第83話 魔王様、送り狼ですか?
妖精樹の果実で作ったお酒、シードル。どの村人たちにも概ね好評で、みんなが美味そうにゴクゴク飲んでいる。
さて肝心の効果はっと……。
「す、すごい。みるみるうちに肌が潤いだしています!」
「なんだか若返っているような気がする! これは凄いわ!」
「うふ、うふうふ。これは是非とも私の国に仕入れなくては……」
ひと口飲むたびに、そんな感想があちこちから聞こえてくる。
まるでお肌が10歳は若返ったよう……。って、言い方はアレだけどな。
「確かに凄い効果だな」
俺も飲んでみたけど、飲む前よりも肌のハリとツヤが増した気がするぞ。エルフの秘薬じゃないけど、このシードルを飲んでいたらいつまでも若くいれそうだ。
そんな効果があるお酒と分かれば、美容を気にする人らが夢中にならないはずもなく。気付けば獣人三姉妹と俺を残して、他の者たちはすっかり酔い潰れてしまっていた。
聖獣様? アイツはさっさと引き上げて温泉に帰っていったよ。
「お前たちは、こんなダメな大人になっちゃダメだからな」
「フシはお酒に強いから、そもそも酔い潰れないのニャ」
「クーも同じくです!」
「ホワホワするけど、変わらないのー」
そうなのか……獣人は身体能力が高いっていうし、そういう体質なのかもしれない。
「まぁいいか。みんな酔い潰れちゃったし、今日はお開きにして家に帰ろう」
「……ストラ兄は、なんで変わらないのニャ?」
「ん? いや、俺はそこまで呑んでいないぞ?」
酒には強い方だしな。まだ意識もしっかりしているし……。
フシたちにリディカたちを任せ、俺は妖精女王のティターニアを担いで彼女の城へ転移する。
「いつもすみません……」
「気にしないで、もう慣れっこだから大丈夫だよ」
ティターニアの居室へ行くと、そこには妖精族の侍女が待機していた。
こうして俺が彼女を運ぶのは毎度のことなので、急に現れても彼女は驚きもせず、静かに頭を下げて会釈する。
すっかり夢の世界に旅立ってしまっている主を一瞥すると、彼女は申し訳なさそうにベッドまで案内してくれた。
「んんっ……? ストラ、帰っちゃうのぉ?」
「あのなぁ、こんな状況で泊まれるわけないだろう」
ベッドにティターニアを寝かせると、目を覚ました彼女は寝ぼけ眼で俺を見る。
「やぁね、そこはちゃんと分かっているわよ」
「本当かよ……。じゃあ俺は帰るからな」
そう言って部屋を出ようとしたのだが、ティターニアは起き上がって俺の服の裾を掴んだ。
「もう少しだけお話ししましょう?」
ベッドに腰掛けるように促されると、彼女はいつものような悪戯っぽい微笑みを浮かべた。
いやまぁ、少しなら良いんだけどさ……。
「……それで? アンタの用件ってのは一体何なんだ?」
さすがに泊る程じゃないと断りを入れていたので、リディカを心配させない為にもさっさと用件を尋ねた。
「んー、そうね。ストラとリディカさんの恋愛について、かしら」
「ぶっ!?」
予想外の言葉に思わず吹き出すと、ティターニアはクスクスと笑って言葉を続けた。
「冗談よ。本当は私の話」
「……お前が言うと冗談に聞こえないから止めてくれ……」
そんな俺の反応を見て、彼女はさらに楽しそうに笑ったのだった。




