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SLを見に行こうぜ

作者: WAIai
掲載日:2026/07/09

「SLを見に行こうぜ」


カバンにテキストを入れている彼女に、俺は声をかける。


「SL? 何のこと?」

「あ…えっと、これのこと」


俺がスマホを取り出し、写真を見せる。

そこには昔の黒い電車が写っており、彼女は納得したようだった。


「昔の電車のことね」

「まあ、そんなものだ。それが今、走っているんだよ。期間限定でな。見に行かないか?」


俺は爪の伸びた両手を合わせると、彼女に頼み込む。


ライオンの頼み事に、うさぎは迷ったようだが、数秒、考えた後、「うん、いいよ」と答えてきたのだった。


「本当? やった!!」


俺は大きく手を広げ、少しはしゃぎ気味に彼女の腕を引っ張る。


「ちょ、ちょっと」

「早くしないと、見逃しちゃう!!」


俺は彼女の腕を掴んだまま、走り出す。


学校を後にすると、外はむあっと熱気がこもっていた。

まるでフライパンで焼かれているようだと思ったが、俺は平気を装い、ぐいぐい彼女を引っ張っていく。


「も、もう少し遅く走って!!」

「大丈夫。あと少しだから。頑張れ!!」


俺が振り向くと、彼女は眩しそうに目を細める。

太陽の光が当たって見づらいのかと思ったが、そうではないようで、少しだけ首を傾げる。


それから進んで行き、俺はようやく足を止める。


「ここがベストポジションだ」

「え? 着いたの?」


踏み切りに辿り着き、俺は彼女を解放する。

それからスマホを取り出し、

「今、この時間か。もう少しで来るな」

「え? もう少しで来るの?」

「おう。写真、撮ったほうがいいぞ」


俺がスマホを調節しながら勧めると、彼女はカバンから使い捨てカメラを取り出す。


俺は「こっち、こっち」と彼女を手招きし、スマホを構える。


彼女はやや緊張しているようで、背中を叩いてリラックスさせてやる。


するとカンカンと遮断機が鳴った。


「来る!! よし上手に撮るそ!!」


俺は子どものようにはしゃぎ、SLを待つ。

彼女も俺と同じ方向をじっと眺めていると、黒い形が見えてきた。


こんな機会、滅多にないので、2人はごくりと唾を飲み込み、SLを待つ。


どんどんと近づいて来て、まるでファンタジーの世界に入ったかのようだった。


「あ、いいかも」


俺が今だと思い、シャッターを押す。

彼女も真似して押し始める。


SLはポッポと汽笛を鳴らし、俺と彼女に近づいて来る。


その間、スローモーションのように、長く感じられたが、現実的には速いようで、2人を置いて去っていく。


カンカンという音が止み、俺は見えなくなるまで、シャッターを押し続ける。


彼女がふーと息を吐き出したのて、お疲れ様と腕を叩いてやる。


それからスマホを見、俺は興奮する。


「撮れた!! しかも綺麗に!! 運転手さんの姿も写っているかもしれない」

「え? 運転手さん? 私、そこまで見られなかった」


彼女がえーと残念そうに言ってくる。

まるで好物を取られたうさぎみたいに、頰を膨らませるのだった。


「後で写真を送信してやるよ。その代わり、お前の撮ったの、ちょうだい」

「え。私、下手かもしれないよ?」

「いいんだよ。あー、すっきりした!! SLが間近で見られるなんて」


俺はスマホを持った手を伸ばすと、はあと息を吐き出し、彼女に顔を向ける。


「付き合ってくれて、ありがとうな」

「いいよ。私も楽しかったから」


彼女が可愛い顔で笑ってきたので、俺は頭を小突いてやる。


「喉が渇いたな。コンビニでも行くか?」

「うん!! 私ね、あのね」


2人はスマホとカメラをしまうと、楽しそうに歩き出したのだった。



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