30.御伽原市立図書館
夜の御伽原学園。残業をしていた教職員も全員帰宅し、人の気配が消えた校舎。
その校舎の屋上に、空から2人の少女が舞い降りる。言うまでも無く智慧理と露華だ。
「こんばんは、紗愛先輩」
智慧理が声を掛けると、手持無沙汰にフェンスに寄りかかっていた紗愛が顔を上げる。
「珍しいじゃない、パトロールの前に話したいことがあるなんて。何かあったの?」
「めっちゃ何かありましたけど、その前に」
智慧理は隣に立つ露華の背中を押して1歩前に出させる。
「紹介します、こないだ私のクラスに転校してきた鹿籠露華ちゃんです」
「鹿籠露華です~。初めまして~」
露華は少し緊張した面持ちで紗愛に向かって頭を下げる。それに対し紗愛は不思議そうに眉根を寄せた。
「なんで今更紹介なんてするの?」
「だって紗愛先輩、露華と会うの初めてじゃないですか」
「え?……あそっか!そうね!初めましてだったわね!」
紗愛は夜のパトロールなどの際には智慧理と視界を共有しており、智慧理と紗愛が交流する様子も一人称視点で目の当たりにしている。そのため紗愛は自分もとっくに露華と知り合っていたような気になっていた。
「初めまして、千金楽紗愛よ。一応この学園の生徒会長をやらせてもらってるわ」
「紗愛先輩が生徒会長の仕事してるとこほとんど見たことないですけどね……」
「智慧理、余計なこと言わない」
紗愛に睨まれたので、智慧理は両手の人差し指で唇の前に×を作った。
「よろしくね、鹿籠さん」
「こちらこそよろしくお願いします~」
握手を交わす紗愛と露華。
「す~ごい年齢差……」
「余計なこと言うなって言ったでしょ智慧理」
「いやだって年の差ホントにすっごいですよ?露華ってまだ生まれて3ヶ月でしょ?」
「はい~。ぴちぴちの赤ちゃんです~」
「それで紗愛先輩って確か88歳じゃないですか」
「そうね」
「ええっ!?」
紗愛の実年齢を聞いて驚いたのは露華だ。
「88歳って……ど、どういうことですか~?」
「あ~、私って実は恐竜人間なのよ。恐竜人間って分かる?」
「分かります~」
「だから私のこの見た目は魔術で作った偽物なの。ホントの顔見る?」
「見たいです~」
紗愛が仮面を外すような仕草をすると、ティラノサウルスに似た紗愛本来の頭部が露わとなった。
「わ~!」
露華はパチパチと手を叩いて喜んでいる。
その反応を見た紗愛は無言で頭部を人間のものに変え、また恐竜の頭に戻す。紗愛がそれを繰り返す度に、露華はキャッキャとはしゃいでいた。いないいないばあとほぼ同じ原理だ。
「88歳と3ヶ月ってとんでもない歳の差ですよ。おばあちゃんと孫……っていうかもうひいおばあちゃんとひ孫くらい離れてます」
「言われてみれば確かに……今の私、完全に孫をあやすような気分でやってたわ……」
「紗愛おばあちゃん、ですか~?」
「……その呼ばれ方はあんまり嬉しくないわね」
露華には全く悪意が無いだけに、紗愛は複雑な表情だった。
「まあいいわ。それで私に話したいことっていうのは何なの?」
「あっそうだ忘れてた」
「忘れないでよ……」
紗愛と露華の自己紹介が殊の外盛り上がったせいで、智慧理は危うく本題を忘れるところだった。
「今日の夕方、ウェンディゴが出たんですよ」
「ウェンディゴが夕方に?それはちょっと変ね」
「ですよね?でも変なのはそれだけじゃなくって……」
智慧理はウェンディゴ達が小学生を襲っていたことや、男の子もその場で殺さずに連れ去ろうとしていたことなどを紗愛に話した。
「ウェンディゴが男児まで狩りの対象にするなんて……」
案の定紗愛も智慧理と同じことを疑問に思い、顎に指を当てて考え込んだ。
「一応私と露華が考えたのは、今日出たウェンディゴが変わり者だったってパターンと、変わったことしなきゃいけないような理由があったパターンなんですけど……紗愛先輩はどっちだと思います?」
「……多分変わったことしなきゃいけない理由があったパターンね。っていうのも、ウェンディゴの行動が奇妙なのは今日に始まったことじゃないもの」
「えっ、そうですか?」
「ええ。そもそも先月辺りからやけにウェンディゴの出現が多くなって気になってたのよ。その上この前なんか、一晩で10体規模のウェンディゴの集団が3回も出現したでしょ?絶対ウェンディゴ達にとって普通じゃない何かが起きてるんだわ」
「何かって?」
「それはまだ分からないわ。一応可能性はいくつか考えられるけど、まだ断定できるほどの情報は無いし……」
パン、と紗愛は気を取り直すように手を打った。
「だから今からウェンディゴのことを調べに行きましょう」
「調べに行くって……どこにですか?」
「調べものって言ったら、図書館って相場が決まってるでしょ?」
紗愛が智慧理を引き連れてやって来たのは、御伽原駅の北口にある御伽原市立図書館だった。
ちなみに露華は付いてきていない。「お2人が調べ物をする間に、私が街を守っておきます~」と言って廻廊を開いてどこかに行ってしまった。その言葉を信じるなら今頃街の見回りをしていることだろう。
「やっぱり閉まってますね、図書館」
真っ暗になった図書館を見上げる智慧理。現在時刻は夜の8時、開館時間はもう終わってしまっている。
「智慧理、こっちよ。付いてきて」
駐車場を封鎖しているチェーンを跨ぎ、さも当然と言わんばかりに敷地内に侵入する紗愛。
「え、ちょっ、大丈夫なんですかそんなことして!?」
「大丈夫だから。他人に見られる前に早く」
「他人に見られちゃダメなら大丈夫じゃないんじゃないですか!?」
紗愛がどんどん先に行ってしまうので、智慧理も慌ててその背中を追う。
「そもそもウェンディゴのことなんて図書館で調べられるんですか?」
智慧理は早足で紗愛の隣に並びながら、道中ずっと気になってたことを紗愛に尋ねた。
「入ればすぐに分かるわ」
しかし紗愛は勿体ぶって答えない。
図書館の裏手にあるサブエントランスにやってきら2人。しかし当然扉は施錠されており開かない。
「どうやって入るんですか?」
「折角だから智慧理も覚えとくといいわ」
紗愛はガラス製の扉に取り付けられた金属製の取っ手を握る。
「――コルシード」
そして短い呪文を呟くと、建物の中からガチャリと鍵が開くような音が聞こえてきた。
紗愛が取っ手を引くと、扉は最初から鍵など掛かっていなかったかのようにスムーズに開いた。
「開いた!?魔術で鍵を開けたんですか?」
「ちょっと違うわ。図書館のこの扉は実はアーティファクトで、夜の間は取っ手を握ってさっきの呪文を唱えると鍵が開くようになってるの。呪文さえ知ってれば誰でも入れるけど……あんまり言いふらしちゃダメよ?」
「別に言いふらす気は無いですけど……なんでそんな不用心な仕組みになってるんですか?」
「それはここがただの図書館じゃないからよ」
首を傾げる智慧理に、紗愛は館内を歩きながら説明を始める。
「この図書館は今から30年くらい前に、当時御伽原の市長だった王野武巳って人が主導して建てられたの」
「王野武巳……」
御伽原に越してきてまだ日が浅い智慧理には聞き覚えの無い名前だった。
「王野って市長はとにかく御伽原の都市開発に力を注いだ人でね。今の御伽原の主要な道路を敷設したり、後はあのセントラルタワーの建設を最初に計画したのも王野元市長なのよ」
「へぇ~」
「それで、王野元市長は都市開発の他にもう1つ、魔術書の収集にも力を注いだのよ。ああ、魔術書ってのはそのまま魔術絡みの内容の本のことね」
「何となく分かります。けどどうして市長が魔術書なんて集めるんですか?」
「ほら、知っての通り御伽原って邪神眷属が出やすい土地柄でしょ?だから市長として御伽原を発展させるには、邪神眷属に対抗するための魔術の知識が不可欠って考えだったみたいよ。これは王野元市長に限った話じゃなくて、歴代の市長でも同じような考えの人は多かったらしいわ」
「市長さんは邪神眷属のこと知ってるんですね?」
驚いた智慧理だったが、考えてみれば御伽原の長ともあろう立場の人間が邪神眷属の存在を認知していなかったら、それはそれで問題である。
「そして王野元市長が収集した魔術書のアーカイブとして作ったのがこの御伽原市立図書館って訳」
「なるほど……でも魔術書なんて図書館に置いといて大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないわね。魔術書なんて大抵読むだけで精神力擦り減るし。だから普通の利用者の目につくような場所には置いてないわ」
紗愛は階段を使って2階に上がり、1番奥の棚へと真っ直ぐにやって来た。
そこは郷土史のコーナーで、御伽原の歴史にまつわる書籍がずらりと並んでいた。その中の「御伽原の100年」という本の背表紙に紗愛が右手を伸ばす。
「閉館時間中にこの本の背表紙を押すとね……」
紗愛は智慧理に向かって悪戯っぽく微笑みながら、「御伽原の100年」をぐっと本棚の奥へと押し込んだ。
すると本棚の向こう側からガコンッと機械仕掛けの音が響き、本棚が中央からゆっくりと開き始めた。
「わっ!?な、何ですかこのギミック!?」
「カッコいいわよね~」
「カッコいいはカッコいいですけど……」
本棚が完全に開き切ると、そこには人1人が通れるほどの大きさの穴がぽっかりと開いていた。穴の内側には梯子が取り付けられている。
「何ですかこの穴!?」
智慧理は穴の中を覗き込む。穴の中は暗く、底がどうなっているのかは見通せない。
「電気点けるわよ~」
紗愛が本棚の裏にあるスイッチを操作すると、穴の中がパッと明るくなった。
しかし明るくなったところで底の床が見えるようになっただけで、穴の先に何があるのかは依然として分からない。
「さ、智慧理下りて」
「えっ、お、下りて大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ別に。怖いなら私が先に下りるけど」
「こっ、怖くなんて無いですよ!言いがかりは止めてください!」
智慧理にとって臆病者と思われるのは何よりも耐え難いことだった。智慧理は穴へと飛び込み、ほとんど滑り落ちるような勢いで梯子を下っていく。
建物3階分ほどの距離を下ったところで、智慧理の足は床に届いた。
「ここは……」
そこは御伽原学園の教室とほぼ同じ広さの空間だった。壁に隙間なく設えられた本棚には古びた本がぎっしりと詰め込まれており、部屋の中央には大きな文机が2つ向かい合わせで置かれている。
部屋の空気には仄かに黴臭さが漂っていた。その臭いに智慧理は古本屋を思い浮かべる。
「凄いでしょ。ここにある本、全部魔術書なのよ」
後から梯子を下りてきた紗愛が得意気に言う。
「ここが王野元市長が作った魔術書のアーカイブですか?」
「そうよ。ちゃんとした名前は『魔術書庫』って言うんだけど」
「そのままですね」
「そうね」
智慧理は改めてぐるりと本棚を見回す。
「魔術書ってこんなにいっぱいあるんですね……」
「まあ魔術の歴史も長いからね~」
紗愛が近くの本棚に並んでいる魔術書を見分し始める。
「確かこの辺りにウェンディゴのことが書いてある魔術書があったはずなのよね~」
「そうなんですね~」
智慧理も紗愛に倣って本棚を眺める。が、
「……読めない……」
まず智慧理が読めるような言語の背表紙が見当たらなかった。
日本語の背表紙は存在せず、英語の背表紙が半分弱。残りは何語なのかすら分からないような文字や、最早文字かどうかも怪しいような記号で書かれた背表紙ばかりだ。
「あ、あったあった」
紗愛は目的の魔術書を発見し、それを引っ張り出すと中央の文机に移動した。
「あの……紗愛先輩」
紗愛が本格的に魔術書を読み始める前にと、智慧理はおずおずと紗愛に声を掛ける。
「ん、どしたの?」
「その……私、今からパトロールに行ってきてもいいですか?ここにいても私にやれること無さそうなので……」
調べ物をしにきたというのに、そもそも本が読めないのではお話にならない。ここにいるくらいなら夜空を飛び回って邪神眷属を警戒している方が余程有意義だ。
「そうね、その方がいいわね」
智慧理の申し出に紗愛はあっさり頷いた。
「えっ、いいんですか!?」
「そもそも智慧理にはこの場所のことを教えておきたかっただけで、調べ物は最初から私1人でやるつもりだったもの」
「なぁんだ、そうだったんですね」
智慧理は内心調べ物を手伝うように言われたらどうしようかと思っていたので、紗愛の意図を聞いて胸を撫で下ろした。
「じゃあ私行ってきますね」
「何か分かったらインカムで連絡するわね」
「は~い」
智慧理は軽やかな足取りで魔術書庫を後にした。
「な~んか今日全然出ないなぁ……露華がもう全部仕留めちゃったのかな?」
2時間ほど街の上空を巡回していた智慧理だったが、今のところ邪神眷属は影も形も見当たらない。
普段ならこういう時は紗愛とインカム越しに話をしていれば退屈も紛れるのだが、調べ物中の紗愛に雑談を振る訳にもいかない。
集中力が切れた智慧理は、1度休憩を挟むことにした。ちょうど街の中心部を飛んでいたので、折角だからとセントラルタワーまで移動する。
「智慧理、今大丈夫?」
智慧理がセントラルタワーの頂上に腰を下ろしたところで、タイミングよく紗愛からの通信が飛んできた。
「あっ紗愛先輩!はい、大丈夫です」
「ならよかった。このところのウェンディゴの異常行動について、多分これが原因じゃないかなってのが見つかったの」
「もう分かったんですか!?」
紗愛の調査の迅速さに驚く智慧理。
「結論から先に言うと、ウェンディゴ達が住んでいる次元に、上位眷属が生まれたのかもしれないわ」
「上位眷属……?カガリみたいなやつですか?」
「一応はそういうことになるかしら」
先日智慧理が御伽原中央公園で激闘の末に打ち滅ぼした炎の司教ことカガリは、ザララジアの系譜に属する上位眷属だ。強力な炎を操り邪神眷属の軍勢を引き連れたカガリは、智慧理がこれまで戦った中で1番の強敵だった。
「ウェンディゴ達がこの地球とは別の次元に住んでるってことは知ってるわよね?」
「はい、何となく」
「そのウェンディゴ達の次元に関しては情報があんまり多くなくて、私も詳しいことは知らなかったんだけど……魔術書庫を漁ってみたら、ウェンディゴの次元を探索した物好きな魔術師の手記が見つかったわ」
「どの業界にも物好きな人っているものですね~」
「その手記によると、ウェンディゴ達の次元は常に夜みたいに暗くて、針葉樹林に似た黒い森がどこまでも広がってるらしいわ。そしてその黒い森には『ヴィズビオン』っていう邪神が君臨してたそうよ」
「ヴィズビオン……」
智慧理は当然その名前に馴染みは無く、そしてこれから先もその名前が馴染むことは決してないだろうという不思議な予感を抱いた。
「手記によるとヴィズビオンは『その体に無数の命を内包した、黒き樹海の化身の如き巨大な神』だそうよ。要は群体の邪神ってことかしらね」
「群体って言うと、サンゴとかクダクラゲとか?」
「多分ね。それでこのヴィズビオンっていう邪神を、黒い森に住むウェンディゴ達は熱心に崇めていたそうよ。小さな山と見間違えるくらい巨大な祭壇で、人間の女性を何人も生贄にして、ヴィズビオンを讃える為の凄惨な儀式を目撃したって書いてあるわ」
「そんなもの呑気に記録してるなって感じですけど……」
「まあ魔術師なんて倫理観が残ってる奴の方が少ないから」
魔術には精神力の摩耗を伴う。長く魔術を使い続けた魔術師は、精神の摩耗によって人間的な感覚が少しずつ欠落していくのだと紗愛は語った。
「でも紗愛先輩って倫理観ちゃんとしてますよね?」
「だって私人間じゃないし。そもそも精神の造りが違うのよ」
閑話休題。話題は魔術師の手記に戻る。
「手記によるとこの魔術師は黒い森に3年と3ヶ月滞在したらしいんだけど……」
「いすぎでしょ」
「ある時黒い森に、ヴィズビオンの体の一部が落ちて来たらしいの。落ちてきた肉体は最初は高さ5mくらいの楕円形の肉塊だったんだけど、時間が経つにつれて少しずつ『成長』していって、最終的にはヴィズビオンそっくりの怪物になったんですって」
「えっ?体の一部が怪物になるって……そんなことあるんですか?」
「ヴィズビオンが群体の神だからこそなのかしらね。本体から剥がれ落ちた体の一部も、1個の生命として成立するのかもしれないわ」
「へぇ~……生命の神秘ですね……」
サバンナ特集のテレビ番組のナレーションのような智慧理のコメントに、インカムの向こうで紗愛が小さく噴き出した。
「ヴィズビオンの体の一部から生まれた怪物のことを、魔術師は手記の中で『ヴィズビオンストレイ』って名付けてるわ。だから私もそれに倣ってストレイって呼ぶことにするわね」
「分かりました」
「魔術師はこのストレイをヴィズビオンの系譜の上位眷属だって推測してるわ。その理由としては、この魔術師は別の邪神の系譜の中位眷属を見たことがあったけど、その中位眷属と比べてもストレイの存在感は桁違いだったそうよ。それともう1つ、黒い森のウェンディゴ達は、このストレイのことをヴィズビオンと同じように崇めてたんですって」
「神様の一部から生まれたから神様と同じように信仰する、って感じなんですかね?」
「そうでしょうね。それでここからが大事なんだけど、ストレイが生まれてから、ウェンディゴ達の狩りの回数が明らかに多くなったそうよ。黒い森に攫われてくる人間の数も増えて、その人間達は全員ストレイに食べられたそうよ」
「それって……!」
智慧理は紗愛の言わんとすることを察した。
「じゃあ、この頃街に出るウェンディゴの数が増えてるのって……」
「ええ。この手記と同じように、黒い森でストレイが生まれたからかもしれないわ」
紗愛が最初に言った「ウェンディゴ達の次元で上位眷属が生まれた可能性がある」というのが、ようやくここで繋がった。
「ただこれはあくまでもこの手記の内容が真実だと仮定した上での私の推測。手記の内容と私の推測のどっちか、もしかしたら両方が間違ってる可能性も充分あるわ。だからまずはこの推測が合ってるのかを確認したいの」
「確認って……そんなのどうやるんですか?」
「そこで智慧理にお願いがあるんだけど……次にウェンディゴが出て来たら、1体は殺さないで生け捕りにしてくれない?」
「あ~!ウェンディゴを尋問するんですね!」
「尋問」という単語をこれほどにこやかに口にする女子高校生は、世界広しと言えども智慧理くらいのものだろう。
「そういうこと。お願いできる?」
「分かりました!次にウェンディゴが出たら……」
その時智慧理は西方に邪神眷属の気配を感知した。
「あっ!紗愛先輩邪神眷属出ました!」
「ホント?タイミングがいいわね」
「もしウェンディゴだったら1体捕まえて帰りますね!」
夏休みに山へ虫取りに行く小学生のようなテンションで、智慧理は気配を感じた方向へと飛び立った。
次回は3日に更新する予定です




