑ましくてつい」

「僕もごめんなさい。姉様がそんなに気にしてたなんて気付かなくて」

……そんな殊勝にされても。

「……まぁ、そこまで気にしてた訳ではないのよ。今日はたまたま機嫌が悪かったので、つい」

「悪かったな本当に……このまま破棄されるのかと、馬車内で冷や冷やした」

「昨日、僕と喧嘩して母上に怒られたんです。デザートが料理長渾身のチーズケーキだったのに、抜きになったのを根に持ってるんですよね」

「……そんな理由?」

グレイシア嬢が困惑してるけど、そんなって!

「あのチーズケーキは月に一回しか作ってもらえないんです!すごくすごく、楽しみにしてたのに……!」

思い出して泣きそうになった。

ハルト様が手を伸ばして、よしよしと頭を撫でてくれた。

これも初めてのことなので、驚いて顔をみつめてしまう。

ハルト様は眉を顰めて顔をそらしーーまたこちらに向き直った。

いつもの仏頂面だが……うん?

顔が赤くて目が潤んでるけど、大丈夫?熱?


「姉様、チーズケーキはちゃんと料理長が取っておいてくれてますから安心してください。それより、ハルト様を見て何か思うことは?」

「……体温上がってない?大丈夫?」

「「そうじゃない」」


トーリとグレイシア嬢の呆れた声が重なった。

「……ユリアを見てると、こうなってしまうから。恥ずかしいのでなるべく目をそらしてたんだが、それで不仲と言われるのなら、そらすことをやめる」

ハルト様がボソボソ呟く。うん?


「私のことが嫌いだから、見るのも嫌なのでは?」

「だいぶ好きだが?!」

「ハルト、ユリアさんのこと大好きよね〜」

「物凄く好きですよね」


全否定された。

えぇぇぇ……。

言ってる際中も、ハルト様の目は潤み続けてる。

なるほど、これが日常なのは確かに恥ずかしいかも。

ん?でも待って?

「ハルト様、顔合わせの頃からそっぽ向いてませんでした?あの頃はさすがに好きではなかったでしょう?」

「〜〜〜〜っ、一目惚れだが?!何か文句でも?!」

逆ギレされた。

ヒトメボレ。

お米の種類以外で聞くことがあるとは……、いやこの世界にはない品種だな。

衝撃の告白に、現代日本版現実逃避をし掛けた。


***


結局のところ、ハルト様が私にぞっこん(死語)なことは、よく見てれば分かるらしく。

両家の親もトーリも知ってるから、『希望したら婚約破棄』の条項についても「希望する訳なくない?」と呆れていたそうだ。

また、学内においてもグレイシア嬢との噂をするのは我々と交流のない辺りであり。

私の友達は「ファブラック様がまた熱い目で見ているのに、ユリア様は気付いてないわ〜」と生温かい目で見守っていたとか。

ハルト様のお友達は、本人を目の前にしてぎこちないハルト様を揶揄いつつも、微笑ましく見ており。

その内の一人であるグレイシア嬢が、発破をかけるつもりで絡んできたんだそうな。

面白がってたことも認める、と正式に謝罪された。

あと男は筋肉と年齢、三十路を超えなければ対象外、と尖った性癖も打ち明けられたので、男やもめな我が家の騎士を紹介することになった。


今日も私達は、言葉少なめにお茶会をする。

以前と違うのは、二人の距離。

向かい合わせに座るのではなく、斜めに配置した。

まだ、真正面から見詰めるのは照れるらしいが、横顔を見るのは好きらしい。さよか。

少し顔を動かせば見つめ合うことも可なので、これくらいがちょうどいい。

あと、ハルト様は言葉よりもスキンシップの方が向いてるので、先日の騒動で手を繋いで以来よく握られている。

「……小さい手だな」

「ハルト様が大きいんですよ」

「そうか?」

交わす会話は1ターンでも、本人の満足げな表情を見れば不満はないと分かるだろう。

少しいたずら心が湧いた。


「ハルト様が望むなら、いつでも婚約破棄出来ますよ」


その言葉にへにょりと眉を下げると、少し目線をそらしてハルト様は呟く。

「……あと二年は望まない」

「二年?」

「二年したら、婚約じゃなくて結婚だから」

「……!」

赤い顔して言われると、こちらも照れてしまう。

「……準備、頑張りましょうね」

「あぁ」


お互いに顔を赤くして黙り込むも、繋いだ手は離さないままだ。

こんなお茶会を、私は気に入っている。




◇◇◇◇◇◇◇


「あ、弟くん」

「トレヴァン嬢、先日は」

「ごめんねーなんか引っ掻き回しちゃって」

「いえ、あれは二人がお互いに鈍いのが悪いので。こちらこそ、トレヴァン嬢を巻き込んでしまい」

「楽しかったからいいのよ!それに今度サーヴィナル家の騎士様を紹介してもらうし!」

「……えぇ、好きなだけ選んでいってください」

「そうする!もし私が騎士様と結婚したら、弟くんの部下の妻よ〜」

「……お手柔らかに頼みます」

「もちろん。それはそうと、ユリアさんのことで気になってたんだけど聞いていい?」

「なんでしょう?」

「ユリアさん、もしかして自分が『学園の花』と呼ばれてるの、まったく気付いてない?」

「あぁ〜〜、ええ、まあ」

「やっぱり!なんか反応が違うな、と思ってたんだ。婚約破棄を望む人たちって、ユリアさん『に』ハルト『が』勿体無い、じゃなくてユリアさん『が』ハルト『に』勿体無いって思ってるよね?」

「おそらく」

「だよね!え、なんで気付かないの?学園の中でも際立って美人だけど、全然気にしてなくない?」

「そうですね、姉は昔から自分の容姿に一定以上の評価をしていなくて」

「一定以上?」

「まあまあ見られる、とかそこそこ整ってる、くらいにしか」

「なんてこと……!」

「なんて言うんですかね、自分と周囲の差が分からない?美的感覚がない訳ではないらしいですが、整ってる以上の美は感じ取れないらしくて。なので、何気にモテてることにもまったく気付いてないです」

「うわぁ……だからあんなに飄々としてたのね。私、最初は自分が美し過ぎて『ハルトを取られる訳がない』って高をくくってるんだと思ってた」

「それこそ『略奪されたって文句はない』なので」

「あれはハルト、抉られてたわね……」

「婚約者に言われたくない言葉ナンバーワンですね」

「まあ、アレがキッカケでハルトが気持ちを表すようになったんだから、結果オーライ?」

「おーらい?」

「あ、ここにはない言葉だった。忘れて!」

「はい……(以前、姉上も言ってたような?)」







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