表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/406

第89話 邪神召喚

 邪神ショゴス。

 深い海に住む魔物だそうです。その力はEXランクに相当するそうな。

 あたしは自分のブレスレットで、魔物の情報を検索してみました。


 【ショゴス】

 該当無し

 もしかして:ショーゴ


 誰だよショーゴって? ……え? 魔物の名前?

 横で見ていたリリエルちゃんが教えてくれました。

 省吾や将吾じゃなかったのね。


「ヤバイんじゃないの!?」

「そうだぞ、(わらわ)も魔王時代に聞いた事があるが、1体現れたら国が滅ぶと言われていたぞ」

「え~~~?? どどどど、どうしよう~~~」

 国が滅ぶと聞いて、あたしはすごく慌てた。

「落ち着きなさいナナミィ。そんな事にならない為に、私達使徒がいるのでしょ?」

 と言ってミミエルが、あたしの尻尾を踏んづけた。

「そうかもだけど、ミミエルが言っても安心出来ないよ……」

「大丈夫なのですぅ。私がナナミィさんを守るのですぅ!」

「リリエルちゃんなら安心出来るね」

「ひどいぞ、あんた!」

 ミミエルが憤慨してるけど、冗談でも言わなきゃ、不安で死んじゃいそうです。


「まあまあ、ショゴスは邪神と言っても弱い方だから、世界が滅ぶ程じゃないぞ」

 なんて、ラビエルが気の抜けた事を言ってるよ!

「あんたさっき、世界が滅ぶかもって言ったじゃないの!?」

 あたしはラビエルの顔をグワシと掴んだ。

「まてまて、我が輩の話をよく聞くのだ、いてててて……」



「改めて説明するのだ。ショゴスとは下等な邪神で、ほとんど魔物と変わらないのだ。問題なのは、ショゴスは使役する事が可能な邪神だという事だ。クラーケンを使って召喚した何者かが、ショゴスを使って悪事を企てたなら、世界の危機となるぞ」

「え~~と……、つまりショゴスは、そんなに強くないと言う事?」

 あたしはそう思った。

「いや、下等だと言っても、その魔力はアヤカシ様を超えるぞ」

「え~~? やっぱりヤバイじゃん」

「それは大丈夫だろう。ショゴスは頭が悪いので、ポチャリーヌでも倒す事が出来るだろう」

 それを聞いてあたしはポチャリーヌを見た。

「本当に?」

「む? (わらわ)は超強い魔王なのだぞ」

 ポチャリーヌはむっとして、膨れっ面になっていた。


「それで? どうやって召喚を阻止するの?」

 ミミエルがラビエルに尋ねた。

「う~~む……。ポチャリーヌにもう一度潜ってもらうか……」

「無理言うな。潜るだけで精一杯だわ。攻撃までしようとすれば、ナナミィだけじゃなくて、バハムートまで連れていかなくちゃならないぞ。それに潜水球の大きさは変えられないから、バハムートじゃ入らないぞ」

「ならば、人間の姿のムートなら……」

「それも無理じゃ」

 確かに、二人で目一杯でしたもんね。

 そう言えば、あたしが一緒に行ったのって、ポチャリーヌが魔力切れになった時の予備燃料だったそうな。いや、電池かな?


「海面から攻撃出来ればいいのだがな……」

 と言うラビエルの言葉に、あたしは漠然と思い出した事があった。

「……海中を攻撃すると言えば、爆雷かなぁ?」

「それは何なのだ七美?」

 あたしがポツリと言った言葉に、ラビエルが食い付きました。

「海の中にいる敵を攻撃する爆弾よ」

 と言う説明に、今度はポチャリーヌが食い付いた。

「お主の居た世界の爆弾は、火薬を使うのだったな。トリエステでは火薬が無いので、魔法を使えばよかろう。(わらわ)の手に掛かれば雑作も無いわ!」

「さすがポチャリーヌですぅ」

「フフフ、そう褒めるなよ。……って、ここには材料が無かったぁ!」

「ポチャリーヌったら、馬の足ですぅ」

 リリエルちゃん、もしかして『馬脚を現す』って言いたいのかな?


「我が輩がもう少しましな案を考えたぞ。ジャイロがクラーケンの気を引いている内に、ポチャリーヌが魔法陣を消すのだ」

「消すのだ、って言っても、あの魔法陣は直径20mぐらいあったぞ。近付きすぎるとクラーケンに反撃されるだろうし、そんなのは不可能だ」

「ああ、そうか……」

 ラビエルはガッカリ。


 と言う訳で、クラーケンを攻撃するアイデアを募集中です。


「ミミエルは何かアイデアは無いのか?」

「そうねぇ……、さっきの先輩の案はよかったと思うの。爆弾は無理でも、石なんかを大量に投下したらどうかな?」

「おお! それだ!」

 なんと、ミミエルからナイスなアイデアが出ましたよ!


「ナイスアイデアだけど、海に大量の土砂を投入するのは大丈夫なんですか?」

 あたしはルカエルさんに聞いてみた。さすがにこれは、環境破壊になるかも。

「普段なら反対するけど、今回は世界の安全に係わる問題だしね、許可するしかないと思うよ」

 ルカエルさんが苦笑しながら言いました。


「背中とお腹は変わらないのですぅ」

 リリエルちゃん、もしかして『背に腹は代えられない』って言いたいのかな?



「ではまず、我が輩とミミエルとで岩を沢山集めて来るのだ。行くぞミミエル」

「は~~い」

 二人は陸地に向けて転移して行きました。

 そして待つ事20分、二人が帰って来ました。

「よ~~し、ぶち込むぞ~~! ……で、どのあたりかな?」

 一同ずっこけ。

『では我が潜って行って、場所を知らせますぞ』

 ジャイロさんのいる位置を魔法で探知し、そこをめがけて岩を投下するそうな。


 しばらくして、頭の中にジャイロさんの声がしました。

『海底に付きました。ここより東に50mの場所にクラーケンがいますぞ』

「よ~~し、こっちなのだ!」

 ラビエルとミミエルは、スイ~~っと飛んで行き、指示のあった場所の上に来た。そしてお互い離れて行って、30m程のスペースを作った。

「3、2、1、投下! なのだ!」

 ラビエルがそう言うと、二人の間の空間から、大量の岩が雪崩(なだれ)落ちて来ました。これは二人の持つ、魔法の収納空間に入れて来た物だ。ブレスレットからじゃなく、空中からも出し入れ出来るんだね。


 ドボドボドボドボ。

 ドパ~~ン、ドッパ~~~ン。

 ドザザザザザ……!


 あまりの量の多さに、激しい波が立ってます。

 岩は2~3m程の大きさの物ばかりですが、たまに5mぐらいの物も混じっています。まるで埋め立て工事のような光景です。

 世界を守るためとは言え、かなりの罪悪感を感じるよ。


 さて、海底ではどうなっているでしょうか?

 現場のジャイロさ~~ん?

『ハイ、こちらジャイロ。魔法陣はクラーケンごと埋まっておるぞ』

「やった! これで召喚阻止成功なのだ!」

「すごいですぅ~~。さすがラビエルさんですぅ~~~!」

「やったねラビエル様!」

 リリエルちゃんとムート君も喜んでるよ。今回はラビエルとミミエルが大活躍だ。


「でも、罪の無いクラーケンが埋まって、ジャイロさんの縄張りが、台無しになっちゃいましたけどね」

 みんなが喜んでいる所に、水を差すプレシエル様。

「うう……、だってしょうがないのだ。ショゴスなんて呼び出されたら、大変な事になってしまうのだ~~~!」

 ラビエルが涙目で言い返しちゃってる。

「ああ、別に責めてる訳じゃないですよ。それよりクラーケンはどうします?」


「あの……、私の歌で正気に戻せるかもです……」

 遠慮がちにリップが言いました。そう言えば、リップの歌でクラーケンを呼び寄せた事がありましたね。

「なるほど~、リップが歌でクラーケンを正気に戻せれば、魔法陣が完成しなくて一件落着だね」

 ここまで言って、あたしは気付いてしまった。


「あれ? じゃあ……最初からリップに歌ってもらえば、岩で魔法陣を埋める必要は無かったんじゃ……」

 そうなのだ、操られているクラーケンさえ正気に戻せばよかったのだ。


「え? 我が輩らがやった事って無駄なの?」

 ラビエルが呆然として言った。

 みんなも、何て言っていいのか、シーンとなってしまいました。

「も~~先輩ったら……ムグゥ……」

 あたしは先手を打って、ミミエルの口を塞いだよ。絶対にこの子、余計な一言を言うからね。


「なんかすみません……、私が早く気付いてたら……」

 リップが申し訳無さそうに言いました。

「お主らは忘れているようだが、潜水球にリップは入らないぞ」

「……あ。あぁ~……」

 そうでした、リップのサイズでは無理なのでした。それに、少なくとも100mぐらいの距離に近付かないと、歌の魔力が届かないそうです。



『話している所に悪いが、クラーケンの奴が、岩をどかして動き出したぞ』

 ジャイロさんが知らせてきてくれました。

「なんだって~~?」

『魔法陣の空白だった場所に、何か文字を書いているな。あ、魔法陣がぼんやりと光り出したぞ』

「それって、魔法陣が起動したのか? 魔法陣の文字はどうなっておる?」

 ポチャリーヌが額に指を当てて、ジャイロさんに問い掛けてた。

『ダメだ、土砂が舞い上がって見えなくなった』

「クソっっ! もうこうなったら、ラビエルが本来の姿に戻って止めて来るしかなかろう!」

 ポチャリーヌがラビエルに叫んでるけど、本当にラビエルで大丈夫なの?

「今の我が輩では本来の姿に戻っても、昔の力の十分の一ぐらいしか出せないので、1000mもの深海は無理なのだ」

「それもそうか……」


『魔法陣から何か出て来たようだ。あれは……触手か?』

 ジャイロさんが実況してくれます。

「まずい! ジャイロよ、早く逃げるのだ! 我々もここを離脱するぞ!」

「分かった!」

 ポチャリーヌはそう言うと、ボートを全速力で走らせた。

 ルカエルさんとプレシエル様は……、ボートより速かった。



 海底1000mと言うけど、禍々しい魔力が増大しているのが、ここからでも分かります。どす黒い魔力とでも言えばイメージ出来るでしょうか?

 その魔力が、クラーケンを飲み込んで行きます。



 本当にこれで、世界が終わっちゃうの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ