ジェネリック同士の喧嘩
とあるイギリスに素晴らしい功績を収めた貴族がいました。
その貴族は自らの純粋な遺伝子を残すために親近婚をくり返し、やがて自分の子孫が王家として君臨することを望んだのです。
しかしそんなことをすればいずれは近親交配による遺伝的な欠陥を抱えた人間が生まれるのも時間の問題です。
そこで貴族は違う方法を考えました。
一つは電子的なデータを残し後世に伝えること。
もう一つはクローン技術により同じ人間を生み出すことです。
貴族は最初はクローンを生み出しました。
「そうして君が生まれたのです。アルター。まぁ私と違って、不完全なようですが。」
「……」
やがて、技術が進歩し電子的な遺伝子データをコンピューターの中で完全再現できるようになったとき電子生命体としての人工人間が生み出されました。肉体を持たない方が朽ちないからと貴族の方は電子生命体になることを選んだそうです。
「そうして生まれたのがタイター、私なのですよ。」
「ボクが不完全ってどういう意味?」
「肉体を持たないからこその強さを持つ私に勝てなかった時点であなたにはもう先がないということです。」
「なんだって……!?」
「なにしろ、あなたの体は出来損ないですからね。アルターさん、我々のオリジナルである王家の人間は既に完成された存在だったんですよ。だからいくらクローンで血筋を増やしたところで結局は劣化コピーにしかならない。でも、我々は違います!我々こそが真なる人間の体現者なんです!」
「……うるさいよ。」
「おっと失礼。口が滑りました。」
「黙れよ!!」
「おやおや、怒らせてしまいましたか?ではそろそろ終わりにしましょうかね。」
「くっ……」
「あーあ、残念ですね。もう少し遊んでいたかったのですが。仕方ありません。それでは皆さんごきげんよう。さようなら。」
そう言って、タイターは消えていった。
そして、次の瞬間。
世界が崩れ始めた。