1.第1節:雨と血の記憶
初めまして、Momamoです。
初投稿ゆえ未熟な文章で申し訳ありません。
良ければ楽しんでいってください。
更新頻度はほぼ毎日、更新時間は20:30〜21:00です。
その日は雨が降っていた
家には誰もいない
いるはずの、"いなくてはならない"存在がいない
部屋の中はぐちゃぐちゃになっていた
誰かが俺の"もの"を奪ったのだ
俺はこんなこと許さない、許すものか
静かに怒りに耐えながら、こぼれた涙を拭った
一一舞
名前も、居場所も、命すらも失いかけていたお前を救ったときから、「名前」を与えた時から、お前は俺のものだ
誰が奪おうとしても、誰が壊そうとしても、俺が守ると決めた存在
「舞……………」
呟いた名前は雨の音にかき消され誰の耳に届くことなく消える
「何年かかっても、お前を……舞を、助けてみせる。待ってろ…俺が必ず…ッ!!」
ザーーー
雨音だけが聞いていた
一一
一一一
一一一一・・・
1年後
ようやく手がかりを掴んだ
ここに、いる、はずなんだ
目の前には白い無機質な建物
表向きは老人ホームと見せかけた収容施設
中に、舞が、いる。
"いない"って情報もあった。"いる"って情報もあった。
もう"死んでる"かもしれないって噂も聞いた。
それでも一一可能性を信じる。
たとえ四肢がなくても、心臓が止まっていても、俺は迎えに行く。それで一緒に帰るんだ。
魔力で顔を変え、複数のIDから1つ選び建物へ向かう。
さあ、行こう。
一一一一一一一一一一一一一一
建物の中はやけに静かだった。
老人ホームの振りをしているだけあり、1~3階は老人ホームとして機能しているようだ。
目の前の部屋から笑い声が聞こえる。テレビの音が聞こえる。
一一だが、全部偽りだ
中身は研究施設。魔力実験のための合法的な人間収容所なのだから。
職員の名札をつけ、職員の振りをして歩く俺の心臓は、静かに高鳴り続けている。
「舞…ここに、居るんだろう…?お願いだ…舞…」
情報は確かなはずだ。
ここに"舞"という名前の女が運び込まれた。
舞…あの美しい黒青の髪、声、泣き顔、笑顔……全て脳に焼き付いて離れない。
早く。早く。
B-403号室
そこにいる……はずだった。
廊下を曲がり、ナースの女とすれ違う。その際少しぶつかってしまったが、潜入しているとはバレなかった。
ドアノブを握る。
ここに、いる。
一呼吸おいてあけることにする。
一一すぅー………はぁー………
一一カチリ
鍵は空いていた。
嫌な予感がした。額を伝う汗が頬に落ちた。
静かに、でも急ぐようにドアを押し開ける。
そして俺は一一一
息が、止まった
白い床に、転がる。
切断された白い腕、白い足一一そして赤。
床が赤に侵食されていく。
腕は、足は、動かない。
身体はどこにも、無い
「……ぁ」
声にならなかった。
息が詰まり、喉が焼けて、目の奥が痛い。
これが、舞?
現実なのか夢なのかわからない
夢であって欲しい、こんな現実は…
わからない
顔も、身体も、ない。
でも一一わかる。
ここに、いた。
俺が来るのを、ずっと、ずっと、待っていたんだ
「……っ、くそっ……舞……!!」
足が震え、涙がこぼれた。
叫ぶのを我慢して押し殺して、俺は、両手を床にたたきつけた。
血の匂いが鼻を突く。
吐きそうだ。
でも一一一吐いてる場合じゃない。
舞の身体を、顔を、確認するまでは、諦めない
遠くから足音が聞こえる
「チッ……これは、潜入がバレたか、いつどこで…いや、今はそんなこと考えてる暇は無い」
涙を拭いながら部屋の窓に駆け寄る。
窓を開け、一瞬後ろを振り返り
「俺は諦めない…すぐに…すぐに助けてやるからな…!」
そして窓から飛び降りた
主人公の名前などは今後出てきます