表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

散策

 輸送船から降りると、まず最初に新鮮な空気を吸い込む。

 この星に到達するまで、宇宙航路の開拓や宇宙生物とのトラブル(通行妨害や衝突等)でしばらく惑星の空気を吸うことができなかった。 宇宙船内の人工酸素も悪くはないが、大気から直接生成されるものほど心地よいものはない。 これこそ、まさに生命だ。

 

 この惑星は本来、テラフォーミング技術でしか形成できないとされる『ガイア』と呼ばれる種別のもので、数万数億の銀河でも珍しい完全自然形成型の惑星らしい。 その生成確率はまさに奇跡を越えたものだが、本当に珍しい環境だとか……私にはちょっと理解し難い。 ただ、大地を踏んだ感想としては、第二の故郷として住みやすそうで、マイクラやアークのようにリアルなクラフトをしても楽しめそうな感じがする。 まあ、だからと言って独立星系軍の進駐なんて考えているわけではないし、深く関わるつもりもない。 ただ単にこの星で休暇を過ごしたいし、観光や、ちょっとした古代や中世の職業体験的なものも楽しんでみたいと思っている


 輸送船から必要な武器道具防具類を降ろす。

 武器は輸送船内で粗方確認はしているが、残弾とチャンバーのチェック、状態まで確認。

 道具は水筒と軍用糧食(それぞれ3日分)、小道具類、お気に入りの財布、身分証明書、写真をバッグ内に入れる。

 防具類は刃物や対物ライフル、レーザーを防ぐプレートが入った防弾ベスト、6つのライフル弾倉と8つの小型弾倉、手りゅう弾や小道具の入るポケットのあるタクティカルリグを着。 後はフード付きのローブを着込んで完成。 ある程度のカモフラージュは出来たかもしれない。

 これにて旅の準備は大丈夫なはず……! 最寄りの町か村までは歩いて1時間程ではあるが、問題はないはずだ。

「司令、発信機を忘れています!」

「ああ、すまない!」

 発信機を忘れていた。 我が軍では特殊部隊向けに標準装備である『ネクサ』だ。 

 発信機は耳に掛けるもので、通信機器としても使え、今回は衛星軌道上にて24時間待機している航宙母艦との連絡用に使う。 万が一非常事態があれば特務歩兵が降下ポッドですぐ軌道外から駆け付けてくれる。 他にも観測でもナビや周辺の状況を細かくする事で干渉を最小限案で抑える。 惑星内の探索では必要不可欠なものであり、形は時代の違いがあるとはいえ、アンティーク品や自作のアクセサリーと言えば誤魔化せるはずだ。

 後、脳波や肉眼とも連動する為、バイザー類が無くともあらゆる情報処理が行える。 ナビの表示、目の前にいる人間の情報、簡単な感情値、食べ物の情報とか色々……後は軍務……休暇といえど遥か彼方の銀河では戦争が起こっている故、確認は必要だ。 ……軍務から解放されたいぞ!


 ひとまとめすると輸送船から離れる。

 最終チェックは行い、大丈夫そうなのを確認。 輸送船では部下の兵士が此方を伺っているが、通信で≪こちら司令 輸送船『ブレイブ』へ出発準備は完了 これより休暇を過ごす為 近くの村へ向かう 次の通信は母艦と行う 航宙母艦『ユークリッド』へ帰還せよ≫

≪輸送船『ブレイブ』よりムラサメ司令 ユークリッドへ帰還する 幸運を≫

 輸送船のハッチが閉まると、進路を90度変え急速離脱。 この後、洋上中央の何もない場所まで進み速度を稼いだ後、急上昇による大気圏離脱をする流れだ。 村まで距離があるとはいえ、目立つの避ける。 この星にない要素、特に空を飛ぶ乗り物なんて見られてしまっては、未来の歴史にどう影響するかは分からない。



 出発して数分後、念のため航宙母艦に連絡を入れ、通信に問題がないことを確認する。

 村までは1時間の道のりだが、道は形成されておらず、専ら航宙母艦からのナビゲートに頼るしかなかった。 この通信機のおかげで村までのルートが視覚的に見え、矢印が地面に表示され、目的地までの位置と距離も視覚的に確認できる。まるでオープンワールドゲームの機能がリアルに再現されているような感じだ。

 この惑星以外でも戦場や惑星探査でよく使っているが、その斬新さは健在だ。常にアップグレードされ、機能が追加されることもある。削除の指示は私が直接行うことになる。 ちなみに、今いるのは巨大な森林で、人の手がつかず茂みも多いため、視界は非常に悪い。木は他の惑星で見たことがあるものが多く、似たり寄ったりだ。オークの木、白樺の木、松の木が同じ場所に点在しているのは珍しいかもしれない。

 生物らしきものや人影はない。おそらく、このような森林には誰も入らないのかも。 視覚情報に表示されたメニューに手を当てると、複数のアプリが表示される。 その中から地図マークを選択する。降下地点には『最初の大地』と名付けたマークを入れており、そこから今の位置がどこかをピンで指し示す。ピンまでの距離を表示すると、まだ1kmちょっとしか進んでないや。


 森に入ってから見るものは木々や花といった植物が多く、生体らしき反応は今の所見当たらず。 いや、気配は感じているが、逃げているのか避けているのか目の前に現れようともしない。 様子を伺っているのか? ちょっとした予感を感じながら森を進むと巨木のある開けた地にたどり着く。

 ここなら視界もある程度あるし木を背にすれば視界外からの攻撃も防ぐ事が出来る。


 ネクサを指でタッチすると複数のアプリが目の前に表示される。

 ショートカットメニューからセンサーを選択。 スキャンボタンを押すと、周囲300m内の分析が始まり、周囲にある生体反応の殆どを拾ってくれる。 距離や地形によるが3秒から5秒程度でスキャンが終わる。

 確かに予感の通りかいくつかの生物が近くをうろついている。 私の様子を伺うというより、ただの生息地という感じだ。 生物的にはウサギ型種、キツネ型種、オオカミ型種の3種類がいる。 草食、雑食、肉食という集まりと思ったのが、オオカミ型種の捕食が対象が違っていた。

「見た目はオオカミだけど草食なのか、珍しい……」

 見た目は黒と白毛で覆われ見た目は「ニホンオオカミ」に近い。 明らかに肉食という感じではあるが、ネクサ越しだと地面に生えているキノコや雑草を食べている、それも美味しそうに。 一匹のウサギが近寄ると視線を合わせていたが、お互い気にしていない様子だった。

「なるほど……」

 生物の情報は航宙母艦を介し、本惑星のある拠点の生物データベースに送る。

 ヒト種に対しては気にしていない様子だ。


 村に向かって進み始める。


 もう1.5km歩いた所で小さな川を見つける。 自然に形成されたもので人為的な要素はない。 山から流れ出ているものの構造の為か、「最初の大地」からとは反対方向に延びているようだった。 マップを開いて辿っても確認出来ているが、このまま村に延びているようで頼りにする事とした。

 自然形成されているとはいえ500m歩くと森から抜け出し、巨大な草原が広がった。 PCの壁紙にしても良いではないかという程凄く美しい景色、圧倒されるぐらい真緑の大地だ。 小さな谷も点在する。 川の流れる先には建物らしき姿が見える。

「見えてきた……! 始まりの地、始まりの村!」

 走りたくもなったが、そこそこの装備をしている為、重みは感じなくもない。

 無いより疲れは溜まる為、心を落ち着かせながら進む……


 心配なのはすんなり入れるかどうか……過去別の惑星にある中世風の村で休もうとした時は門番に門前払いされてしまった。 今回はどうなるのか。 まあ、そうなったら拠点に戻るか、別の土地に引っ越すかのどちらかになるが。


 ……いや、そもそもどんな言葉をしゃべるのだ?


 バイザーには自動翻訳機能もあるが、既存の言葉のみ対応で、新規の言葉は発見からアップデートまで時間がかかる。 意味だったり、ことわざだったり、てんやわんやで。 言葉の違いについては後々として、せめてものジェスチャーなら大丈夫だろう。

 我ながら未計画すぎだな、ガッハッハ!!!



 村に近づくと衛兵らしき武装した人間が2人いる。 鎧は来ておらず、少しボロ着いた布を纏い……でもチェーンメイルはあるぽい。 武器は三つの先端からなる槍。 戦闘用というよりか見た目なのだろう。 門からは馬車や通行人が行き来しているが、特に職務質問もなく純粋に立っているだけぽい。 通行人の挨拶らしき声掛けにも返事をしているぽい。

 大丈夫だろうと、そのまま通ろうとすると呼び止められる。

「<止まれ!>」

 やっぱりというか、案の定というか呼び止められた。 そして全く未知なる言葉だった~! ジェスチャーだけは銀河共通なのか平手を見せてきた。

 衛兵に呼び止められると顔から足までじっくりと見つめられる。 職務質問になるのか!?

「<凄いな、そのアーマー何処で手に入れたんだ?>」

 一人の衛兵がローブの外、超軽量超合金で出来、膝全体を防御するニーパッドに注目する。 この時代なら膝まで覆う鎧ぐらい……!と思ったけど旅人がまずこのような重装備をする訳がない……そして惑星に降り立つまでに作り立てのと美麗かつ軍紋章付のを選んでいたのであった。 この星じゃSSRよりも極上のものだろう(売ったら幾らぐらいかな)。

 職務質問ぽいけど、衛兵の関心は装備にあるぽい。 言葉が通じないとなると下手に動く事は出来なかったが、ローブを捲ったりと観察し放題。 何か話し掛けているいるが、分からない。

「<さっきから話をしようとしているが言葉が通じないのか?>」

「<変わった装備をしているし、きっと、異国からの訪問者なのかも>」

「<異国って遥か彼方から、この田舎だぞ。 流石に……直接ってのは考えられるか>」

「<現に旅をするような装備だ。 近接武器、大量のポケット、手足腕には装甲板、きっとそうだ!>」

「<この村は来る者は誰でも歓迎だし、それに、何かしでかすような人間には見えない>」

「<通すか?>」

「<裁量は俺達にある、通そうぜ>」

「<わかった>」

 2人が何か会話をした後、通過を許してくれた。 言葉の壁については向こうも村にようこそ、どうぞというジェスチャ―を見せてくれ、ここで村への進入という一歩を踏み出した。




 村に入ると、複数の露店が立ち並び、通行人は食べ物、小道具、武器、石などあらゆる物を取引していた。近くには中規模の鍛冶屋と食品加工所があり、金属を打つ音と美味しそうな食べ物の匂いが漂ってきた(美味しそうだ)。

 村の人々も笑顔で生き生きとしており、この村に辿り着いたことが正解だと感じた。今日は見学のつもりで、石造りの道路を歩いていく。

 

 村の1周はゆっくり歩いて1時間程で終わった。 ここらへんだとそこそこ大きな村なのだろうか。

 歩いている時に挨拶らしき言葉を向けてきた村人が何十人ともおり、ジェスチャーで返した。 子供からもよく絡まれ、ローブを引っ張ったり、中に見える装備に興味津々だ。 軍用レーション内にあるクッキーを少し分けた(体質面分からないから抗アレルギーのを)。 住民との軽い交流の結果、反応は良好で挨拶の返し方も合っているぽい。 

 歩いている間にネクサを使って分析も兼ねていると、大体区画分けはされているようだった。

 入口は南側にあり。 南は門を中心に商業、そこに住む住民もいる。 西側は農業、巨大な農地と従事する住民が住んでいる様子だ。 ネクサのマップでは外にも畑が広がっており、柵には行き来する為の門もあった。 北は行政なのかギルドなのか大き目の建物と教会らしきものが建っていた。 内1つは戦士、魔女らしき恰好の人が点在し出入りしており、多分、ギルドに相当する建物がそこにあるのだろう。

東側は居住区になっていたが元の人口がそこまでなのか、文化なのか一軒家が多く、集合住宅らしき建物は無い。

 ここの村はこんな感じなのかと思いながらと考えていたが、気付けばお昼時になっていた(お腹がすいた~)。


 南の商業区に飲食店らしきものがいくつかあったのを思い出すとそこに向かう。 なるべくなら味見もしてみたいが、この世界のお金を持っていない。 さて、今日はレーションでも食べるか……リグポケットに入れたレーションに触りながら考えていた。


「<誰かー!>」

 叫び声が聞こえた。

 女性の声だ。 長閑な村で女性の大声、ただ事でない。 けど、言葉が分からないとなると駆けつけても何かできる訳ではなく、静観という形にしようと考えた。 道にいたから近くの民家らしき建物に移動しようとすると村人が雪崩れ込むように迫り、飲み込まれてしまった。


 抜ける事もできず流れに身を任せ、叫び声のある現場に着く。

 女性が地面に座り込んだまま鳴き声をあげており、村人

「<何があった!?>」

 長髭の老人が口を開く。

「<う、うちの子がいないの!>」

 女性が何かを老人に訴えているが、言葉が分からず。 由々しき事態というぐらいか……言語の近さでいえば、銀河上最も多くの言語を持つであろう地球言語を基準にすれば、ドイツ語のような英語のような……いやよく聞けば日本語にも近い??? 英語と日本語じゃ全然違うじゃん!と心の中で突っ込む)因みに日本語は独立星系軍を立ち上げた後、次に覚えた2番目の言語……というか故郷も何故か日本語と共通だったから2番目でもないか。 英語はある程度齧って後はネクサに依存しきりだ)。 まあこの場ではどうでも良い事と思いつつ、逃げる方法を探る。 状況からすれば堂々と立ち去るには気が引ける……が……

「<詳しい話を聞かせてくれ>」

「<さっきまで洗濯物を干していて、ご飯にするから呼んだらいなくなっていて!>」

「<洗濯物を干している間、何をしていた?>」

「<家の中で飼い犬と遊んでいのを見たのけど……>」

 家を指さす、辺りをキョロキョロと見渡す。 人の形を描くジェスチャーをしている事から恐らく人がいない、それも小さな人……恐らく女性の人は子供がいなくなったという事……可能性が高いのか。

「<気づいたら犬と一緒にいなくなって……>」

「<分かった……名前は?>」

「<レクレス……>」

「<有志を集めて探すぞ! 皆の者、手分けして探すぞ! その子供は恐らく犬と一緒にいるはずだ……まずは村の中、声を掛けてくれ! 名はレクレス、いいか、レクレスだ!>」

 レクレス……これが名前だろう。 老人の叫び声で村人達は慌てふためくように解散し、レクレスと呼ぶ声が響く。 確定だ。 レクレスは名前だ。

 解散した中私はというと内容について女性の子供がいなくなった、名前はレクレスという情報ぐらいで推測でもある。 老人がこっちに向かって来、てっきり私に探せとでも言うのかと思いきや、横を通り過ぎただけだった。 女性は憔悴しきっている。

 協力するか否かでいうと……今夜の夕食が食べれる事に期待して探してみる事にした。


 まずは家からだ。

 家の正面に立つ……地面は土と申し訳程度に草が映えている。 家は4部屋ぐらいと小さく、よくある中世のお家という所だろう。 地面が土であれば足跡ぐらいなら残っているはずだ。 ネクサに触ると起動させるとセンサーを選択。 スキャンを掛ける。


 ……子供らしき人影は幾つか見えるが、どれも女性の子供ではない。 他は探しているか、何かをする大人たちだけだ。 という事は子供はネクサのスキャン範囲外に行ってしまっている可能性が高い。 なら足跡だ。

 地面に目を向けると僅かながら足跡のようなものが家の外、外壁まで続いていたのが見える。 これもスキャンを再始動させると、足跡のようなものが明確に足跡だと認識。 フォーカスという探査機能を作動させ、足跡の追跡を始める(ここら辺は概ねAIによって分かる事が多い)。 分かり易いように足跡の上に矢印も表示。 先へと歩きはじめる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ