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第86話 魔王様、それは迂闊です


「まったく、酷い目に遭ったぜ……」


 筋肉バカのクリムに結局捕まった俺は、同じく筋肉好きのサムアッさんと挟まれ、二人の筋肉談議に付き合わされてしまった。


 あまりにも興味のない話だから、途中からは適当に相槌を打つだけにしていたのだが。それがまた良かったのか、二人はとても満足そうに延々と自慢の筋肉を熱く語っていた。



「牛乳に関する知識が無かったら、日が暮れるまで開放されなかったな……」


 どんなトレーニングが筋肉づくりに効果的か、白熱した議論を始めたので、俺が“それなら牛乳でも飲んどけ”と口を挟んだのだ。



「牛乳には骨を丈夫にするし、筋肉を成長させる成分も入っている。筋肉を愛するお前らなら是非――」


「それは本当かっ!?」


「ケルベロウシのミルクでも効果がありますかっ!?」


「え? あ、あぁ。アイツらの牛乳は普通の牛より濃いし、栄養価も高いぞ」


 たしかトレーニングしてすぐに飲むと、効率よく吸収できるんだっけ?


 この世界にはプロテインなんて無いだろうし、牛乳はお手軽に高品質なタンパクを摂取できるんじゃないかな。



 そんな説明をするや否や、二人は「こうしちゃいられない」と走ってどこかへ行ってしまった。


 きっと外でトレーニングをしてくるんだろう。お前らはもう十分に筋トレしてんだから、十分だってば。



「はぁ……牛乳の手配をしておかないとな」


 プルア村に住んでもらっているケルベロウシは順調に数を増やしている。元が魔獣なだけあって、この魔素が集まりやすい辺境の地では成長や繁殖スピードが速い。


 また魔獣と会話ができるクーがいるおかげで、近隣の森や平原にいるケルベロウシが集まってきている。なんでも、口コミでプルア村の評判が広がっているらしい。魔獣ネットワーク、おそるべし。



「というわけで、クー。ミルクの需要がさらに上がりそうだ」


 宿の中にある猫鍋亭で接客をしていたクーにそう伝えると、彼女は「やれやれ」と肩をすくめて見せた。


「了解なのです! エサを増産する用意をしておくですよ!」


「忙しいのに悪いな、頼むよ。もちろん報酬は弾むからさ」


「それなら今作っている試作ミルクプリンの味見をお願いしたいです!」


 そう言ってクーが見せてくれた木のボウルには、少し黄味がかった白い液体が。



「へぇ……見た目は上手くいってそうだな」


「ふっふっふ……ストラ兄さんに教えてもらったレシピがありますからね! 成功すれば猫鍋亭のスイーツ枠が生まれるですよ!」


 えっへんと胸を張って鼻高々に言うクー。自慢げだから相当自信があるんだろう。


 俺はさっそくスプーンですくい、パクっと口の中へ。その瞬間、舌の上にまろやかな甘味とコクのある濃厚なミルクの風味が広がる。



「美味い!!」


「やったーなのです!」


 俺が叫ぶと、クーは犬耳をピンと立てて無邪気に喜んでいた。尻尾なんてブンブンと左右に揺れている。そんな彼女の様子に「ふふっ」と微笑ましくなってしまう。


 最初はオドオドとしていたクーだったが、今ではすっかり村のムードメーカーだ。こうしてお菓子作りまで覚えるんだから、料理の楽しさを見つけたんだろう。良いことだな。



「あら、クーちゃん良いわね。私の方も味見してもらおうかしら」


「フシのもお願いするのニャ!」


 俺たちの様子を隣のテーブルで見ていたリディカとフシも、自分たちのボウルを持ってやってきた。


 もちろん断る理由も無いので、彼女たちのもチェックする。うん、美味しい。


 ちなみに鳥獣人のピィはと言えば。彼女は自分で味見をしながら、勝手に果物を入れたりとオリジナリティ溢れるミルクプリンを生み出していた。ピィらしいというか、何というか。



「それじゃあ、このプリンたちに火を入れていきますね」


「あぁ。少し焦げやすいだろうから、焦らずじっくりやってくれ」


 さすがにゼラチンは手に入らなかったので、ジャガイモ粉で代用だ。


 養鶏を始めて卵が手軽に使えるようになれば、通常のプリンでも良いんだけどな。



「あとは砂糖がウチの村で収穫できるようになれば……」


 このとき、俺はうっかりしていた。


 女性陣にとって、“砂糖”というワードがどれほどの威力を持っているのかということを。



「……今、砂糖って言いました!?」


「甘いやつニャ!」


「絶対ほしいです!」


「他の畑を潰してでも作ろー?」


 四人全員に詰め寄られた俺は、とりあえず「分かったから」と言って落ち着かせようとする。



「言いましたね!? 言質(げんち)は取りましたから、絶対ですよ!?」


「お、おう……」


「ですって、みんな! やったわね!!」


 彼女たちの圧に押され、俺はこくこくと頷くしかできなかった。


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