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当代最高の布陣

 ウェンディは、キャリントン家に伝わる魔法の秘伝書の中から、結界魔法と転移魔法を習得するため、練習を始めた。結界魔法は、相手を閉じ込めるか、あるいは自分が結界の中に逃れるか、どちらが魔力消費が少ないのか、試行錯誤を繰り返していた。


 一方、アマンダは、離れた王都で、親友の危機をただ傍観していることに耐えられなかった。いてもたってもいられず、キャリントン領へ行こうとしたが、アーサー王子に止められてしまった。

「君が言っても、足手まといになるだけではないかい?」

 王子の言葉は、アマンダの心を突き刺した。言い返すだけの材料がなく、アマンダは、焦燥感に身を焼かれる思いで日々を過ごした。


 そんなある夜、アマンダの夢枕に、女神アルテミスが現れた。

「ウェンディの助けになるように」

 女神は、ただ一言、そう告げると、姿を消した。


 翌朝、アマンダは、夢で見た女神の神託をアーサー王子に伝えた。だが、王子は、眉をひそめて言った。

「それは、ウェンディのところに行きたいがための方便ではないのかい?」

 アマンダは、それが事実であることを必死に訴えた。王子は、しばらく沈黙した後、しぶしぶと、許可を与えた。

「わかった。だが、近衛兵を随伴させること。君一人では行かせられないからね」

 アマンダは、王子の言葉に安堵するとともに、女神の言葉の真意を、必死に探ろうとした。


 アマンダに随伴する近衛兵の中に、長兄のウィリアムズの姿を見つけたとき、アマンダはげっそりと疲れたような顔をした。その様子に気づいたウィリアムズは、得意げに胸を張った。

「お前の警護役を志願したのは、この俺だぞ」


 だが、アマンダは、いつものように、はしゃいだりしなかった。

「お兄様、この旅は、真剣なものです。普段のようにふざけた様子では困ります。いざというときには、わたくしやウェンディ様のために、命を投げ出す覚悟は出来ておいでですか?」

 かわいい妹だと思っていたアマンダから、あまりに厳しい言葉を投げかけられ、ウィリアムズは一瞬たじろいだ。


 だが、彼はすぐに、真剣な顔つきになった。

「もちろんだ。お前のために命を投げ出すのは、この俺しかいないと思って志願したのだ」

 その言葉に、アマンダは、もう一度念を押した。

「それでは、今後は、アーサー王子の婚約者として扱ってください。わたくしを、『お前』などとは、言わないように」


 ウィリアムズは、もう「御意」としか答えられなかったが、その顔は、どこか誇らしげでもあった。凛々しくなった妹の姿が、嬉しくてたまらないようだった。


 キャリントン領への旅は、順調で、何の障害もなく進んだ。公爵邸の入口で、ウェンディとアマンダは、互いの姿を見つけると、駆け寄って、抱き合って喜んだ。


 ウェンディは、アマンダの夢に女神が現れたことを、すでに知っていた。

「女神様が、あなたを遣わされたのよ。私たち二人が揃えば、当代最高の布陣だから、あらゆる危険は避けられる、って」

 ウェンディの言葉は、まるで物語の続きを語っているようだった。


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