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令嬢たちの戦場 ―土魔法と社交界―

その後、双方の代表団の間で、いくつかの合意が交わされた。魔法を軍事攻撃に使用しないこと、そして、先制攻撃は相互にしないこと。そうした宣言がなされ、今回の使節団は、観光をしながら帰国することとなった。


だが、領土のあちこちを、彼らが観光と称して見て回る様子は、どうにも気持ちの悪いものだった。シュタインベックの軍は、道を歩きながら、町の間の距離や、道路の整備状況を測り、橋の耐荷重を、細かく調べていた。彼らは、友好を誓う言葉とは裏腹に、いつでも戦えるように、着々と準備を整えながら帰っていった。


アマンダは、ただ、その様子を遠くから見ていることしかできなかった。平和の合意が、かえって、次の戦いの準備を整えるための時間稼ぎだったのかもしれない。そう思うと、アマンダの心に、冷たいものが、静かに流れ込んでいくようだった。


シュタインベック国の使節、いや、軍隊とでもいうべき集団は、ようやく引き上げていった。しかし、キャリントン領の臨戦態勢を、このまま解いていいものか、公爵は判断に迷っていた。


ここで活躍したのは、ウェンディだった。

「彼らが帰りながら測量していった情報を、台無しにしましょう」

それが、ウェンディの提案だった。


ウェンディは、土魔法を使って街道の道路の強度を上げたり下げたりし、橋には、敵意を持った軍勢が渡ろうとすると、自動的に結界が張られるように魔法をかけた。平地を緩やかな丘に変えたり、森の木々を増やしたりと、今使える魔法で、少しずつ地形を改変していった。これならば、命を奪う魔法ではないので、女神の制限には引っかからないだろう。侵略してきた敵が、地形の予期せぬ変化に戸惑えば、進軍のスピードは確実に落ちる。その間に、ダベンポートの王国軍の救援も、間に合うだろう。


キャリントンシティの守備隊は、依然として臨戦態勢を保ってはいたが、ウェンディの魔法のおかげで、緊張感は少しずつほぐれてきていた。


アマンダも、王都へ戻り、王太子の婚約者としての教育が再開された。社交の場に顔を出すようになると、王都の貴族たちは、キャリントン領で起きたことや、魔法のことについて、とにかく知りたがった。アマンダは、社交の際の情報管理にも、神経を使わねばならなかった。誰も彼もが、魔法という失われた力に、興味と欲を隠そうとしない。アマンダは、ウェンディが背負う使命の重さを、改めて感じていた。


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