4.第1節:静かなる再出発
ここからが本編です。
よろしくお願いします。
初心者あるあるなのかわからないのですが、投稿した文章がめっちゃ気になるんですよね…
コロコロ細かい部分変えるかもしれませんが、よろしくお願いします。
一一一あの日から、もう5年が過ぎた。
舞を奪われた、あの雨の日から。
4年前の施設潜入以降も様々な方法で手がかりを探したが、まるで霧の中を歩いてるような感覚に包まれる。
生きているという情報も、死んだという情報も入らない。
姿が見えなくてもせめて、情報だけでも一一一
パタパタ、とスリッパの音が背後から近づいてくる。
「れ〜ん〜??なぁにしてるのっ。」
急に頭に重いものが乗っかった。
「…………ん、あぁ、柚か…。いや、舞のことを考えてたんだ……。」
「5年も見つからないなんて思わなくて。生きているのか死んでいるのかさえ……。」
「………。大丈夫。きっと、まいちゃんは生きてるよ。」
「そうだと、いいがな。そういえば、何か用事か?」
「!!、そうなの!!あのねっ、仕事で静岡行くことになったんだけど、れんもど〜かなって思ってさ。」
頭から重い感覚が消え、柚がクルクル回りながら話を続ける。
「あの悠命樹で有名な、静岡だよっ。天まで届く巨木!なんか〜いろんな縁が増えるらしくて、私、れんと行きたいな〜って思って。どうかな、だめ?」
「静岡か。」
……そういえば、昔一一
一一一あのね、えっとね、あのね……
一一一どうした?ゆっくりでいい。
一一一あのね……静岡っていうところにね、でっかい木があるらしいの。
一一一それで、どうした?行きたいか?
一一一うん……れんくんと、いつか一緒に行けたらなって思って。それだけなんだけど……
一一一ふっ、そうだな。いつか、行こう。必ず。
一一一一一・・・
懐かしい、舞とのやり取りだ。
俺は少し穏やかな気持ちになりながら返事をした。
「静岡ってたしか和牛が一一『和牛っ?!?えっ、めっちゃ食べたい〜!!!』一一有名らしいから、一緒に食いに行くのも、悪くないなって言おうとしたんだが……。」
「えっ、なになに?」
俺は溜息をつきながら言う。
「人の話を遮るのは良くないぞ、柚。」
「あっ、ごめん、ごめんなさい…興奮しちゃってつい……ごめんねれん、ごめん、怒ってる?どうしよう、私、そんなつもりじゃ……あああ!!!私はもう死んだ方が…!!!」
柚がその場に崩れ落ち泣き出した。
今にも死にそうな顔をしている。
「待て待て待て話が飛躍しすぎだ。ごめんなさいひとつで十分だってのに。ほんっとお前、すぐ暴走するよな。」
「ごめんね、ごめんね……」
「もういいって、わかったから。それより!!肉、食いに行くか?」
「いいの…??えへへ、やっぱりれんはれんだな〜、大好き!行こっ!一応予定ではね、4月の6日から8日なんだけど。」
俺は手帳を取りだし日付を確認する。
「4月の、6…6………7、8、あぁ、大丈夫、戒も裏の仕事も入ってない。いけるぞ。」
「やったぁ〜〜!じゃあ、約束ねっ?」
「あぁ。」
上機嫌になった柚は涙を拭いて、踊りながら部屋から出ていった。
「……まるで嵐だな。」
ぽつりと呟き、俺も立ち上がる。
今日は3月29日。
《戒》の者たちが、決意を新たにする日一一戒始の日だ。
今回は短いです。