表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東京共喰-PARASITE SITY-  作者: 波浪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/10

第一話「喰われる側」

雨が降っていた。


ネオンに濡れた東京の夜は、まるで血のように光を滲ませている。

雑踏の音、車のクラクション、誰かの笑い声。

そのすべてが、どこか遠くに感じられた。


「……また、だ」


榊 悠斗は、足を止めた。


視線の先。

路地裏に続く細い道。

そこに“違和感”があった。


——人が、いる。


いや、人“だったもの”かもしれない。


「おい……大丈夫か?」


声をかけた瞬間、後悔した。


その“男”はゆっくりと振り向く。

顔の半分が、黒く崩れていた。


まるで肉が腐食しているように、

いや——“食われている”ように。


「……タスケテ」


かすれた声。


次の瞬間、男の口が裂けた。


人間の顎ではありえない角度まで開き、

内側から“何か”が蠢く。


「ッ!?」


逃げようとしたが、遅かった。


黒い触手のようなものが、地面を這い、

一瞬で悠斗の足に絡みつく。


転倒。

冷たいアスファルトの感触。


「なんだよ……これ……!」


男の身体が膨張する。


皮膚の下で何かが動き、

骨が軋み、形が変わっていく。


もはや人間ではない。


“捕食者”だった。


「——いただきます」


声は、男のものではなかった。


その瞬間。


——パンッ


乾いた音が、雨を切り裂いた。


黒い触手が弾ける。


「……は?」


悠斗の視界に入ったのは、一人の少女だった。


フードを被り、無表情。

その手には拳銃。


「下がって」


短く、冷たい声。


次の一発。


化け物の頭部が吹き飛んだ。


黒い液体が雨と混ざり、地面を染める。


「……終わり」


少女は無機質にそう言った。


悠斗は息を呑む。


「な、なんだよ……あれ……」


少女はちらりと悠斗を見た。


その目には、驚きも、恐怖もない。


ただ——“慣れている”。


「知らないの?」


静かに言う。


「この街じゃ、普通だよ」


一歩、近づく。


「人はね、もう“人だけ”じゃない」


雨音が強くなる。


「中から喰われて、別のものになる」


少女は空を見上げた。


ネオンが滲む。


「ここは東京——」


ほんの少しだけ、口元が歪む。


「“共喰いの街”だから」


——その夜、悠斗の日常は終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ