19.海沿いのドライブと意味深な発言
輝く青い海をバックに、渋くてかっこいいオープンカーを運転する先輩が素敵すぎて、もうどうしたらいいのかよく分からないんですけど……。天然のレフ板? 海が青いのって、先輩の魅力を引き立てるためじゃない? 海はそのために存在してるんじゃないかな……。私がぼーっと見惚れつつ、カシャカシャカシャ連続で写真を撮っていれば、先輩が落ち着かない様子で話しかけてきた。
「おい、大丈夫か? そんなに撮ってどうするんだ?」
「しばらくの間、壁一面に張っておきます……」
「怖! ストーカーかよ。まあ、別にいいけど」
「うっ、すみません。否定出来ません! 最初の頃はストーカー予備軍でしたよね? 私。毎朝毎朝、家を出る前に偶然先輩に会えますようにって祈りを捧げてきた甲斐があって、偶然会う回数がどんどん増えていって、」
「怖いな……。一時期、ぞっとするほど会ってたよなぁ、そういえば」
「っはは! 先輩、そんな人と一緒に出かけてるんですか? 物好きですよね~」
「おい」
先輩がハンドルを握ったまま、深い溜め息を吐いた。そ、そこまで落ち込まなくても! 冗談なのに。それともあれ? ひょっとして、私と出かけたの後悔してるんじゃ……。急に不安になってきた。うん、控えめ、変態発言は控えめにしようっと。恋愛してる時限定なのに、急に不安になっちゃうのは。メンタルを安定させるために、先輩の美しく整った横顔をガン見する。
どうしてこんなに整ってるんだろう。人のお腹の中で、ここまで美しくワイルドな男性って生み出せる? すごい、お母様に感謝するしかない。鼻の付け根から鼻先、顎にかけてのラインが理想的すぎて、ずっと見ていられる。先輩の横顔を何時間見続けられるかっていう、耐久テストに挑戦出来ちゃう。八時間? ううん、十二時間ぐらいはずっと見れそうなんだよね。
途中でトイレ休憩を挟んで、お酒とおつまみを食べながら永遠にずっと、先輩の美しすぎる横顔を見ていたい。先輩が途中で音をあげちゃいそうだけど。風になびくふわふわのトラ耳を眺めている時、ふと、サングラスに目がいった。待って、ツルが浮いてる? 固定されてる……? あ、短い銀髪と黒いサングラスの組み合わせが最高。側頭部を刈り上げてるのさいっこう!!
「先輩」
「んー? どうした? さすがに見飽きてきたか」
「いえ、十二時間ぐらいは余裕で見続けられるんですけど? 私を舐めちゃいけませんよ、絶対に先輩が音をあげます。そうじゃなくて、サングラスのツル、一体どうなってるんですか?」
「ああ、獣人用のサングラスだから、これ」
「獣人用のサングラス!? へー、そんなの売ってるんですね」
「おう。かけたら、耳の上辺り……人間で言うと、耳の上辺りでぴたっと固定される」
「面白い! あとでかけさせてください、楽しそう~!」
「いいぞ。飲み物買いに行くから、その時にな」
「えっ、飲み物? 一応ボトル持ってきましたけど。ほら」
お気に入りの苺柄ボトルだから、バックから出して見せびらかせば、ふっと鼻で笑った。潮風に吹かれる先輩がかっこよすぎて、どうしたらいいのかよく分かんないんだけど。大丈夫かな? ちょっと浜辺に行って、波とたわむれる予定なんだけど、正気が保てるかどうか……。私が一人険しい顔をしていると、鼻歌でも歌いそうな雰囲気で告げてきた。
「うん、分かった分かった。この先にフィオナが好きそうなジューススタンドがあるから、そこに行こうぜ。買ってやる」
「えっ? ありがとうございます。意外でした。先輩、ジュース好きなんですか?」
「……それなりに?」
「やっぱりお酒弱い人って、みんなジュース好きなんですかね? 私の男友達にお酒弱い人がいるんですけど、甘いもの普段そんなに食べないのに、ジュースだけはぐびぐび飲んでました。その人はコップ半分で泥酔しちゃうんですけど、先輩はどうですか? そんなに弱いんですか? お酒」
「まあ、うん。それなりに」
歯切れが悪い。急激にトーンダウンした。不思議。ジュース飲めるからご機嫌になってたんじゃないの? 先輩って妙に謎なところがあるよね。言ったら怒られそうだから、言わないけど! ひょっとして、お酒飲めないことをネタにされたくなかったとか? バカにする気なんてぜんぜん一切無いんだけど。昔、からかわれたことがあって、それを思い出しちゃったのかなぁ……。しょうがないから、話を変えてみることにした。
「そのジューススタンドって、メニュー数どれくらいあります? 多い方ですか?」
「そうだな、女子が群がってるタイプの店だ」
「その一言でよく分かりました!! 楽しみです、ふふっ」
「……アンドリューと月夜市に行ったんだろ? どうだった?」
「えっ」
ここで話を蒸し返すの? さっき微妙な空気になったから、出来れば話したくないんだけど……。焦って黙り込んでいれば、なんてことない顔をして聞いてきた。
「あそこ、色々珍しいものがあっただろ? どうだった?」
「は、はい、楽しかったです。熱気もすごいし、みんな、わくわくしてたし……」
「月夜市のことになると歯切れが悪いんだなぁ。イケメンがいたんだって?」
「あっ、そうなんですよ! めっちゃくちゃイケメンがいたんですよ!! センスが悪い服を売っていたイケメンがいたんですけど、あっ、その人は叔父さん? だったかな。叔父さんに店の留守番を任されて、代わりに売ってただけなんですよ。飲みに行きませんか的なこと言われたんですけど、アンドリュー君に止められちゃって」
「へー。あそこにいるやつは全員ろくでもないやつだから、やめておいた方がいいぞ?」
「確かにチャラかったです。しょっちゅう、学生の時にヤンキーしていても不思議じゃない人に遭遇しました」
穏やかな潮風が心地良い。良かったー! さっきとは違って、先輩のご機嫌が斜めにならなーい。すぐ変なところで機嫌損ねるから、心配してたんだけど、杞憂だった。良かった、良かった。あれこれ話している最中、ふと、景色に目を向ける。
先輩の横顔が美しすぎて、ろくに海なんて見てなかったんだけど、綺麗だなぁ。道路脇に生い茂った森の向こうに、キラキラと輝く青い海が広がっていた。カモメと白い雲。遠くの方にはドラゴンが飛んでいる。気持ち良さそうに翼を広げ、尻尾を揺らしていた。鱗が青い。どういう種族なんだろう、あれ。
「わーっ、久々に海を見ました! 綺麗~、テンション上がるっ!」
「嘘だろ? さっきから見てるのに、何を今さら」
「いえ、見てませんでした。しょうがないですよ。だって、先輩の横顔が美しすぎるから……」
「まさかとは思うが、海を見てなかったのか? 人一倍騒ぎそうなのに」
「あれ、言い方に棘がありません!? それ! じゃあ、今から騒ぎますよ。騒げばいいんでしょう!?」
「騒げって言ったわけじゃないんだけどなぁ。可愛い」
さらっと言った、さらっと。おかしそうに笑いながら、さらっと。一気にぎゅーんって、頬の熱と心拍数が上がる。先輩、心臓に悪いんですけど! 言えたらいいんだけどなぁ。恥ずかしいから可愛いって、突然褒めないでくださいよって。私だけが一方的に褒めていたいのにって。黙りこくっていたら、車のスピードを落とした。
「もうそろそろ着くぞ。フィオナ?」
「あっ、はい! 準備します! と言っても、何もないか……」
「この車、走行中は荷物置けないんだよなぁ。邪魔だったら、あとで座席下に収納してくれ。言うの忘れてた」
「座席下に……? へー、便利ですね。どうやって開けるんですか?」
「立ち上がって、座席下のスイッチを押せば開くから。待ってろ、あとでする。取り出せないけど、いいな?」
「じゃあ、バッグだけあとでしまいます」
可愛い発言が無かったかのような態度で接してくる……。特に深い意味なんて無いんだろうなぁ。可愛いの一言で心拍数が上がってしまうの、何とかしたい。このまま好きになっても、振られるのは目に見えている。というかさ!! ここまで自分好みのイケメンと付き合って揉めて、一生音信不通になるのだけは避けたい!
先輩を思う存分、心ゆくまで愛でるには好きにならず、可愛い後輩の地位をキープしつつ、ゆくゆくはフェードアウトする方法が一番。半年に一回ぐらい、ステラちゃんやアンドリュー君と一緒に集まって、ご飯食べたり、飲みに行けたらなぁ。結婚後はそういう生活が理想。相変わらずかっこいいですねって言って、ひそかに写真撮りたい。私のイケメン美女好きを理解してくれる、優しくて真面目で穏やかな男性と結婚したいな~。どうしても嫌って言うのなら、別に先輩の写真は撮らなくても……。
あれこれ妄想していたら、車が止まった。い、いつの間にかサービスエリアに着いてる! 先輩が鍵を引き抜いて、シートベルトを外したんだけど、一連の動作が綺麗すぎて、ついつい見惚れちゃった。先輩の良いところは品があるところ。お坊ちゃま育ちだから? そういえば音を立ててドアを閉めたりしないし、カトラリーも鳴ったりしない。ぼんやり見惚れていると、ふいに目が合って、困ったように笑う。
「どうした? フィオナ。降りるぞ」
「はっ、はい! ちょっとだけ待ってください」
こ、このシートベルト外しにくい! 慌てちゃってるから? 何とか外そうと苦戦していれば、先輩がドアを開けて、物言いたげな表情になる。腕を伸ばしてきた。ちかっ! ふわりと、爽やかなコロンの香りが漂ってくる。乾いた潮風によく合う、塩と石鹸のような香りなんだけど、ウイスキーぽい香りも混じってて全力で顔を背けたくなった。
「悪いな。これちょっと硬いんだ。ぐっと押し込まないと外れない。ほら」
「あ、ありがとうございます……」
近いー! これ以上ときめきたくないんですけど!! 待って、落ち着こう、私。今日の目標は騒がないこと。無事にハンドルを握ってる先輩を見るという厳しい局面を乗り越えてきたわけだし、大丈夫大丈夫。もう耐性が出来てるから。慣れなくちゃ、そろそろ。降りる時、手を貸してくれた。
汗ばんだ熱い手を握り締めた瞬間、ぐわっと全身の血行が良くなる。ふ、冬でも、先輩の手を握ったら熱くなりそう。冷え性対策に良い、冷え性対策にイケメン……。何とかお礼が言えたけど、もう少しで「そういうロマンチックなことはやめて貰えませんかね!?」って叫びそうになった。
私をお姫様扱いしても良いことなんて何も無いのに、そういうことしてくるから……。サービスエリアは海の近くだからか、おしゃれだった。最近改装したばかりですという雰囲気を漂わせてる。木がふんだんに使われた外観で、黒い看板がアクセントになっていた。車が来ていないか、見渡しながら歩いていると、先輩がおもむろに呟く。
「あ、そうだ。フィオナ? ほい」
「わっ!? サ、サングラス……。ありがとうございます」
かけられた、サングラス。それも、若干無邪気に笑いながら。先輩の笑顔を間近で見るという難易度が高いクエストをクリア。うん、大丈夫大丈夫。叫ばなーい、叫ばなーい。我ながら、チョロすぎてびっくりする。些細なことでときめきすぎじゃない? 私。サングラスが眩しい陽射しを遮ってくれてるおかげか、景色がはっきりと見えた。グレーがかった視界になる。
「へー! いいですねえ、これ。何もつけてないみたい。でも、軽すぎてちょっと落ち着かないかも?」
「人間には不向きかもな」
「ですね、耳の付け根に負担かけたくない人にはちょうどいいかもしれませんが。はい、ありがとうございま……」
「ん」
私が自分で外して返そうとしたのに、先輩がびっくりするほど優しく、真剣な顔で外して回収していった。ちょっと待って、落ち着こう。私に優しくするの禁止って言いたい。むかついたら、そこらへんのゴミ箱を蹴り飛ばしてそうな見た目なのに、やたらと仕草? 行動? が優しいから期待しちゃうじゃん……。
待って待って、やめよう。今日、やたらと落ち着かないのはオープンカーのせい? 疲れてきちゃった。これからパフェ食べに行って、海も行くのに? 案内して貰ったジューススタンドは小綺麗で、人魚と貝殻の絵が描かれていた。ソフトクリーム入りのジュースもあったけど、やめる。これから私は! パフェを食べに行くの!!
でも、しゅわしゅわのミックスベリーソーダの上にソフトクリームが絞られていて、ベリーソースがかかってるの、本当に美味しそう……。せめてベリーソーダを頼もう。先輩はジンジャーエールにしていた。あっ、飲みそう。ものすごく飲みそう!! 地味にテンションが上がった。優しそうな笑顔のお姉さんから二つ、先輩がカップを受け取る。綺麗な海柄の透明なカップだった。しゅわしゅわと陽射しに照らされた、赤いベリージュースが音を立てている。
「先輩って、ジンジャーエールを飲みそうな顔してますよね!」
「っぶ、おい、飲もうとしたところでいきなり言うなよ……。噴き出すところだった」
「えー? だって、予想通りで。たまには他のものが飲みたくならないんですか?」
「俺がジンジャーエールを常に飲んでるのは確定なのか?」
「はい! あー、美味しい。よく晴れてて爽やかだし、絶好のドライブデー、お出かけ日和ですね!!」
「だな。もうちょい走ったら教会が見えてくるぞ」
「ふふふふ、教会をバックに先輩の写真を撮るんです~、ふふふ」
「せっかくだから、教会の写真だけ撮れ。俺の写真はいつでも撮れるだろうが」
やだ、先輩、そんな甘い台詞を吐いちゃって……!! いやいやいやいや、落ち着こう、落ち着こう。慣れてきたんだよ、先輩は。私の奇行と変態性に。自分に落ち着きなさいって何度も言い聞かせながら、車に戻る。迫力だなぁ。普通の車にまぎれて、上品なダークレッドのオープンカーが停まってると目立つ。
ぼーっと突っ立っていれば、先輩がすかさずロック解除して、ドアを開けてくれた。待って!! さも当然のような顔して、ドアを開けて待ってくれているんだけど、そんなことする必要無いから。デートじゃないから、これ!
「あ、ありがとうございます……。で、でも、する必要無いんですよ!?」
「……ドアの開け方が難しいから」
「先輩って時々、雑な嘘を吐きますよね? さっき乗った時、すんなり開けられたんですけど」
「世の中に絶対は無い。今度は失敗するかもしれないだろ?」
「誤魔化しかたが雑! ええええええ~……」
「あ、バッグしまうんだったな。そういえば」
「わざとらしい言い方ですね? 棒読みじゃないですか……」
バッグをしまって貰ったあと、また当然ですという顔して、ドアを開けてくれた。ああっ、もう! 座るしかないじゃん、こんなの……。ドリンクホルダーにジュースを入れたあと、シートベルトを締めていれば、先輩も乗って座る。ドアを開ける時も閉める時も、静かに優しくしてるなぁ。脳裏にふっと、犯人をボコボコにしてた先輩の姿が浮かんだけど、考えないようにする。ああいう場面では本当に、凶暴になっちゃうんだけど、普段は優しい……。
「じゃ、行くか。シートベルトは締めたな?」
「はい。次降りる時は、ドアを開けなくても大丈夫ですかね!?」
「そんなに嫌ならやめるけど?」
「い、嫌というわけじゃ……」
「ならいいだろ。黙ってお姫様扱いされとけ」
にっと笑いながら言った。あれ、幻聴? 幻聴かもしれない。きっとそう。今日やたらとはしゃいじゃってるし、先輩の少年っぽい笑顔が素敵すぎるし、幻聴だと思う。先輩の笑顔を見て、都合の良いセリフを生み出しちゃったんじゃ……。先輩が私をお姫様扱いする理由なんて無いよね。私が調子に乗るだけだし。車がゆっくりと発進した。スムーズに高速道路へ出て、また潮風が吹き荒ぶ。さっきよりも風が強くなっていた。
「……幻聴ですかね?」
「ん? 俺、何も言ってねぇぞ。どうした?」
「何でもありません! そうだ、水着! 水着持ってきてくれましたか!?」
「いや、持ってきてない。フィオナが騒ぎそうで嫌だ」
「先輩? 先輩が水着を着ていようと、服を着ていようと、裸でいようと、私は騒ぎますよ?」
「目が怖くなってるんだろうな、今」
ハンドルを握りながら、優しく笑う。声が若干甘いような気がしたけど、勘違い勘違い。天地がひっくり返ったってありえないような気がするんだけど、散々変態的なところを見せてるから。でも、もしも万が一、天地がひっくり返っていて、先輩が私のことを好きだとしたら、拒絶出来るかどうか……。断れる自信が無い。でも、傷付きたくないし、勘違いして恥ずかしい思いをしたくないから、諦めようっと。まあ、別に好きじゃないんだけども!!
何気ない話題ばっか選んで話してたら、すぐに教会が見えてきた。海の上にそびえ立っている教会は荘厳で、ちょっとだけ壁が黒ずんでいた。宝石のように輝く青い屋根に、ステンドグラスの窓。観光客が列をなして、船を待っている。小さな船が教会に近付いていくと、大きな木製扉が開いて、船を中へと招き入れた。
いいなぁ、入場料が高いから、入ろうと思ったこと無いんだけど。船で教会の内部に入れるのって羨ましい。中には美術品が飾られていて、波打ち際があるカフェまで併設されているそう。雑誌で見た光景を思い浮かべていると、悲しくなってきた。近付いてくる教会をぼんやり眺めながら、写真を撮る。
「……いいなぁ。先輩、あの教会に行ったことあります?」
「無いのか? てっきりあるのかと」
「あ~、はははは。タイミングが合わなくて、まだ行ったこと無いんですよ」
「へえ。俺はデートで一回行ったきりだな」
「聞かせてください、先輩のデート話! 元カノさんって美人でしたか!? 写真があるのなら見たいんですけど!?」
「なんで食いつきが良いんだよ……もっとこう、」
「だって、先輩ってなかなか恋バナしてくれないでしょ! 珍しいじゃないですか、もーっ! 自分から話してくれるだなんて、嬉しいです。逃がしませんよ?」
「逃がしてくれ、頼む。忘れろ」
「ええええええ~、つまんない……」
聞きたかったのになぁ、先輩の元カノの話! ……ん? まるっきり嫉妬しないから、好きじゃないのかも。妙にほっとした。好きな人の元カノ話なんか、死んでも聞きたくないタイプだから、私。
「あー、いいなぁ。あの教会に行ってみたーい」
「俺と行こうぜ、じゃあ。このあと行ってみるか?」
「そ、それはさすがにちょっと! 教会まで行ったら日が暮れちゃいそうだし、このあとはパフェをお腹いっぱい食べて、帰りの車の中で寝て消化する予定です」
「おい、無理すんなよ。残ったら俺が食ってやるから」
「ふふふ、じゃあ、お願いします! あっ、忘れてた。先輩の写真! 撮らないと!! 教会をバックにした先輩って超絶レアですよね!」
「もう過ぎてるだろ……」
かろうじて撮れた、ふふふ。このまま今日一日がずっとずっと続かないかなぁ。あ、そんなことになったら絶対に騒いじゃうか。良い思い出になりそうで、にやにや笑いが止まらなかった。今日、口元が緩みっぱなしだ。




