表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/104

第18話 魔王様、キモいです


「うっわ、なんですかそれ」

「気持ち悪いのニャ」


 テーブルの上に広げた魔族領産の種を、気色悪そうにフシとクーが見ている。まぁ見た目はウニや黒いイガグリだしな。


「どんなに環境の悪い場所でも元気に育つ野菜で、魔族領では大人気だったものだ」

「これが……どんなふうに育つんですか?」

「黒い触手みたいな蔓が地面を這い、豚の頭みたいな果実が生るんだけどな。血のように真っ赤に熟すと、夜中に一斉に叫ぶようになるんだ」

「えぇ……」


 リディカ姫が数歩、後退(あとずさ)っていく。まぁ無理もない、俺だって初めて目にしたときは怖かったからな。



「でも味は美味しいぞ? 特に生だと驚くほど甘くてジューシーでな……」


 魔族領は過酷な環境が多く、普通の作物が育ちにくい。

 その代わりに半魔物化したような植物が、たくさん生息しているのだ。しかもそれらはとても強く、生命力に溢れている。



「その名も『悪魔の肉饅頭(デビルヘッド)』っていうんだけど」

悪魔(デビル)……まがまがしい名前なのニャ……」

「本当に食べても大丈夫なものですか?」

「もちろんだ。むしろ栄養価が高いから、積極的に食べなきゃいけないくらいだぞ」


 そんなデビルヘッドをとし、人族領に広めるための農地改革。これを目的のひとつに掲げたいところだな。



「さすがに、それは……」

「まぁ試しに一度育ててみようぜ。きっと気に入るはずだからさ!」


 デビルヘッドを使った野菜栽培が成功すれば、村の食料事情もかなり良くなる。


 それに、もしかしたらプルア村の特産となるかもしれないのだ。だからこそ上手く栽培できるといいんだけどなぁ。



「あの、ストラ兄さん……」

「ん? どうしたんだクー。珍しく元気がないな」


 クーがやけに大人しい。

 いつもなら俺の提案に、真っ先に賛成してくれるのに。どこか具合でも悪いのだろうか? 茶色い犬耳をペタンとさせ、俺の目をじっと見つめている。


 俺が首を傾げていると、クーは遠慮がちに言ってきた。



「ピィみたいに、僕も何かお仕事が欲しいのです……」

「お仕事?」


 なんで急にまた……と思っていると


「僕はピィみたいに計算はできないし、フシほど器用でもありません。クーは何を頑張れば、ストラ兄さんのお役に立てますか……?」


 そういえば。畑に何を植えるかを考えてばかりで、クーのことがすっかり抜けてしまっていたな。フシもピィも、俺が何も言わなくても手伝いをしてくれるから……つい甘えてしまったのかもしれない。


 クーにはクーにしか出来ないことだってあるはずだ。それを見つけてあげないとな……。


「んー、そうだなぁ……」


 俺が腕を組みながら悩んでいると、フシと目が合った。


「ふっふっふ。クーよ、今こそ自らに掛けていた封印を解くときが来たのニャ」


 封印……ってなんだ?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ