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魔法を持つ嫁、あるいは公爵家の宝

「人払いはした。何なりと申せ」

 公爵の言葉に、ウェンディは、静かに話し始めた。

「女神は、人間に再び魔力を与えることができるかどうかを試すために、ただ一人、私だけに魔力を与え、正しく使えるか試すと仰せになりました。そして、帰路の馬車の中で、夢を使って、わたくしに魔法の手ほどきをしてくださったのです」


 ウェンディの言葉は、アマンダにとっても、初めて聞くことだった。

「うつらうつらしていると思ったのは、女神様の夢を見ていたのね……」

 アマンダは、思わず、そうつぶやいた。


 そして、ウェンディは、話を締めくくるように、きっぱりと言った。

「今までの話が真実であったことを証明するために、魔法をお見せします」

 ウェンディがそう言うと、静かに両手を広げた。すると、彼女の手のひらの上に、柔らかな光の玉が、ふわりと出現した。光の玉は、まるで生きているかのように、ゆらゆらと揺れ、その神秘的な光で、部屋を満たした。ウェンディは、光の玉をそっと手のひらで包むと、公爵とアマンダの、驚きに固まった表情を、静かに見つめた。


 キャリントン公爵は、俄かには信じがたいという顔をしていた。その瞳には、まだ疑いの色が残っている。

「ウェンディ嬢、君の魔法を信じないわけではないが、それは手品とか、奇術の類ではないのだな?」

 公爵は、今一つ、ウェンディの言葉を信用していないようだった。


 ウェンディは、その態度を責めることはしなかった。

「長い間廃れていた魔法ですもの。にわかに信じろという方が、無理があるでしょう」

 そう言うと、ウェンディは、公爵に向かって微笑んだ。

「公爵様ご自身に関わる魔法を使ってみます。公爵様がお掛けになっている椅子を、公爵様ごと、宙に浮かせてみますね」

 ウェンディの瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。

「この椅子に種も仕掛けもないことは、公爵様ご自身が一番よくご存じだと思いますので」


 ウェンディが、静かに両手のひらを公爵の方へ向ける。すると、公爵の体が、座った椅子ごと、ふわりとゆっくり、三十センチほど持ち上がった。公爵は、その瞬間こそ驚きに目を見開いたが、さすがに度胸が据わっているのだろう。すぐに、にこやかに笑みを浮かべた。


「ウェンディ嬢、確かに魔法のようだ。我がキャリントン公爵家は、なかなかの宝を得たのかもしれぬ」

 公爵は、宙に浮いたまま、横に立っていた息子に言った。

「ジェームズよ、ウェンディ嬢を、大切にするのだぞ」

 その言葉に、ジェームズは、静かに、しかし力強く頷いた。ウェンディは、光の玉を消した時と同じように、ゆっくりと公爵と椅子を床に下ろした。公爵は、その不思議な体験に、心から満足しているようだった。


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