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第97話 魔王様、同行者が増えました


「どうして魔王城に居るはずのお前が、こんなところに居るんだよ?」


 洞窟の岩陰から出てきた人物。それは旅用のローブを頭までスッポリ被った、魔王シャルンだった。


「だ、だって! せっかく兄様と再会できたのに、また村から居なくなっちゃうって聞いて……」


「だからって、そんなコソコソとストーキングするなよ。敵だと思って攻撃を仕掛けるところだったぞ」


「う、うぅ……ごめんなさい」


 シュンと肩を落とし、紫色の尻尾をだらんと脱力させるシャルン。その立ち姿に魔王としての威厳は皆無だった。

 う、ちょっと言い過ぎたか?


 しかし俺の後を付けてきていたのが、まさかシャルンだったとは……てっきり俺の命を狙う刺客がまた来たのかと思ったぜ。もったいぶらずに、さっさと声を掛けてやれば良かったな。


 たぶんコイツも、寂しかった故に暴走しただけだろうし……しかもその原因は言わずもがな、放ったらかしにした俺である。



「まぁ付いてきてしまったのは仕方ないか。仕事の方は大丈夫なのか?」


「うん。クリムたち四天王に話したら、『こっちは任せて行ってこい』って」


「あー……たしかにアイツらなら、そう言うだろうなぁ」


 面倒見のいい兄貴分のクリムにお姉ちゃんのアクア。風のブロウも他人に興味が無さそうなフリして、何だかんだ四天王イチの世話焼き男だしな。ヨシヤは……きっと牛丼以外のことには無関心だろうし、うん。



「あ、アタシだって兄様の跡を継いで、自分なりに頑張ってるんだよ? 難しいお勉強は相変わらず苦手だけど……」


「それは聞いているよ。この前もアクアが褒めていたしな。『頭の悪い人が嫌いなブロウが、珍しく放置せずに最後まで面倒を見てる』って。ガッツがあるじゃないか、シャルン」


 ブロウは四天王でありながら、国内の政治面を管理する文官としても活躍している。

 魔族は脳筋の戦闘狂でいい加減なヤツばかりだから、いつも『助けてくれ陛下! どうしてこうも僕の負担ばかり増えていくんだ!』と嘆いたっけ。特に俺の抜けた今、アイツが一番苦労しているかもしれないな。

 それでも時間を見付けてシャルンに教鞭をとっているというのだから、十分に見込みがあるんだろう。



「それに政治とか難しいことは他の人に投げっぱなしなのは、先代の頃から変わらないから」


 あの人は腕っぷしだけは最強の魔王だったけど、頭の方は正直に言って……だった。

 政治的に何かトラブルが起きても『やれる奴がやりゃあ良いだろ! ガハハハッ!』が口癖だったので、俺や養母の王妃は苦労させられたっけ。


 シャルンももれなく先代の血を引いてはいるのだが、彼女は精一杯努力しようとしてくれているようだ。



「ぐぁ~?」


「あぁ、サラちゃんにも紹介するよ。俺の義妹で魔王のシャルンだ」


「アタシがシャルンよ! よろしくね!」


「ぐぁ~。ぐぁぐぁ」


 通じるか分からないが、取り敢えず旅の同行者であるサラマンダーにも紹介してみる。魔族や魔物だということは互いに気にした様子もなく、シャルンもサラちゃんと握手を交わした。



「じゃあシャルンもドワーフの国に?」


「えぇ! ドワーフも魔族の一員であることには変わりないわ。困っているのなら、魔王であるアタシが助けてあげないと!」


「お、おぉ! 随分とやる気じゃないか」


「そりゃあそうよ。だって絶滅したと思われていたあのドワーフなんだもの! お父様ですら見たことのない種族……何としてでも会ってみたいもの!」


 グッと拳を握り、フンスと鼻息を荒くするシャルン。大義名分があるというよりも、単純に彼女の興味本位のようだ。



「はぁ……まぁ救助という目的が同じならいいか。シャルンなら大抵のことが起きても死ぬことは無いだろうし」


「体が丈夫なことだけは自慢だからね! 竜族さまさまよ!」


「ぐぁ~」


「あら、そういえばサラちゃんも鱗があるものね! アタシとお揃いだわ!」


 なにか通じ合うものがあったのか、なにやら二人でキャッキャと盛り上がり始めた。……なんか疎外感を感じるぞ。



「ふたりとも。盛り上がっているところ悪いけど、そろそろ先を急ごうぜ」


「うん!」


 そうして俺たちはサラちゃんの案内の下、再びドワーフの国を目指す。


 その間も俺たち兄妹は互いの事情を語り合いながら歩く速度を上げ、ついに洞窟の最深部へと到達したのだった。


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