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魔術犯罪防止課のトラ男と面食い後輩ちゃんの推しごと  作者: 桐城シロウ
一章 私が自分史上最高のイケメンを見つけて、転職した話
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29.冷静に考えたら、先輩と毎週会うってこと!?

 


「それで? 本当に付き合ってないのか? 二人は」

「もっ、もーっ、やだなぁ! ルーカスさんってば! つ、付き合ってるわけないじゃないですか! 冗談にしても酷いですよ、まったくもー!」


 せ、せっかく私が先輩と良い雰囲気にならないように、努力してるっていうのに、この人達ときたらもう! 今日はルーカスさんに誘われて、ニコラス君とルカさん、ステラちゃんと一緒に食堂でご飯を食べることになった。こうやって集まってると、目立つなぁ。食堂にいる人からの視線が何となく、背中に突き刺さるような気がした。海老やじゃがいも、帆立がごろごろ入ったシーフードグラタンにスプーンを入れ、食べる。ここのメニューはどれも美味しい。


「だ、だから何度も言いますけど、先輩は観賞用なんですって! 付き合いたいわけじゃないんですよ~。彼氏には向いてない顔立ちなんです! それに絶対絶対、付き合ったら熱が入って空回りしちゃうだろうし、些細なことでも気になっちゃうだろうし、絶対に付き合いたくありません!!」

「力説するなぁ……。そこまで力説しなくても」

「あ、先輩にとって私は面倒臭い後輩ですし、好きにならないっていうのは分かってるんですけどね? でも、まあ、付き合うのなんて絶対に無理ですよ! 緊張しちゃいますから、ははは」

「俺、分かんね。自分好みの顏とは付き合いたいから」


 ルカさんがビーフシチューを食べながら、眉をひそめた。この人、そろそろ「なんで眼帯してるんですか?」って聞いても怒らなさそう。今度聞いてみようかな? もぐもぐと、じゃがいもをよく噛み締め、飲み込んでから口を開く。


「ん~。私にとって先輩は、高嶺の花の美人さんなんですよね。ルカさんにもそういう人いませんか? こう、確かに自分好みだけど、超絶美人で緊張するし、釣り合わないなって思う人!」

「いねえけど、それ聞いて何となく分かった。まあ、面倒臭そうなのとは付き合いたくないよな~」

「ええっ? そういう意味じゃないんですけど! まあいいや。とにかくも付き合ったら、気が張りっぱなしで疲れそうなんですよね~。私、そろそろ恋愛には刺激じゃなくて、安らぎを求めたいなって思ってて」


 そう。これからは穏やかで、そこそこ自分好みの顔立ちをした、真面目で優しい男性と恋愛して結婚したい! もう刺激を求めるのはやめた、お腹がいっぱい。それに、どんなに浮気しないって言ってても浮気するし、この世のイケメン、全員信じられない気持ちになっちゃってる……。


 あと、トラの獣人について怖い噂が多いというか、本読んでても、怖いことしか書いてないし。基本的にじわじわと相手を追い詰めて、逃げ場を無くしていくような口説き方をします、と書いてあってぞっとした。スプーンに残ったチーズを味わいながらも、考える。


(でも、先輩にそうやってじわじわ口説かれていくのも……いやいや、やめておこう! 妄想厳禁、やめておこう!!)


 そうだ、恋の芽を丹念に潰しておかなくちゃ。隣で平然と、ハンバーグとステーキが一緒になったセットを食べている先輩の背中を、ばしばしと叩いてみた。


「だっ、だってこの顔立ちですよ!? こんな顔立ちの男性とは付き合えませんって! キスもハグも出来そうにありません、緊張しすぎて死にます!!」

「おい、背中を叩くなって」

「あ、すみません。痛かったですか?」

「そうじゃなくて……。あと、本人を目の前にして言うことか? よそでやれ、よそで。どういう神経してんだ」

「えーっ? でも、誤解を解いておきたいじゃないですか! 先輩だって迷惑でしょう?」

「あー、うん。まぁな」

「もう分かったから。俺が悪かったから、やめてやってくれ……。気の毒だ、あまりにも気の毒で見ていられない」

「えっ!? 何でですか!?」


 ルーカスさんが青ざめた表情で、よく分からないことを言う。気の毒? あっ、私のことが好きじゃないとはいえども、面と向かって、付き合いたくないと言われるのはつらいとか……? うん、確かにデリカシーが無かったかもしれない。良い雰囲気を潰すためにとはいえ。


「す、すみません。先輩! 私としては微塵も付き合う気が無いんですけど、それを周囲が理解していないのが、居心地悪いっていうか、もぞもぞするんですよ! だから、それを否定するために言っただけで、先輩の魅力を否定していませんからね!?」

「どうでもいい……」

「矛盾してる、矛盾してる! フィオナちゃん、矛盾してるって……」

「えっ? ルーカスさんが言いたかったことって、そういうことですよね?」

「んん~、ああ、うん」


 微妙な顏で微妙な返事をしてきた。え、何? はっきり言って貰わないと分からないんだけど。女友達からも「何でそんな鈍いの?」って言われる時があるんだけど、言われなくちゃ分からない。困惑していると、お腹を抱え、ゲラゲラ笑っているステラちゃんを無視して、先輩が口を開いた。


「気にするな、フィオナ。この人達は俺らのことをからかいたいだけだろ。いちいち反応していたら、きりがない」

「あ~、それもそうですよね。そうします!」

「……じゃあ、本当にフィオナさんはアディントン先輩と付き合う気が無いんですか?」


 それまで黙りこくっていたニコラス君が、突然聞いてきた。あれ? 前から言ってるんだけどなぁ。信用されてないとか? ちょっと驚いたけど、笑顔で頷いておく。


「無い無い~! 微塵も無いよ~! そんな風に見える? あ、私がかっこいい、かっこいいって言ってるから?」

「そうですね。てっきり、付き合うつもりなのかと思って」

「無い無い~! 大丈夫だよ、本当に無いから。絶対に無いから!」

「そ、そこまで無いって言うのはちょっと……」

「え? でも、ちゃんと無いって言わないから、ルーカスさんも勘違いしちゃったんですよね?」

「ん~」


 また渋い顔をしたルーカスさんを気にせず、ニコラス君が身を乗り出してきた。それにしても、はっきり言って欲しいなぁ。ま、いつものことだけど。ルーカスさんの歯切れが悪いだなんて。


「それじゃあ、今度俺と二人で飲みに行きませんか? 獣人って嫉妬深いし、もしも先輩とフィオナさんが付き合うつもりなら、二人きりで会わない方がいいと思って誘えなかったんですけど」

「えっ? ぜんぜん気にしなくて良かったのにー! てか、言ってたよね? 私。先輩と付き合う気は無いって」

「そうですけど。いつ空いてますか?」

「あ~、今週はもうだめ。全滅! 来週かなぁ。来週の休み? 会えるのは」

「……別に期限がぎりぎりってわけじゃねえし、変えようか? スイーツブッフェに行く日」

「あっ、いやいや! 楽しみにしてるんで! その日に向けて、ちゃんとイメトレしてるんで!」


 隣の先輩を振り返ったら、ぷっとおかしそうに笑った。う、ああああ~……!! この笑った時に、青灰色の瞳が細くなるのたまらない!! というか、口元にソースがついちゃってますよ? うふっ、ふへって変な笑いが出ちゃいそう~。今日も眼福。最高、先輩!


「イメトレってなんだよ? そんなのする必要あるか?」

「ありますよー! 最初に何を食べようかなとか、合間に程よくゼリーとかムースケーキ食べなきゃなとか! ほら、じゃないとお目当てのケーキ、全部食べれなくなっちゃうじゃないですか! 先に食べておかないと後悔するやつを食べてから、合間にちょっと気になっている、あっさりめのケーキを食べて胃もたれしないようにするんです!」

「へー。そうだ、しょっぱいもんもあるらしいぞ? サンドイッチとかクラッカーとか、軽くつまめるもんだけど」

「へー! いいですね、それ! 心置きなく食べれて! 先輩は甘いもの苦手だから、ちょうどいいですねって……ああっ、ごめん! ニコ君。予定だよね!? 空いてる予定」


 ふと見てみたら、ニコラス君がものすごく嫌そうな顔をしていた。一見、サバサバしている正統派イケメンに見えるのに、表情が豊かで面白い。ストレートに、相手に言いたいことを伝えるタイプ。ニコラス君がちょっと不満そうな顏で、トマトの冷製パスタを巻き取った。


「いいんですけどね。別に構わないんですけど……」

「ごめんごめん! 来週空いてるよ、どこ行く?」

「俺のいきつけのバーでもいいですか? 女性一人でも入りやすい雰囲気だし、小綺麗ですよ」

「へー、いいね! じゃあ、そこにしようか。どこら辺にあるバー?」

「俺の家の近くです」

「いや、分からないって! その情報だけじゃ」

「駅まで迎えに行きますよ。最寄り駅はなまけ者の歌です」

「はー。なんでそんな名前にしたんだろうね」

「さあ、魔生物だからでしょうね」

「いや、それはそうなんだけど! ニコ君って面白いよね、言うことが」


 列車を引いている魔生物が、駅員さんと駅名を考えているからか、各地に面白い名前の駅がある。私が素っ気ない返事に笑ってると、苦笑した。珍しいな、そんな風に笑うなんて。


「よく歯に衣着せぬ物言いで嫌がられるから、そう言って貰えると助かります」

「な、直す気は……」

「俺が他人に合わせる意味が見出せません」

「だろうね!! ニコ君はそういう感じの人だもんね!」


 私が丸パンを裂いて、ふわふわの白い表面にバターを塗り広げていると、違和感を感じた。尻尾がまた当たってない? 時々、太ももに尻尾が当たってるような気がするんだけど、気のせいかな……? 振り向いてみたら、先輩はいつも通りの顔をして、ステーキを口に運んでいた。尻尾も当たってない。


「なまけ者の歌の近くなら、あれか。去年オープンしたバーか?」

「知っているんですか。正確に言うと、リニューアルオープンしたんですけど」

「へえ、行ったことがある。……フィオナ、お前の好きそうなメニューがあったぞ。小さいハンバーガーとか、そういうの好きだろ?」

「えっ!? こういう、こういう小さいやつですか!?」

「そうそう。で、小さめのパフェとかも載ってたな。全体的にサイズが小さかった」

「へーっ! どういうのですか、どういうのですか!? 覚えてますか?」

「俺が行った時は夏だったから、パイナップルとヨーグルトアイスのパフェとか。まあ、そこまで豪華じゃなかった。悪い」

「どうして先輩が謝るんですか?」


 笑いながら振り返ってみると、満足そうな笑みを浮かべた。ふぁっふう!! 今日は色気で満ち溢れているというか、なんかご機嫌ですね!? 他の人がいるのに、ご機嫌で色気たっぷりな先輩を見るので忙しいから、もう最初から二人でご飯食べてれば良かったかも? あ~、その美しい顔立ちから、私の生きる気力がぶわーっと放出されてる。なんでこんなにも、私好みの顏と体をしてるんだろう……。


「期待させたかなと思ってさ。フィオナ、パフェ好きだろ?」

「あっ、はい。好きです! そうだ、自分で自分好みのパフェが作れるお店があって、そこに行きたいんですよ。ただ、遠くて……。海岸沿いにあるし、雑誌で見たんですけど、内装も素敵で! 友達を誘ったんですけど、わざわざパフェ食べに、そこまで遠くに行きたくないって言われちゃいまして」


 仕方ないから総当たりしてみたんだけど、ほぼほぼ全員に「勢いが怖いから行きたくない」って言われちゃった……。どういうこと? パフェが食べたくないならまだしも、私の勢いが怖いからってどういうこと!? 


 まあ、かなり遠いし、私が気になる男性見つけたんだ~って話したからか、惚気話を聞かされるって誤解されて、警戒モードに入っちゃったし。私とは元気な時にしか会いたくない、って言葉が胸に突き刺さっているのを思い出して、落ち込んでいると、先輩が笑った。


「へー、どんな店なんだ?」

「俺も甘いもの好きだから、興味あります。どんな店なんですか?」

「あれ? ニコ君って甘党だっけ!? そんなイメージ無いんだけど」

「それなりに食べれます。アディントン先輩は確か、甘いもの苦手でしたよね?」

「……ああ、まあ。でも、食べれるのもあるぞ。バニラアイスとかチョコケーキとか、そっち系はいける」

「へー! そうなんですね! メモってもいいですか?」

「お前……。俺が魔術の説明をした時、一切メモらなかったくせにか!?」

「すっ、すみません! じゃあ、今度からメモるようにしますね……」


 先輩の瞳の色とそっくりだったから、衝動買いしちゃった、銀色と青の装丁が美しい手帳を取り出して、にへにへ笑いながらメモする。グラタンもほぼほぼ食べ終わったし、先輩の個人情報を記入しておきたいな……。銀色のボールペンを走らせていると、ニコ君が話しかけてきた。


「それで? フィオナさん、その店ってどこにあるんですか? どんな感じなんですか?」

「ん~。ここから大体、片道で二時間半ぐらい?」

「わりと遠いな……。列車でか? それとも車か?」

「あ、列車ですね。友達に聞いてみたんですけど、車で行く方が早いみたいですよ。途中で観光スポットもあるし、ほら! 海の上に建ってる教会があるじゃないですか! あそこを通って行くみたいです」

「なるほど。今の説明でよく分かった。じゃあ、車で行くか」

「んっ!?」

「車出してやる。俺と二人で行こうぜ」

「へああああああっ!? いいんですか!? 行きましょう、行きましょう!」


 せ、せんぱい! 車に乗ってる先輩! 助手席、助手席!! 気分はもうすっかり車の中だった。日に焼けた逞しい腕を観賞するのが、ドライブデートの醍醐味じゃないかな……。車のハンドルを握る先輩、最高にかっこいい! 絶対にかっこいい!! はああ、たまらない。もう急いで用意して行かなくちゃ。まだその日じゃないんだけど、どうしよう? 前日、楽しみすぎて眠れないかもしれない。うっとりしていると、ニコラス君が私を現実に引き戻すかのように、強めの口調で話しかけてきた。


「フィオナさん? 俺も行きたいです。一緒に行きませんか? せっかくだし、三人で行きましょうよ」

「へっ? ああ、でも、助手席は私のだけど!?」

「悪いな。父親の車を借りるつもりでいるんだが、二人乗りだから」

「……レンタカー代、出しますよ。俺」


 服、何着ていこう!? ニコ君が酔うからって言って、助手席に座りたがらなきゃいいけど。そういうことしそう。ああ、もう、追加でアイシャドウ買っちゃう? 最近手持ちのコスメに飽きてきたところだし、新調してもいいかも。車に長時間、乗るなら楽な格好で……。だけど、二時間半だし、気にしなくてもいい? でも、合わせると四時間ぐらいのドライブになるから、ゆったりめのワンピースを着た方がいい? 確実なのはズボンなんだけど。ああ、どうしよう? 悩む!!


「そんなについて行きたいのか。へえ、知らなかったな。パフェが大好物だったとは」

「いやいや、アディントン先輩だって甘いものが嫌いでしょう?」

「あっ、でも、シャーベット系が充実してるみたいだから、きっと先輩も食べれますよー! なんとソフトクリームまであるんです! 豪華ですよね」

「だな。どうする? 二人乗りのオープンカーを借りようと思ってたが、ニコラスが来るのなら、」

「あああああああーっ!! ええっ!? オープン、オープンカー!? えっ、でも、今の季節暑いんじゃ、」

「屋根も出せるぞ?」

「はあああああっ、ごめん! ニコ君、ごめん!! 助手席を私に譲って!? ほら、どうしてもついて来たいのならさ、ニコ君だけ列車で来なよ! それかバイク? まあ、とにかく現地集合現地解散しようよ~」

「……」


 そこで耐えきれないといった様子で、ステラちゃんとルカさんが笑い出した。ルーカスさんも顔を伏せ、「若いっていいね、眩しいね……」と言いながら、ぷるぷると肩を震わせてる。え、なになに? わざわざパフェ食べに行くから……? 呆気に取られていると、先輩がにっこりと良い微笑みを浮かべた。うわ~、かっこいい! かっこいい!! もうそれしか言えなくて、自分の語彙力の無さに失望した。


「じゃあ、そうするか。俺としては、レンタカーを借りても良かったんだが」

「いやいやいや! 先輩のっ! 先輩の助手席に座るのは、この私ですけど!?」

「分かったから落ち着け。まあ、フィオナがどうしてもって言ってるし、ごめんな? ニコラス」

「いえ……。じゃあ、もういいです。よく考えたら二人で飲みに行くし、無理してついて行かなくてもいいので」

「やったー! 先輩とドライブデー、ぐぉっ、ぐぅっ、ぐふ!! あ、あの、ニコ君と一緒に行くの楽しみですね!」

「ついて来ないってよ、ニコラスは」

「あれ? そうなんですか? じゃあ、二人きりですね!? ということは撮影会ができちゃう!?」


 カ、カメラを! カメラを持って行かなくちゃ!! 普段だから持ち歩いてるけど。私が目を輝かせたのを見て、先輩が苦笑する。


「なんでだよ? まあ、別にいいけど。いつにする? それで」

「あーっ、そうですね! 次の休みの日に行きましょうか。こういう時同じ職場で便利ですね。予定が立てやすい」

「だな。バディ組んでるから、休みがほぼほぼ一緒だしな」

「ですね! 友達が忙しいし、何の予定入ってないし……」


 あれ!? もしかして毎週、先輩と会うことになっちゃってない……? 週五日で会ってるのに? あれ? いつの間にこんなことになったんだっけ!? 忘れた。先輩の日に焼けた腕を見ることしか、頭に無かったんだけど、なんで二人でパフェ食べに行く話になったんだっけ……? スケジュール帳を持つ手を震わせながら、見下ろす。


(まずくない? この状況。私、先輩ともうちょっとだけ距離を置こうと思ったんだけど……。あれ? 距離、縮まってない?)


 震えている私の横で、先輩がゆうゆうとスケジュール帳を開き、「当日は家の前まで迎えに行くから」と呟いた。で、でも、今さらやめられないし、何よりも行きたい! ハンドルを握ってる先輩を! 眺めたい!!


「まあ、また時間を決めるか。食べねぇのか? もうそろそろ昼休みが終わるぞ」

「あっ、食べなきゃ! えーっと、先輩?」

「どうした? 待ち合わせ時間はフィオナに合わせるつもりでいるけど」

「あ、ありがとうございます。近くに観光スポットもあるから……」

「見て回るか。当日、晴れるといいな」

「……ですね!」


 もう考えるのやーめた! 頭に“トラの獣人は好意を見せずに、ゆっくりとじわじわ近付いてきます”という本の一文がよぎった。まさかね。先輩が私を好きって、無い無い、無い無い無い、絶対無い……!! 普段からドン引きされてるし、何よりも厳しいし。


「良かったです! 私と会うと元気が奪われるっていうか、心身ともに万全な状態じゃないと会いたくないな~って、友達に言われちゃったんですよ! 酷くありません? だから、他の友達誘うのもあれだし、先輩が行くって言ってくれてちょうどよかっ、」

「へー。俺はフィオナに会うと元気出るけどな」

「……」


 ぎゅーんと、体温と心拍数が上がる。し、しれっと、しれっと言った!! この人! 気まずくなって他の人達を見てみると、笑ってた。ルカさんに至っては、にやにやと笑いながら頬杖をついている。焦って、先輩を見るしかなかった。


「でっ、でっ、ですかね!? 騒いでるけど、うるさくないですか!?」

「大丈夫だって。うるさいはうるさいけど、嫌な感じじゃない。鬱陶しくない」

「だ、だ、だったらいいんですけど……。ありがとうございます」

「まあ、フィオナは明るいところが魅力的だから、そのままでいいんじゃないか? あ、早く食えよ。昼休み終わるから」

「はいっ!! 食べます!」


 急いで、残りのグラタンをかきこんだ。もちろん、味なんてちっとも分からなかった。頬が熱い。時々当たる尻尾が気にならないぐらい、心臓がばくばくとうるさい音を立てていた。










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