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魔術犯罪防止課のトラ男と面食い後輩ちゃんの推しごと  作者: 桐城シロウ
二章 先輩と距離を縮めたくないのに、どうしたって縮まっていくんですけど!
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29.幸せそうに笑ってる自分の顔なんて、見たくなかった

 






 先輩にすがって「もう一度! やり直してください、予言!!」って言ってみたけど、無視された。ひ、ひどい……。先輩からすれば、どうでもいいことなのかもしれないけどさ! むっつりと黙り込み、服から手を放したら、急に話しかけてきた。


「そういや見てなかったな、土産物屋。行くか」

「……」

「悪かったって。何か買ってやるから」

「そういう問題じゃありません~……。訂正してください! 先輩からすればどうでもいいことかもしれないけど、私は真剣なのに。悩んでるのに!」

「んー」

「傷付きました、冗談でも傷付きました!!」

「悪かったって! ほら、尻尾の先でも掴んでろ。先だぞ? 真ん中は掴むなよ?」

「はーい……」


 しぶしぶ、銀色の短い毛に覆われた尻尾の先を掴む。先輩、尻尾を握らせたら黙ると思ってない? 黙るけどさ……。むくれながら、尻尾の先を指でつつき回す。嫌そうに尻尾をくねらせていたけど、何も言わなかった。陽が降り注ぐ、美術館のショップに足を踏み入れたら、名画のポストカードや便箋、スカーフとワンピース、花柄の日傘やマグカップが所狭しと並んでいて、一気に憂鬱な気分が吹っ飛んだ。ア、アンティークの雑貨まで置いてある!!


「みっ、見てください、先輩! ほら、これっ、手鏡! あっ、ブローチもある。指輪まで! どれにしようかな~、可愛い」


 黒いビロード地の布に、大きな赤い石がついた指輪や小粒の青い石とパールがついた指輪、花の形をした石の指輪や、白いぽわふわの花がついた指輪が並んでる。どれもこれも可愛い。一つぐらい欲しい……!! 背後に立った先輩が笑い出す。あっ、そうだ。私、今、拗ねてる最中だったのに。あっという間にご機嫌直しちゃったよ。


 先輩が「分かった。じゃあ、腹筋も触らせてやるから!」って言ってくれたかもしれないのに。チャンス逃がしちゃった。気まずくなって、黙り込んでいれば、先輩が手を伸ばした。淡いピンク色の花弁が重なった指輪を手に取る。多分、花は石で出来ている。陽に照らされ、まろやかな光沢を放っていた。


「似合いそうだな、これ。買ってやろうか?」

「えっ」

「おわびに。悪かった、からかって」

「……先輩って、ちゃんと謝ってくれますよね。で、でも、いつも許すしかないと言うか」

「一生許さないって言われたら、さすがにへこむな。まあ、それでもいいけど。俺が悪いんだし」


 どこか愉快そうに笑いながら、私の指に指輪を通した。硬い材質で出来ているのに、びっくりするほど繊細で可愛い。どんな服にも合いそう。柔らかなピンク色のお花。クリアなピンク色じゃなくて、少しくすんでいて、それがアンティークっぽくて可愛い。まろやかなミルク色を帯びている。陽にかざせば、一段と輝きが増して美しくなった。


 ほっ、欲しい。でも、これ、良いお値段……。値札に書かれてるお値段を見て、冷静になった。ときめきが霧散する。魅力が半減しちゃってるよ、お値段のせいで! 何これ、買う人なんているの? 飾る用の商品? ジュエリーショップじゃないんだからさ……。


 すっと真顔になって、指から外そうとしたら、先輩に止められた。手を握られ、頬が熱くなる。うわぁ、真剣な顔。本気で財布からお金を出そうとしてる人の顔だ!


「いいだろ、別に。これぐらい」

「こっ、こ、れぐらい……!?」

「いつも暴走して迷惑かけてるしな。さっきもからかったし」

「えっ、ええ、でも、先輩、最近は暴走してませんよ? ちゃんとコントロール出来て、」

「その代わり、許してくれるか? どうもフィオナが黙っていると落ち着かない」

「は、はい」


 手を握りながら、至近距離でささやくのは反則。顔が良い。目の前に広がってるイケメンの顔、すごい……。硬直してる私を見て、先輩が満足そうに微笑んだ。私の手から指輪を抜き取って、颯爽とレジへ向かう。あ、ああっ、買う人いた! レジのお姉さんもびっくりするんじゃないかな。先輩が握っていた手を握り締めながら、考える。心臓がばくばくと鳴っていて、うるさい。


(……いいのかな、買って貰って。というか反則!! わ、私の言葉をさえぎって、あーっ、もう!)


 気をまぎらわせるために辺りを見回してみたら、シャーロット妃のぬいぐるみが売ってた。か、可愛い。戸棚にぎっちりと、ふわふわの茶色いウサギちゃんが並んでる。つぶらなグリーンの瞳に、垂れた両耳。


 カフェカーテンに使われていそうな、素朴な白レースが縫いつけられた、グリーン系の花柄ドレスを着てる。もうこれは、買うしかないでしょ……。ずぼっと引き抜いて、抱っこしてみたら、それぞれ顔つきが違うことに気付いた。


「えーっ、どうしよう!? どの子も可愛い!」

「次はそれか?」

「ま、待ってください、自分で買います!! この子は毎日抱っこして、一緒にねんねするんです! なでなでして愛でる予定なので、私が自分でお金出して買った方が愛おしさもばいぞ、」

「……たかだか、化繊のぬいぐるみだろ? 何がいいのかちっとも分からない」

「かせん……?」

「おう」


 先輩がものすごく真面目な顔で頷き、両腕を組んだ。ふわふわのウサギちゃんを抱き締めたまま、硬直してしまった。今、なんて? 化繊? そ、そりゃそうだけど。本物のウサギの毛はさすがに使われてないんじゃ……。心配になって確かめてみたら、ウサギの毛は混じってなかった。よ、良かった~! でも、毛染め蜘蛛の糸って書いてある。見なかったことにしよう。


「せ、先輩、ぬいぐるみなので材料はどうでもい、」

「本物の毛と比べたら、雲泥の差だ。ほら、触ってみろ」

「えーっ!? でも、尻尾って家族と恋人しか触っちゃいけないものですよね? あんまり、触るのはちょっと」

「……」

「もしかして、ぬいぐるみに嫉妬してるんですか?」

「違う! ただ、毎日撫でる価値なんて無いって言いたかっただけだ」

「へ、へえ~」


 分からない。獣人ってぬいぐるみの毛並み(?)にも張り合うんだ。知らなかった。ふわふわって禁句なの? 不思議に思って、まじまじとぬいぐるみを見下ろしていたら、レジのお姉さんに呼ばれた。ラッピングして貰ってたんだ。先輩が舌打ちして、レジへ向かう。ええええ、本気で不機嫌になってる。可愛い、きゅんとした。この子を買うことにして、ぎゅっと抱き締める。


(今日、すごく楽しい!! 途中で色々あったけど)


 シャーロット妃のぬいぐるみを買ったら、ますます不機嫌になって、眉間にシワを寄せていた。手渡されたショッピングバッグの中には、艶やかな赤色リボンがかけられた、紺色の小箱が入ってる。か、可愛い。紺色と赤の組み合わせ、おしゃれで可愛い。


 まじまじとショッピングバッグの中を覗き込んでいたら、気を引きたいのか、尻尾がぱったん、ぱったんと腰を叩いてくる。本人、無自覚なんだろうな~……。不機嫌そうな顔で歩いていた。


「先輩! まあまあ、ご機嫌直してくださいよ。尻尾当たってますよ?」

「あっ、悪い。……そんなに当たってるか?」

「はい。腰にぱったんぱったんと当たってます」

「……」


 落ち込んだ。指摘しない方が良かったかな~。不機嫌な証拠だと思ってたんだけど、違った? 先輩が焦りつつ、でも、平然を装い、尻尾を反対側へ移動させた。先輩、可愛い。焦っちゃってる。最初の頃は寡黙で、何を考えているのか分からない男性だと思ってたんだけど、違った。よく見てると、表情がころころ変わる。焦った時は斜め上を見るんだよね、先輩って。どうでもいい時は、まっすぐ前を見て歩いてる。


「悪かった。今後、気をつけるから」

「まあ、いいんですけどね! 別に! 尻尾がふわふわしてて気持ち良いです」

「マナー違反だからなぁ……。尻尾をわざと当ててくる獣人がいたら教えてくれ。尻尾を引っこ抜くから」

「はい……」


 それ言われたら報告できないんですけど。先輩のことだから、本気で引っこ抜きそう。色々喋りながら、店へ向かう。陽射しが心地良くて、暖かい。辺りはおしゃれなビジネス街で、目玉が飛び出るほど高そうなジュエリーや服、コース料理を提供してるレストランが時々現れる。でも、街路樹が茂っていて心地良い。風が柔らかかった。先輩が一歩前に出て、分厚いガラス扉を開けてくれる。


「どうぞ。気に入るといいが」

「ははっ、先輩と一緒ならどんな店でも楽しいですよ! 先輩の顔面最高~」

「また変なこと言いやがって」


 呆れながらも笑ってくれた。グレーのタイル床と白い壁の店内には、星型のランプがいたるところに吊り下げられていて、中央には大きな木が生えていた。すっごい! ソファー席とソファー席の間に、なよっとした木が生えている。背もたれの上には苔と野花が生えていて、キラキラと輝いていた。テーブルはおしゃれな切り株って感じ。インパクトがある見た目なんだけど、食べやすそう。


 奥の個室に案内された。どのテーブルにも芝生っぽい絨毯が敷いてあったから、期待しつつ入ってみれば、花が咲き誇っていた。芝生絨毯の上に黄色やピンク、青色の花が咲き誇っていて、風もないのに揺れ動いてる。さながら花畑の中に、切り株で出来たテーブルとソファーが置いてあるみたい。


「わあ、すっごい! 可愛い!!」

「靴を脱いで入ってくださいね~」


 女性の店員さんがにこにこ笑いながら、教えてくれた。わっ、わああ……。首が痛くなっちゃうほど、見上げてしまう。天井から、あえやかなピンクとオレンジの花が垂れ下がっていた。花房が連なってる。綺麗、すごい。中にランプでも入っているのか、柔らかな光がこぼれ落ちてくる。感動して見上げていたら、先輩が笑って、提げていたバッグを取る。


「ほら、フィオナ。座れ、疲れただろ?」

「はいっ! こ、ここ、先輩、ここは……」

「ハンバーグがうまい店だ」

「確かにそう言ってましたけど! こ、こんなに素敵な店だと思ってませんでした。わあ、ふわふわ、ふわっふわ……!!」


 パンスト履いてるから脱げないけど、素足になりたーい。靴下にするんだった、しまった。私がはしゃいで「ふわふわ! ふわふわ!」って言いながら、野花が咲いている絨毯の上を歩き回っていたら、先輩がメニューを開きつつ、笑った。


 出されたお水には、小さな黄色い花と白い花が浮かんでる。可愛い、どれもこれも可愛い。コースターも木で可愛い……。ソファーは白い布張りだった。星型やハート型のクッションが並んでる。青空のような色合いの壁には、額縁入りの風景写真が何枚も飾られていた。


「すみません、落ち着きました……」

「可愛かったからいいけど」

「あーっ、先輩の写真撮らなきゃ! このあとすぐ解散ですよね!? 撮らなきゃ!」

「いや、別にすぐ解散ってわけじゃ、」

「今日の先輩の服装がめちゃくちゃ好みなんですよ! アートな感じが出ててめっちゃかっこいいです! 普段とは違って、あ、普段も色気出てるんですけどね? ムンムンなんですけど、色気が。でも、普段と比べて今日かなり色気が出てるから撮りたくて」

「落ち着け……。かなりはしゃいでるな」

「先輩の色気をレンズが正確に映し出してくれるとは限らないんですけど、色気は生ものですから!! 写真に映らなくても撮ることに意味が、あっ、でも、先輩の色気は毛穴からだだ漏れですから、絶対に絶対に映ると思うんですよね! はーい、撮りますよー」

「どこで息吸ってるんだ?」


 先輩が呆れつつも、「やれやれ、仕方ないな」って言いたげな苦笑を浮かべる。かっこいい……!! 真っ白なTシャツがよくお似合いで。あー、なんでこんなにかっこいいんだろう。美術館の中で一番美しいのは先輩。


 満点の星空も、海も、ロマンチックな街並みも、花畑も、透き通った湖も、豪華絢爛な王城や大聖堂も、先輩には到底敵わない。私の目には、どんなものよりも綺麗に映る。カメラのシャッターを何回も切りながら、恍惚としちゃった。だからついつい、あんなことを言っちゃったのかもしれない。


「は~……本当に綺麗、かっこいい! 私、ここまで自分好みの顔に出会ったのは初めてで」

「その言い方やめろ、なんか嫌だ」

「もーっ、好きすぎて! 毎日一生、先輩の顔をずっと見ていたい! 絶対見飽きないだろうし、寝顔も、歯磨きしてる顔も見たいなぁ」


 私、なんて言った? 今。告白をすっ飛ばして、プロポーズしちゃったかもしれない。先輩の顔を見てみたら、青灰色の瞳を見開き、硬直していた。ショ、ショック受けてる! だよね!? ヒ、ヒヨコちゃんにしか過ぎないのに、私は。調子乗った……。恥ずかしさと後悔で、首の後ろがひりついた。


「ご、ご、ごめんなさい、今のは違うんです。告白じゃなくて、プロポーズじゃなくて!!」

「分かってる。たとえ話だろ?」

「そ、そうなんです、ごめんなさい。あの、気まずくなりたくないからはっきり言うんですけど、本当に私、先輩のことが好きじゃないんです……。ここまで自分好みの人に出会ったのは初めてだから、好きとか色々通り越して、崇拝? 尊敬? しちゃってると言うか」

「分かってるって」


 少し不機嫌そうに言った。す、す、好かれてるかもしれないって、不安に思ったとか? 違うのに。どう言えば伝わるんだろう……。ぎゅっと膝の上で両手を握り締めていたら、気遣わしげな表情を浮かべ、話しかけてきた。


「フィオナ? 大丈夫か?」

「だ、大丈夫です、すみません……。これで気まずくなりたくなくて。私、本当に好きじゃないんです。騒いでるから信用無いかもしれないけど、でも、好きだったら、約束忘れかけちゃわないし」

「おい、忘れかけてたのかよ。でも、早く来たよな?」

「あれは時間を勘違いしてただけです。彼氏とのデートだったら時間を勘違いしないし、もっともっと気合入れて、おしゃれしてくるし」


 あ、話が逸れそうになる。ちゃんと伝えておかなきゃ、大丈夫だってそう。先輩が眉をひそめて、こっちを見てきた。わーっ、かっこいい! 見続けたい。だから先輩、勘違いしないでください。私は先輩のこと好きじゃないから。警戒されたくない、絶対に。


「大丈夫ですよ! 先輩よりも仕事の方が大事なので。夢だった仕事に就けたので、バディである先輩とぎくしゃくしたくないんですよね……。ほら、付き合ったら別れるじゃないですか」

「何だよ、それ。意味不明だ。別れないカップルだっているだろうが」

「でも、先輩と付き合ったら絶対に別れちゃうだろうし……。あーっ、先輩が私をそういう目で見てないのは知ってます! 知ってますからね!? でも、勘違いされたらあれだから、」

「もういい」

「はい……」


 興味無さそうに呟いて、メニュー表を熱心に見始めた。あああああっ、私のバカ、私のバカ!! そりゃ確かに先輩の美貌を毎日眺めていたいけど、本人の前で言うんじゃなかった、ステラちゃんにでも言うんだった……。


 恥ずかしくて死んでしまいたい。どうしよう、明日気まずくなるの決定じゃん。私が両手で顔を覆っていると、先輩が急に「貸せ」って言ってきた。顔を上げれば、真剣な表情の先輩と目が合う。その手には、私のカメラが握り締められていた。


「えっ? 貸せって」

「写真。俺もフィオナを撮る」

「えっ……!? メ、メイク、髪!!」

「いいから、ほら。花を見上げろ。そのあとこっちを見て笑え」

「は、はい、分かりました」


 励まそうとしてくれてるのかな? ええい、もういいや!! 先輩のこと好きじゃないし、変な写真になったっていいや。幻想的な美しさの花を見たあと、先輩に笑いかける。にっと満足そうに笑って、シャッターを切った。今の微笑み、めっちゃくちゃかっこよかった。どうして先輩が持ってるの? カメラ! わっ、私が、私が先輩を撮りたかった……!! ぷるぷる打ち震えていると、突き返してきた。


「うわ~……。変な映りじゃありませんでした? 見るの勇気いるぅ」

「変じゃない、綺麗だ」

「な、ならいいんですけど。うわぁっ!?」

「どうした? 上手く撮れたと思ってたんだが」


 画面に映し出されたのは、嬉しそうな顔をした私。頬が赤くなってる。すっごく嬉しそう……。デート中の写真じゃん、こんなの。びっくりするぐらい、嬉しそうに笑ってる。自分の顔なのに、自分の顔に見えなかった。歴代彼氏との写真(焼却済み)でも、こんなに、嬉しそうには……。背筋に冷や汗が伝った。照れ臭そうに笑ってる私は幸せそうで、目が潤んでいて、胸の奥が詰まった。


「……私、いつもこんな顔してます? 嘘でしょ」

「してる。大体そんな顔だろ」

「だ、大体? 大体って、職場でも!?」

「うん。頼もうぜ、早く。腹減った」

「あ、はい……」


 幸せそう。唯一持っているお父さんとの写真でも、こんなには。どうして幸せそうに笑ってるの、私。悔しかった。意味が分からない。自分でも上手く言葉に出来ないけど、でも。


「どうした!? 泣くほど嫌だったか?」

「っち、ちが、違うんです、これは……。早く、決めましょう。大丈夫です、おさまるのですぐに!」


 どうして泣けてくるんだろう。先輩のことが好きじゃないはずなのに、幸せそうに笑ってる自分を見て、ダメージを食らった。先輩が心配そうな顔で見てくる。だって、今までで一番、幸せそうに笑ってた。先輩と一緒にいる時の自分が良い顔をしてるって、認めたくない。まるで別人。私、そんなに幸せなの? 先輩と一緒にいて? また涙が滲み出てきた、頭が痛い。先輩が立ち上がって、こっちへ来て、隣に座った。


「悪い、見せてみろ。背後に幽霊でも映ってたか?」

「幽霊……。ふふふっ」

「無いな、何も。どうした? 言ってくれるか?」

「……先輩、お腹が空きました」

「またそうやって、すぐにはぐらかす! 無理矢理撮ったから、嫌だったのか? 言ってくれ、傷付けたくないから知っておきたい。頼む」


 先輩が真剣な表情で頼んでくる。せ、説明しづらい……!! 自分でもよく分かってないのに。お腹がぐーっと、小さく鳴った。顔が赤くなって、先輩が呆気に取られた表情になる。


「す、すみません、嫌じゃなかったんです。だけど、でも、幸せそうにしてる自分を見たら泣けてきちゃって。よく分からないんです、ごめんなさい」

「……ならいいけど。ここはスルーすべきなんだろうな、聞くべきじゃない」

「……」


 分かってらっしゃる~!! スルーして貰ったらありがたい。メニューには美味しそうな料理の写真が沢山載ってたけど、楽しく選ぶ気にはなれなかった。でも、何となく選んだ、定番の目玉焼きハンバーグの中にチーズが入ってて、すごく美味しかった。また行きたいな、今度は一人で。










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