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第68話 星々の祝福のもとに


 なぜだ? なぜバレた?

 しかもどうしてこのタイミングで!?


「この村に来たときから、変だなってずっと思っていたんです。勇者様はプルア村の出身であるはずなのに、まるで初めて来たかのように村を見て回っていましたよね?」

「そ、それは……」

「ホウジさんたちのことだってそうです。彼らがこの村の住人かどうかなんて、すぐに分かっていたはずでしょう?」


 彼女がゆっくりとこちらに歩いてくる。そして俺の前で立ち止まった。じっと俺の顔を見つめている。まるで俺の中身を見透かすかのように……。



「ホウジさんたちの態度に怒ってくれたこと……。私が作った料理を美味しいって言ってくれたこと。全部が、まるで魔王様がしてくれてたみたいで。さっきも、私の命を救ってくれたあの時と立ち振る舞いがそっくり……それで確信したんです」

「いや、えっと……それはたまたまというか……なんというか」


 俺はどう答えていいか分からずに言葉に詰まってしまった。


 そんな俺に彼女はさらに言葉を続ける。



「勇者様、行ったことのある場所なら転移できるって。ならどうして最初から村に転移しなかったんです?」

「……」

「……どうして私に隠すんですか?」


 彼女はそう言うと、(つら)そうに顔を伏せた。


 そんな表情を見た俺は、もう隠し通すことは出来ないと判断する。話した末にリディカ姫を悲しませるかもしれないが……仕方がない。



「俺は……魔王だ」

「……やっぱり」


 俺が観念して正体を明かすと、彼女は小さく頷いた。

 そして銀色の髪を流星のようになびかせながら、俺の胸元にギュッと抱き着いてきた。


「あ、あの……リディカ姫?」

「ずっと、ずっと貴方に逢いたかった……」


 彼女は俺の胸に顔を埋めながらそう呟いた。

 そんな彼女の体をそっと抱きしめる。



「おかえりなさいませ、魔王様」

「……ただいま。リディカ」


 俺は彼女の耳元でそう囁くと、優しく頭を撫でた。


 リディカ姫はゆっくりと体を離した。そして真っ直ぐに俺の顔を見る。星空を映すその瞳は、涙で潤んでいた。



「貴方を……愛しています」

「……えっ!?」


 突然の告白に驚きの声を上げてしまう。

 そんな俺の反応を見てリディカ姫は恥ずかしそうに頬を赤らめた。


 いやだって……そりゃ驚くでしょ! 姫様が突然“愛してる”なんて言ってきたら! あぅあぅ……これはまずい。

 なんだか顔が熱くなってきたぞ! そんな俺を見て、彼女はクスクスと楽しそうに笑った。



「ふふっ。魔お――勇者様ってば、照れているんですか?」

「うぐっ……」


 リディカ姫に指摘されて思わず手で顔を覆う。だって仕方がないじゃないか! “愛してる”なんて言われたの初めてなんだぞ!


 すると彼女は俺の手を取って、その手のひらにそっとキスをした。彼女の柔らかい唇の感触が俺の脳を刺激する。もう頭がおかしくなりそうだっ!!



「今すぐに返事がほしいとは言いません。ですが、いつまでも私はお待ちして――」


 それ以上の言葉や時間は不要だった。

 満天の星が見守る中、俺は彼女の唇に自らの唇を押し当てた。


 リディカ姫の柔らかな唇が、俺の唇と重なる。

 五感全てが彼女を認識しているような感覚に襲われる。それはとても心地よくて……甘美なものだった。



 数秒ほど経ってから、ゆっくりと唇を離す。

 すると彼女は恥ずかしそうに両手で顔を隠してしまった。まるでリンゴのように真っ赤になったその顔は、とても可愛らしいと感じる。


「自分だって顔真っ赤だぞ、姫様……」

「うっ。だって……こんな、急に」


 なんだか急に照れくさくなってしまって視線を逸らすと、温泉宿の物陰からこちらを覗いている聖獣様と獣人娘たちと目が合った。


「あ、バレたのニャ」


 ハッとした顔でこちらを見たあと、ニヤニヤとした笑みを浮かべて去って行った。


 うん。完全に見られたなコレ……。



「こほんっ……」


 気を取り直すと俺は一度咳払いをした。そして彼女の手をそっと握る。


「リディカ姫」

「……はい」

「今の俺はもう魔王でも勇者でもない、ただの領主だ。自分の世界を守ることしかできない、小さな男だが……それでも一緒に付いてきてくれるか?」


 そう言うと彼女は驚いた表情で俺を見上げた。


「もちろんです。私も姫としてではなく、貴方の妻として支えるつもりですよ?」


 そう言って俺の手をギュッと握りしめ、眩しい笑みを見せるリディカ姫。思わずつられて、俺も頬を緩ませた。



「改めてよろしく頼むよ、()()()()

「はい。こちらこそ」


 彼女の期待に応えるためにも、もっと頑張らなければならないな。そう決意を新たにするのであった。

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