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蓮に舞う  作者: Momamo
第1章
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7.第4節:鍵と報酬と潜入



一一

一一一

一一一一・・・


『瑠、紅月、今いいか?仕事だ。』



裏の仕事の依頼人の1人の黒刃(クロハ)だ。


黒刃はいつも唐突に依頼を投げてくる。



「あぁ、大丈夫だ。今回はなんの仕事だ?」


『情報収集と、ある物の奪取だ。』


「報酬は?」


『200でどうだ。』


予想より多い。つまり、それだけ危険ってことか?


「……随分とはずむな。何かあるのか?


『察しがいいな。』


「……まぁいい。紅月も行けるか?」


「うん、大丈夫。」


「だそうだ。それで、細かい内容は?」


『今そちらに向かっている、直接話そう。あと5分で着く。』


「了解。」



プツッと通信が切れた。




「さて、仕事だ。着替えるぞ、柚」


「ほんとはゴロゴロしていたかったけど……仕事だし、蓮也が行くなら、ちゃんと行くよっ」



俺と柚は裏の仕事の服に着替える。

真っ黒の羽織に、袴パンツのようなものだ。

フード付きで、認識阻害もかかっている上に防御力もあるスグレモノだ。



「屋根で待機するぞ。」


「わかった!」



俺たちは屋根裏に登り、黒刃の到着を待った。



一一

一一一

一一一一・・・



「それで、今回はどういう案件だ?」


到着した黒刃に聞く。


「あぁ、国家安全保障局の堂島(どうじま)ってやつが今回のターゲットだ。今回はターゲットが持っているとされている《鍵》を入手してもらいたい。あと、重要な情報も持っていると聞く、それを聞き出せたらその録音も。」


黒刃はそう言いながらターゲットの情報が書かれた紙と、ターゲットの魔力反応が記録されている魔力結晶を差し出した。


「ターゲットは普段から隠密行動が多くて、今どこにいるかはわからない。だが、お前なら魔力反応がわかれば追えるだろう?」


「あぁ、そうだな。」



俺は魔力反応を元に、名古屋市内を探知してみた。

………今はホテルの一室にいるようだ。



「それで、方法は?手荒な方法をとってもいいのか?」


「なるべくバレないように頼みたい。ちょっと厄介な相手でな、バレると面倒臭いことになりうる。任務は今日から3日間で完遂してほしい。できるか?」


「まぁ、やれるだけやってみるさ。」


「紅月はどうだ?」


「…………。あなたからの依頼ってのが気に食わないけど、れん…瑠がいるなら。」


柚は俺以外の人には基本冷たい。

懐かない猫みたいだ。


「ははっ、紅月は相変わらずだな。わかった。では、頼むぞ。」


「あぁ、任せろ。」


黒刃は音もなく消えた。



「………さて、柚。まずは情報収集に行くぞ。堂島は今セレスタ・タワー名古屋の、おそらく最上階にいる。座標は愛知 第4管区・中域ブロックC-3だ。」


「おっけ〜わかったよ!とりあえずまずは下見かな?」


「あぁ、そうだな。状況を見て潜入方法を決めよう。」



俺たちは外に出て音も立てずに空に飛びあがる。


「行くぞ。」



影に紛れ、俺たちは夜の空を駆けていく。

夜はいい。姿も、存在も、なにもかも、曖昧になる気がするから。



一一

一一一

一一一一・・・



「ここか。」


俺たちは今ホテルの最上階の目の前を飛んでいる。

どの部屋も電気が付いていない中、一部屋だけ明かりがついており、中には複数の人がいる。


「どれどれ〜?」


柚は俺が持っていたターゲット情報が書かれた紙を見る。


「あっ!いるよ、中にいる!あの椅子に座ってるやつ!」


「流石、目がいいな。見つけるのが早い。」


「えっへへ〜、褒められちゃった!」


俺も部屋の中を確認する。

確かに、椅子に座ってるやつだな。



「まずは隣の部屋に侵入する。」


「了解っ!」


俺は封環から糸霊器を取りだし、糸を窓の隙間に通し鍵を開け、中に侵入した。


壁に耳をつけて音を聞いてみるが、流石VIP室、全く聞こえない。



「しょうがない、壁に穴を開ける。目立たない位置……そうだな、テレビの裏側に開けよう。」


糸を束ね、ドリルのようにして壁に穴を開ける。

貫通する1歩手前まで開けた後、2つの道具を取り出した。

魔力を流している間感覚を共有できる、小指の爪ほどのサイズの魔力結晶と、魔力量に応じて一定時間の音を記録できる手のひらサイズの魔道具だ。

音を記録する魔道具は手のひらサイズもあるため、部屋に入れるのは難しいかもしれないが……


まずは感覚共有の魔力結晶が通る程度に穴を開ける。

次に、糸で固定した魔力結晶を慎重に滑り込ませた。


直後、一瞬だけ、部屋の気配がざわついた気がした。


(…………気のせいか?)


俺は呼吸を静め、身動きを止めた。

………だが、以降変化はない。


俺は目を瞑り、感覚を共有する。



(偶然か。お、ここは…大当たりだ。ベッドの裏、これなら魔道具の方も入れられるかもしれない。部屋の中には…1、2、3、4……………合計7人か。ターゲットと、重要そうな人物2人、護衛が4人ってところかな。護衛はほかにもいるかもしれないから油断はしないでおこう。)



俺は柚に魔力通信を送る。


『穴を開けたから、ここからは会話禁止だ。何かあれば魔力通信で話してくれ。』


『わかったよ〜!それで、どう?盗聴できそう?』


『あぁ、幸いにも穴の先がベッドの裏だった。これなら魔道具の方も入れられる。』


俺は音が出ないように慎重に壁を削りながら言う。


『柚は、この建物の構造、警備システム、監視カメラの位置、入れ替われそうな従業員などを調べてくれ。』


『わかった!行ってくるね〜』


柚は窓から静かに外に出た。

柚なら大丈夫だろう。


穴を開け終わった俺は魔道具を潜り込ませ、ベッドの下に置き、3日分の魔力を込め起動させた。


よっぽどの事がない限り発見はされないだろう。



(後は、《鍵》が何処にあるのかを話してくれるのを待つだけか。)


俺は壁にもたれ、静かに目を閉じた。

一一作戦開始だ。



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