表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/407

第96話 凄くヤバイことに

 小さいショゴスは、スピード特化型なんだろうか?

 フルスピードのボートでも追い付きません。


 かなり陸が迫って来ています。

「あっ! 見てあそこ、港の所に奴がいるよ!」

 あたしがさっそく発見しました。港のある漁村に、ショゴスが2匹とも上陸していた。放っとけば、村人が襲われてしまいます。

 大変だ~~!


「ねぇ、あの小さいのを討伐してから、大きい方を対処してたら間に合わないんじゃないの?」

「むぅ……ミミエルの言う通りだな。じゃあ我が輩が先に大きい方を倒してこよう」

 そう言ってラビエルが、ボートから飛び立とうとした。

「待って先輩、ナナミィも連れて行った方がいいわよ」

 あたしが指名されたよ。

「え? 七美をであるか?」

「だって先輩って、ナナミィが一緒だとハリキって、とんでもないパワーを出すじゃないの」

 と言う訳で、あたしもラビエルと一緒に行く事になった。それにミミエルも。

「あんたも来るの?」

「先輩達だけじゃ心配だからね……」



「まあ、こちらは(わらわ)達に任せておけ」

「頑張ってねナナミィちゃん」

「ナナミィさん、ガンバですぅ」

 ポチャリーヌとムート君とリリエルちゃんが応援してくれます。

「我が輩は無視なのか?」

 ラビエルがむくれてるよ。

 あたしは不満げなラビエルを抱えて、魔法陣がある方向に戻って行きました。

 使徒なんだから、転移を使えば楽に移動出来そうですが、けっこう魔力を使うそうで、魔力節約のためにあたしが抱えて飛んで行きます。ミミエルはあたしの腕に掴まってるよ。


 魔法陣がある場所まであと1kmほどですが、実はさっきから嫌な気配がしています。むろん邪神がいるからですが、ショゴスの気配をたくさん感じます。

 3匹どころじゃない、10匹はいそうな感じです。

 1匹1匹はそんなに強くなさそうですが、これだけ集まるとヤバイです。

 強くないと言っても、全てSランクを超える、EXランクの化け物なんですが……


 見えて来ました。

 でっかいショゴスがいます。


 いや、でかすぎる?

 さっき見た時より、倍ぐらいになってます。見間違いかな?


「何だあれは? さっきより大きくなっておるぞ」

 ラビエルにも大きく見えてるって事は、本当に大きくなってるんだ!

「ちょっとあれ見て。触手で何か掴んでるわよ」

 ミミエルがあたしの腕を叩きながら、前方を指差しています。

 よく見たら、大ショゴスが小ショゴスを掴んでる。そして胴体の上に開いた口に押し込んでます。口なんてあったの?


「うげぇ! 食べてるっ! あれって共食いなの!?」

 あたしは思わず叫びました。

 周りにいる小さいショゴスを、次々に捕まえて食べてます。

「そうだ、奴らは魔獣や魔物、同族を喰らって力を付けるのだ」

「え? じゃあパワーアップしちゃうって事? それにあんなに沢山のショゴスは、どこから来たのよ?」

「例の魔法陣が稼働状態で、わいて出て来るんじゃないの?」

 ミミエルが冷静に分析してるけど、それっておおごとじゃない。


 食べられちゃたまらないと、小さなショゴスが逃げてる。それを大きなショゴスが、触手を伸ばして片っ端から捕まえてる。そして体の天辺の口にイン。噛まないで飲み込んでるけど、1匹食べるたびに体が大きくなってます。

 もうすでに、最初に見た時より6倍以上のサイズだよ。

 まるで小さな島だ、胴体だけで30mはある。でも触手の長さは変わらないので、おかしなバランスになってます。


「まずいわね、こいつの魔力値は20000もあるじゃない!」

 ミミエルがブレスレットの機能を使って、魔力値を測定したようです。

「ラビエル、なんとかなりそう……かな?」

「我が輩が元の姿に戻っても、最大攻撃力は15000も無いのだぞ。一瞬で葬るには全然足りないのである」

「えぇ~~~っ! た~~~いへんだ~~!!」

 大慌てのあたしは、頭を抱えて叫びました。

「落ち着きなさいナナミィ。攻撃するのに、魔力値を上回らなければならない訳じゃないのよ」

 そう言ってミミエルに、鼻先を掴んで無理やり口を塞がれたよ。

「ムゥ~~~!」


 さらに大きいショゴスは共食いをして、最終的には24000にまでなった。

 もう品切れになったのか、新しいショゴスは現れなくなりました。

 すでに大きなショゴスは40mぐらいになっていた。


「とは言え、これはまずいわね。これ以上大きくならないみたいだから、今の内にポチャリーヌ達と合流しましょ」

「うむ、陸地に向かった奴を討伐した頃合いであろう。さあ行くぞ七美」

「ムググ~~」

 行くと言われても、ミミエルに鼻先を掴まれてしゃべれないんですけど~。

「あ、ごめんね」

 ようやく鼻先を解放されたあたしは、ラビとミミを抱えてダッシュで飛んで行きました。遠くにリリエルちゃんの気配を感じるので、そこに向けて一直線です。


 フルスピードで飛びます。

 高速を出すために、翼をジェット機のように後ろに傾けて羽ばたいてます。こうすればマッハでも出せそうです。出せそうな気がします。

 なぜそうまでして急いでるかと言えば、他のみんなが心配というのもありますが、今凄い勢いでショゴスに追われています。


 しかも、ショゴス飛んでます。

 コイツ、海の邪神じゃなかったの?

 飛ぶなんて、聞いて無いよ~~~!


「ちょっとナナミィ、追い付かれちゃうわよ。もっと飛ばしなさいよ!」

「話し掛けないで。集中が途切れちゃう」

 魔力の大半を飛行に回しているので、体内の魔力の流れのコントロールに集中しなくちゃいけません。ひぃ~~~~。


「あ~~ダメだぁ~~、追い付かれる~~~!」


 振り返ると、もう真上にショゴスの巨体があった。

 ショゴスの裏側に口は無いけど、代わりに短い触手が無数にうごめいていた。


「「「キモっっ!!」」」


 あたしとラビ・ミミは思わず叫んだ。

 あ。キモイと言うと、ショゴスの奴は怒るかな?

「あの触手を使って、地面を移動するんだそうだ」

 ラビエルが冷静に解説してるけど、空気を読めよ。


 ここは急降下で回避しなくちゃ。横にくるっと回転して、そのまま落下するように高度を下げます。

「よしっ! 今だ!」

 くるりん。

 これで逃げられるぞ、と思ったら、ショゴスはあたし達を通り過ぎて行った。


「あれぇ?」

 呆気に取られるあたしをよそに、ショゴスは陸地に向かって飛んで行ってしまいました。あたしはもう半回転してもとの体勢に戻しました。

「助かったの?」

「ちょっと待ってよ、あっちってポチャリーヌ達が行った方じゃないの?」

 そうなのだ、ポチャリーヌ達が小さい方のショゴスを追い掛けてった方向なのだ。

「は……早く連絡しなくちゃ!」

 あたしは焦って、ブレスレットの通話機能を操作しました。

「あ……、あれは小さいショゴスを追ってったんじゃないの、食べる為に」

「ああ、そうか。うん? じゃあまだショゴスを討伐出来てないってコト?」

「それはまずいぞ。ムート達じゃ元の姿に戻っても敵わないぞ。急げ七美!」

 と言ってラビエルが、あたしの腕をペシペシ叩いてます。

「分かってるって! 急ぐよ!」

 あたしは再びフルスピードでダッシュです。



 それから少しして、ポチャリーヌ達に合流しました。先ほどの港から少し内陸に入った所に、ボートに乗って空中に浮かんでいました。

 みんな無事だったけど、ぼーぜんとしてたよ。

「なんかすっごいでっかいのが、食べてったですぅ……」

「おい、何であんなに大きくなってるのだ?」

 どうやら小さい方の討伐を失敗した所に、あの大きなショゴスが現れて、小さい2匹を食べて行ったみたいです。


「凄いスピードで向こうに飛んで行ったよ。確かあの方角には王都があるんじゃ……」

 と言ってムート君が漁村から内陸のずっと先の方を指差しました。

「なに? ちょっと調べてやる」

 ポチャリーヌはブレスレットから地図を呼び出して、あれこれ調べてた。


「フムフム、なるほどそうか……。ヨシ、この先40kmぐらいの所にかなり広い草原がある、そこで先回りしてショゴスを迎え撃とう」

「と言うわけで、フワエル様をお呼びしましたですぅ」

「移動はまかせるのですよ」

 リリエルちゃんがいつの間にかフワエル様を呼んでいた。ポチャリーヌといい連携してるな。


 フワエル様の力で、みんな40km先まで転移しました。

 そこは広々とした草原でした。

「おや、あんな所に街があるよ?」

 2kmぐらいの距離に、大きな城塞(じょうさい)都市があります。城塞都市と言っても歴史は古そうで、戦争が無くなって800年も経っているからか、城壁の大門の扉は取り払われ、壁も所々無くなっています。壁のない所からは新たな道が出来ており、城壁の外にまで街が広がっています。


「ああ、あそこはラスランド伯爵の領地だな。やはり思った通り警備隊もハンターも出て来ておらんな。それに領民を避難させてもいないようだ」

 あたしの言葉に答えるように、ポチャリーヌが望遠鏡をのぞきながら、楽しそうに言った。

「そうなんだ~~……って、やばくないのそれ? 邪神が来ちゃうんだよ!」

「たぶんショゴスはこの街を素通りするぞ。それが証拠に、かなり高い位置を飛んでおるだろう?」

 確かに、言われてみると高い所にショゴスの気配を感じます。


「この前言った事を覚えているか? ラスランド伯爵がショゴスを召喚しようとしていると。どうやら伯爵は王都を攻撃しようと考えておるようだな」

 恐ろしい話を事も無げに言うポチャリーヌ。

「それって反逆罪じゃないの? 重罪でしょ?」

 ムート君がいぶかし気に言った。

「フフン、そうなるだろうな。だがまだ攻撃はされておらんから、罪には問えないだろう。では、お主らはこのまま王都の手前に移動して、ショゴスを迎え撃ってくれ。(わらわ)とリリエルは、ラスランド伯爵の所へ行って、色々探って来よう」


「あんた達だけで大丈夫なの?」

 ミミエルが心配そうに尋ねた。

「任せておけぃ!」

「ですぅ!」

 リリエルちゃんの鼻息が荒いぞ。ポチャリーヌは相変わらず笑顔が恐い。そしてボートの出番はここまで。ポチャリーヌがブレスレットに仕舞っていきました。


「では皆さん、参りますのですよ~」

 フワエル様の呑気な口調は調子が狂います。人選ミスじゃないのかな?


 そしてあたし達は、訳も分からず転移するのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ