第98話 魔王様、ドワーフの国へ
洞窟の中を進んでいた俺たちは、ようやく出口らしき場所へと出た。そこで目に飛び込んできたのは灼熱の大地だった。
「うわぁ……見てっ、兄様!」
「あぁ……こりゃまた、壮観な光景だな」
これまで細い洞窟だったのだが、今度は地下にポッカリとできた巨大な空間へと変わっている。
見上げてみても天井はなく、ただ深い闇があるだけ。視線を下に向けてみると、辺り一面に真っ赤なマグマが広がっていて、思わず腕で顔を覆ってしまうほどの熱波に襲われた。
こりゃあ魔法で周囲の温度を下げていないと、あっという間に干上がってミイラになりそうだ。
「すごいすごい! ねぇ兄様、あの赤い泥で遊んできてもいい!?」
「ぐぁ、ぐぐぁ~っ!!」
「やめろ二人とも。アレは海じゃないぞ」
同行者の二人がキラキラした眼で俺を見てくるが、行ってこいなんて言えるわけがない。
魔族最強の竜族シャルンとサラマンドラのサラちゃんなら、もしかしたら平気かもしれないけどさ。火傷じゃすみませんでしたー、で帰ってこなかったらさすがに嫌すぎる。
「それにしても、ドワーフは本当にこんな所で住んでいるのか?」
どこを見渡してみても、住居などの人工物はないし、ましてや人の影どころか魔物の気配すらない。とてもじゃないが、ここに国があるとは思えなかった。
うーんと首を傾げて悩んだ末、俺はシャルンたちに声を掛けた。
「ダメだ、分からん。ちょっとティターニアに聞いてくる。どうやってドワーフから救援要請を受け取ったのか、それが分かれば何か手掛かりが掴めるかもしれない」
「えぇーっ! アタシも行きたい!!」
「ぐぁー!」
「お前らなぁ……遊びじゃないんだぞ? すぐに帰ってくるから、ここで大人しく待っていてくれ」
子供のように駄々をこねる二人を宥めつつ、俺はティターニアの居る精霊の国へと転移した。
そして約2分後。
「ったく、何が伝え忘れただよ。ちゃんと合図の魔法があるんなら、あらかじめ伝えておいてくれないと――って、あれ? シャルン? サラちゃん?」
意外とあっさり用件が終わった俺は、再びブードゥ火山へと戻ってきた。
ブツクサと文句を呟きながら、ティターニアから教わったドワーフたちとコンタクトを取るための魔法をさっそく使用する……が、ここで待っているはずの二人の姿がどこにもない。
「トイレにでも行ったのか? いや、さっき昼飯を食った後に行ったばかりだしな。……ともすれば」
いや~な予感が俺の脳裏をよぎる。
「あははは! たのしーい!」
「げぎゃっげぎゃっ!!」
「うわ、マジかよ……」
声のした方を振り返ると、そこにはマグマの海で遊ぶ二人の姿があった。
二人は水浴びするように、マグマに手を突っ込んでは互いに掛け合い、奇声を上げて喜んでいる。
「あんのバカどもは……っ!」
俺はすぐに飛翔魔法でシャルンたちの居るマグマの海へと向かい、二人の首根っこを掴んで引っ張り上げた。
「兄様!? あっ、ちょっと! なにするの!?」
「ぎゃぅ!?」
全身が灼熱の液体まみれになっているものの、二人とも火傷した様子はない。本当に火耐性が高いようだ。
「何するの、はお前たちの方だ! こんな所で遊んじゃダメだって説明しただろ?」
「だって別に危なくなんかないもん! それにサラちゃんだって楽しそうよ?」
「ぐぁー♪」
そんな俺の怒りなど何処吹く風で、シャルンたちは興奮した声を上げる。マグマで遊ぶという貴重な体験ができて心から嬉しそうである。……まぁずっと魔王の仕事ばかりで、遊ぶ暇なんてなかったのかもしれないが。
「まったく、あんまり心配かけないでくれよ」
「むー……ごめんなさい、兄様」
俺は怒るよりも呆れて大きなため息をこぼした。
「それよりも兄様、伯母様はなんて?」
「あぁ、聞いてくれよシャルン。それが俺も予想外なところにドワーフが隠れていたらしくって……」
空中で浮かんだままそう言いかけた瞬間、それまで静かに凪いていたマグマの海が突然、大きくうねり始めた。
「えっえっ!? なに? なんなの!?」
「おっ、来たか。丁度いいタイミングだな」
大きな泡がいくつも浮かび上がった。その泡もどんどん大きくなり、やがて巨大な黒い影がマグマの水面に映り始めた。
「に、兄様!?」
「大丈夫。俺が合図したからドワーフたちが応えてくれたんだ」
「えええっ!?」
「ドワーフたちはここに国を建てたんじゃない。彼らはこのマグマの中で生活していたんだ」
――ゴボッ、ゴボボボボッ!
シャルンの驚く声をかき消すように、粘りのある大きな水音をさせ、ついに彼らの国が現れた。
「な、なにこれぇ……!」
「おぉ……魚?」
その国は灼熱の海を泳ぐ、黄金色に輝く巨大なチョウチンアンコウだった。
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