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蓮に舞う  作者: Momamo
第0章
3/26

3.第3節:追跡の罠


すこし飛んだところで俺は魔力マーキングを起動する。

耳のところに陣が浮かび、そこから声が聞こえてくる。



『…………で、はい…………今………区・南域…………5……』



「少し聞こえずらいな……魔力妨害を使っているのか。だけど俺には関係ない。」


俺は魔力出力を上げた。



『はい、現在愛知 第4管区・南域ブロックD-5より中域C-4方面へ移動中。最終目的地は未だ不明です。はい。包囲網をお願いします。』



……やはり追跡されていたか。

しかし一体どうやって……



そこで俺は思い出した。

施設でナースの女とぶつかった事を。


女とぶつかった右側を中心に探ると、ポケットの中に発信機を発見した。



「あの女もグルだったのか…見抜けなかった俺のミスだな。あの時は焦りすぎてた。今後は気をつけないと……。」



しかしどうするか。

このまま発信機を捨ててもいいんだが、鬱陶しいあいつをおちょくるのも面白そうだな。



「……よし。とりあえず(ゆず)と合流するか。」


俺は別の魔力を構築し、柚に発信した。



『………もしもし?れん?作戦は、舞ちゃんはどうだったの…?』


「失敗した。この話は後でする、今は時間があまりない。柚今どこにいる?」


『中域C-3辺りで待ってるよ〜。合流する?』


「合流したい。目印になる建物…そうだな、その辺で1番高いビルの屋上で待機しててくれ。ついでに俺と同じような体格の男を1人拉致ってこい」


『了解〜。じゃっ、また後でね!』



通信が途切れた。俺も中域C-4方向から少し変更してC-3方向に向かった。



ゆず、本名 神城(しんじょう) 柚葉(ゆずは)

表向きは神城(かみしろ) 柚葉(ゆずは)と名乗り外科医をしていて、表の裏ではTōka(トーカ)として宝石細工や金属細工、魔装細工(詠刻術(えいこくじゅつ))等の様々な細工をする細工アーティストをしている。

裏の仕事は紅月(あかつき)と言う名前で活動している。


俺の相棒、仕事仲間だ。



一一一一一一一一一一一一一一一(合流地点にて)


「れん〜!会いたかったよ〜」


「ゔー!!ゔぅー!!!!!」


そういって柚は俺の腕に抱きついてきた。


「離れろ、鬱陶しい。」


「もう……れんったらケチなんだから。でもそんな所も好きだよ。……それで、状況は?」


「いつも通り隼に追われてる。発信機はこれだ。」


そういって僅かに魔力を放つ小さな機械を見せた。


「壊しちゃえばいいんじゃないの?」


「それもそうなんだが……いい加減ムカついてるからな、少しおちょくってやろうかと思って。」


「な・る・ほ・ど〜……。いいね!楽しそう!それで?どうするの?」


「その男を使う。」



そう言って俺は拘束された男をちらりと見る。


身長・体格、全てが俺と同じような男。

さすがだな、柚は。いつも俺の期待を裏切らない。



「俺の服をこいつに、こいつの服を俺が着て、発信機をこいつに持たせて空に飛ばす。家とは逆方向にな。」

「30分ほど飛ばせて地面に降ろしてやればいいだろう。」


「なるほどね、いいと思う!じゃあ早速……」



柚は男にじりじりと詰め寄り、服を脱がせ始めた。

俺も自分の服を脱ぐ。

顔の変装も別のものに変えた。


(静かに吹く風の音)

一一

一一一

一一一一・・・


「着替え終わったな。じゃあな、気張れよ、名も無きおっさん」


「ゔー!!!!ゔゔー!!!!!」



俺は男を空に浮かばせ、30分で地面に落ちてくように魔力を調節して、南東域E-5に向かって飛ばした。



「……さて、少し回り道して家に帰るか。」


「そうだね。あの家に、帰ろう。」


ようやく腕を解放した柚と共に空に浮かび、北域B-3方面に向かった。



一一

一一一

一一一一・・・


なにか騒がしいと思った。下からだ。

柚に舞のことを話していて気づかなかった。


何事かと思い下を見ると、大量の戒機(かいき)(セキ)》の車がいた。



「何事だ?こんな《(カイ)》が出動するなんて…いや、まさか……」


《戒》とは、別世界の日本で言う警察組織で、《斥》とはパトカーのことである。

俺は魔力マーキングを再起動した。


『ええ、はい、そうです、E-5方面はダミー、B-3方面が本物です、はい。はい…はい、《斥》複数台にて追跡中です』



……………やられた。

恐らく発信機はダミー、俺自身に位置情報の魔力マーキングが付けられていたんだ。



「柚、予定変更だ。二手に分かれる。俺はB-2、柚はC-3方向に戻れ。柚に魔力マーキングは付いていないから路地裏で降りてしばらく潜伏、その後戻ってこい。それぞれ《斥》を撒いたら家に集合だ。」


「了解〜。れん、気をつけて帰ってきてね。れんがいないと、私………」


「わかった、気をつけるから、柚も、全力で撒けよ。」


「うんっ!わかった〜!じゃあまたあとでね〜」



俺たちは二手に分かれた。



『……二手に分かれた?そうですね…本命はB-2方向に向かってます。7:3で《斥》を分けて追跡してください。』



………本当にしつこい男だ。

どこまでも追ってくる。


俺は地形を活用しながら《斥》を撒いていく。1台、2台、3台………と車が減っていく。


「そもそもどこに魔力マーキングを…………靴か。あのナースの女、小賢しい真似を………。」



俺は適当に選んだビルの屋上に降り立ち靴を脱ぐ。



「……………あ、あった。やっぱり靴か。」


靴を持ったまま悩む。

魔力マーキングの効果時間は恐らくあと5分ほど。


「5分なら、まぁ。ここで暇つぶしするかな。」



俺は封環から適当な重いものを取りだし屋上に続くドアを塞いだ。



舞のことを考える。

舞……お前がいないと、俺は……。

頭がおかしくなりそうだった。


この1年間、あらゆる手段を使って手がかりを探した。

だが見つかった手がかりは、さっき、潰えた。


舞は今どこにいるのか、生きているのか、死んでしまったのか。

わからない。

また、調べ直さなければいけない。



一一一そんなことを考えて5分過ごした。

バリケードをしたドアの向こう側からは怒鳴り声が聞こえ、ビルの下には《斥》が並んでた。



「今度こそ、じゃあな。」



俺は一瞬姿を消してビルから脱出する。



今回は危なかった。気づかなければ家まで連れて行ってたかもしれない。

今度は気をつけよう。今度がない方が有難いが。



……ぽつり。



雨が頬を濡らした。

俺は、雨が嫌いだ。

舞が居なくなった、あの日を思い出すから。



俺はあんな四肢だけを見て諦めたりなんか、しない。

必ず見つけだす。

たとえ遺体であったとしても、必ず、取り戻す。

待っていろ一一一


そう誓いながら、帰路についた。

次回は設定集です。ネタバレも含まれるので気をつけてください。

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