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蓮に舞う  作者: Momamo
第1章
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5.第2節:消失の兆し


一一一《戒》愛知県支部内にて。



「一一一・・・今後もいっそう励むように。あー、あと、最近物騒になってきている。市民の安全を守るためにも、諸君らは《戒》としての自覚を持ち、平和な世の中をめざしてくれ。以上、解散っ。」


「「「はいっ!!!!!ありがとうございましたっ!!!!」」」



みんながいっせいに立ち上がりお礼を言う。



この日は年に一度の"ありがたいお言葉"タイムなのだ。

……もちろん、好んで聞くヤツは少ない。


みんながいっせいに帰宅の準備をする中、一人の男が近づいてくる。

俺の同僚である、葉山(はやま) 悠真(ゆうま)だ。


「よーっす!燈弥(とうや)!元気してっか?」


俺は《戒》の仕事をする時は、浅葱(あさぎ) 燈弥(とうや)という偽名を名乗っている。


「悠真か。相変わらず元気だな。俺は普通だ。わざわざ声掛けてきて、何かあったのか?」


悠真は嫌そうな顔をして話す。


「いやぁー、毎年この戒始の日って、マジでダルいよなぁと思ってな。決意を新たに!とか言って、実際はお偉いさんの自己満じゃん?なぁ、そう思うだろ?」


「俺は特に気にしなかったが…まぁ、そう思うやつも多いみたいだな。それよりも、まだ一応そのお偉いさんが部屋にいるんだ、慎めよ。」


「わりぃわりぃ!気ぃつけるよ。そうだ!これから呑みに行こうと思ってたんだが、燈弥時間あるか?良かったら久しぶりに一杯行こうぜ!」


形だけ謝り、まるで大型犬のような人懐っこさで呑みに誘ってくる。


「呑み、か………。…そうだな、たまには、付き合ってやるよ。」


「おぉー!やったぜ!じゃ決まりな!支度整ったら下のロビーで待ち合わせな!」


「わかったよ。」


悠真は笑顔で立ち去る。



悠真は誰にでも人懐っこく話す人気者だ。

あいつと話すと元気になるってやつが多いのだ。

俺がここ最近特に憔悴してるように見えたんだろう、気を使ってくれたのだ。

あくまでこの《戒》の仕事は俺にとって隠れ蓑でしかないが、悠真の存在だけはとてもありがたいと思う。



そうして俺は、準備を整え、下に向かった。


一一

一一一

一一一一・・・



「あいつはまだ……来てないか。」


俺はスマホを取りだし、柚に帰りが遅くなることを伝えながら悠真を待つ。



「……………消え…………………そうですね、まだ…………手がかり……………捜査を…………」



遠くから声が聞こえた。

見ると、悠真と部下である嶋田(しまだ) (けい)が話をしている。


俺は悠真に近づき、話しかけた。


「待たせすぎだ。何かあったのか?」


「!!、燈弥か!いや、実はだな………。」


酷く驚いた顔をしながら悠真が話始めようとしたのを、慧が止めた。


「ちょっと、悠真さん……」


慧は一瞬だけ俺を見て、僅かに眉を寄せた。

……あぁ、これは"聞くな"って合図だ。


「ん……あぁ、そうだったな。わりぃ燈弥、詳しく話せねぇんだ。」


「そうか。まだ時間かかるか?」


「いや………この話はまた今度で大丈夫だ。なぁ?慧。」


「はい、そうですね。また時間がある時にでも……」


「てことだ!行くぞ!燈弥!」


「悠真さん、また今度。燈弥さんも、お疲れ様です。」


「あぁ、お疲れ。」


俺はなんの話をしていたのか気になったが、口を突っ込まないことにした。


大人しく悠真につれられて移動する。




たどり着いたのは小さめの居酒屋だ。

結構色々な食べ物があり、なにより個室になっているから悠真と呑む時はいつもここだ。


「えっと、生2つ、焼き鳥セットを1つ、ゲソ唐揚げ1つ………………………以上で!」


「はいよー。」


俺は注文はいつも悠真に任せっきりだ。

こいつが美味いと思うものは、だいたい本当に美味いからだ。


「はーい、生おまち〜。」


「よしっ、乾杯すっぞ!かんぱ〜〜い!!!」


「はいはい、乾杯。」


グラスを軽く打ち合わせ、ぐいとビールを流し込む。

ビールのこの喉越しが、乾いた喉にしみ渡る。


俺はタバコに火をつけながら悠真に話しかける。


「……で、なんかあったのか?」


「いやいや!なんかあったのはお前の方だろ、燈弥!ここ何年も、どんどん顔色が悪くなってる。心配してるんだぞ?」


「いや、それは……悪いな。詳しくは、話せないんだ。ただ、大事なものを失くして、見つからないってだけ……」


「なるほどなぁ。……目星はついてるのか?」


「それもまだなんだ……」


俺は届いた焼き鳥を1つ口に入れながら話を続ける。


「まるで神隠しにあったように……消えてしまったんだ。」


「それは…………つらいな。まぁ大丈夫だ、お前なら見つけられるさ。(……お前ならやっぱ話してもいいよな…)……それはそうと、最近ちょっときな臭い話があるの、知ってるか?」


悠真は声をひそめながら言った。


「なんでも、人が消えるらしいんだ。全国的になんだが、忽然と姿を消し、その後見つかったものはいない…という。人が消え始めたのは4.5年ほど前でな、最初は少なかった失踪者も今じゃ結構な数になっている……燈弥のことと、関係があるかは分からないが。」


「なにっ??それは本当か?」


俺は思わず席をたちそうになったが抑える。


「あぁ、調査部隊のやつらと合同で調査してるんだが、手がかりがまるでなくてな。霧を掴むような感覚なんだ。お前もこの調査、一緒にやらないか?」


「あぁ…是非とも。もしかしたら俺の件とも関係があるかもしれないから、協力させてくれ。」


俺は頭を下げた。


「頭上げろって!お前がこんなしおらしいの、気持ち悪いな……」


俺は頭をあげ、気になったことを聞く。


「それで、調査は今どこまで行ってる?」


「あぁ、それが、もしかしたら静岡に何かがあるかもしれないって話でな。」


……静岡。


「静岡か。………丁度、今度行く予定なんだ。」


「なにっ?それは本当か?それなら話は早い。調べてきてもらいたいものがある。」


「それは構わないが、期間が短くてな…俺の休みの4月の6~8日に行く予定なんだ。」


「それなら、残りは仕事として静岡に残ればいい。そうだな……合計2週間、そこでわかる範囲まで調べてほしい。それを元に、次の調査内容を決めたい。」


「あぁ、わかった。それでいこう。ありがとう、この話を俺にしてくれて。」


俺は頭を下げた。


「いいんだ。何かしらの関係があるかもしれないからな。」

「さて、と。食い終わったし、そろそろ出るか!」


「そうだな。ありがとう。このお礼はいつか。」


「いいって!じゃ、行こうか!」



俺たちは外に出て、タバコを1本吸ってそれぞれ帰路に着いた。

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