表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/104

第1話 魔王様、ご褒美です

「良くやった、勇者ストラゼスよ。我が国を脅かす凶悪な魔王を、よくぞ討ち取ってくれた! はーっはっはっは!」


 ――なんで人間って、こうも醜いかなぁ。


 冷たい床で(ひざまず)いていた俺は、豪華な玉座で高笑いをする王様を見上げながら、そんなことを思った。


 民を高額な税で苦しませ、自分はふんぞり返って贅沢三昧。


 挙句の果てには、その税が払えない国民を魔族との戦争に駆り出している。


 アンタの言う凶悪な魔王様の方が、よっぽど謙虚堅実でクリーンな政治をしていましたよ?



「これで我が国は安泰だ! 勇者ストラゼスよ! 貴殿こそ我が王国の救世主である!」


 ……はいはい、ありがたき幸せ~ってね。


 その救世主の中身が魔王とすり替わっているとも知らずに、まったくもって能天気だこと。



 しかし救世主ねぇ。


 周りの人々は、デブで性格の悪い『ゲス豚勇者』って呼んでいるそうで。


 国中の嫌われ者って有名じゃないですか。


 そんなことを胸の中で呟く俺に、さらに王は言葉を続ける。



「さて、お主に褒美を与えようと思うのだが」


「陛下の寛大な心遣いに、感謝いたします」


「ぬほほほっ。構わぬ構わぬ。それでその内容というのがな――おい、騎士団長よ。姫を連れてまいれ」


 王の命令にハッ、という短い返事をした騎士団長は、颯爽と王座の間から退室していく。


 ほどなくして戻って来た彼の背後には、ある人物の姿があった。



「我が娘にして、この国の第一王女。ミレーユだ。この者を勇者の妻として与えようではないか」


 父親に紹介を受けたその人物は、玉座の前にて優雅な淑女の礼をとった。


 その姿を見た俺が思ったことはただ1つ。


 ――うわ、これ絶対めんどくせぇ展開だ。



 そんな俺の胸中を知ってか知らずか、目の前の人物は頭を下げたまま言葉を発する。


「わたくしがミレーユにございます。ふつつか者ですが、どうか可愛がってくださいませ」


 自身でもミレーユと名乗ったその女性。


 サラサラの長い金髪に透き通った青い瞳。


 顔はもちろんのこと、服からアクセサリーまで何もかもが一級品。


 それらがまた彼女の魅力を引き立てていた。


 事前に聞いていた情報では俺と同じか、あるいは1つか2つ年下だったかな?


 どこか儚げな印象を受けるのもまた、男ウケが良さそう。


 だが彼女も、俺に嫌悪感を持っていることは丸分かりだった。


 さっきから目を合わせようともしないしな。



「加えて、お主には王国騎士団の指南役になってもらいたい」


「指南役、ですか……」


「魔王を倒したとはいえ、魔族のゴミ共はまだ多い。これからもお主には活躍の場を与えたいのだ。どうだ、破格の提案であろう? はぁーっはっはっは!」


 高らかに笑う王。


 その隣で、騎士団長が(けわ)しい表情を浮かべている。



 ……ふむ、やはりそうきたか。


 この国王は戦争を続けるつもりだ。


 魔族を根絶やしにするまで、止まらない。



 まあそれもそうだろう。


 平和になれば税を取れる理由が減るし。


 戦争に勝ち続けることで、王の威信を高めたい狙いもあるんだろう。


 この王様、意外と頭が回るらしい。


 というわけで俺の返答はもちろん――



「丁重にお断りさせてください」


「あい、分かった。――えっ、なんで!?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 出だしから面白い作品と思います、 楽しく読ませてもらってます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ