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第61話 海の使徒ルカエル

 昨日は自称ムート君の婚約者、ラリティア・ラリムーナのおかげで大変な目に遭いました。ワイバーンのディックなんか、足や腕に吸盤の跡が付いていましたよ。頭にもコブが出来たけど、これは捕獲レースのためなので、しょうがないです。


 あたしも魔力を使い過ぎて、飛べなくなりました。なのでシードラゴンの保護施設にみんなでお泊まり会です。

 と言っても、お客のための部屋が少ないので、アドリアスとシエステは二人で一部屋を使い、あたしとムート君、それにラビエルとミミエルの4人で一部屋でした。若い男女が同じ部屋で寝たけど、ムート君は紳士なので安心して眠れましたよ。

 まあ、ドラゴンと馬の間で、間違いが起こるはずもありませんがね……



 朝食は食堂にて皆で食べます。

 リップが寝ぼけまなこで起きて来たけど、この子はブラジャーをしないで寝るんだね。メイドさんが慌ててリップにブラを付けていた。


 ルージュはイリヤさんと一緒の部屋で暮らしているんだそうです。そして、旦那様のイリヤさんが、毎朝ルージュのブラを付けているのです。

 なにそれ? うらやまし……いや、なんでもありませんよ。


「ねえあなた、ちょっと胸の位置を直してくれない?」

「ああ、いいよ」

 イリヤさんは、ルージュのブラのカップの横から手を入れて、おっぱいの位置を直してあげた。ルージュが仕上げに、自分で胸を左右に振って「よし、OK。ありがとう、あなた」と言った。そして二人で見つめ合って微笑んでいました。


「幸せかっっ!?」


 バンッと立ち上がって、本音を吐き出すあたし。

 朝っぱらからドン引きするみんな。

「まあ、いいではないか。七美のおっぱいなら、我が輩が触って……あ~痛ててて」

「誤解を招くような事を言うな~~~!!」

 今日はいつもより強く、頬をつねってやった。


「この二人は、いつもこんな感じなんですか?」

 あたしとラビエルを見たアドリアスが、隣に座るミミエルに質問した。

「まあね……仲が良いのか悪いのか……」

 と言って、ため息をついた。



 朝食が終わった時に、海からお客様が来ました。


「おや? 今日は賑やかだね。隣国の王子様と女神様の息子が居るとは」


 初対面の使徒様、ルカエル様です。イルカの姿をした使徒様なので、陸地には上がって来れませんね。シードラゴン達が、海と行き来するために作られたスロープから声を掛けられました。

 話に聞いていた通り、背中には小さな翼が付いてます。海の中では役に立たないので、体にピッタリ張り付いています。これは、使徒のシンボルとして付いてるのかな?

 と思ったら違った。ぱっと翼が開いて羽ばたき、あたしの所まで飛んで来られました。イルカが空を飛ぶなんて、不思議な光景だ!


「やあ、初めまして。ボクが第5使徒のルカエルだよ。君がナナミィちゃんか。ペギエル様の話の通り、可愛い女の子だね」

 そう言って、右手を……じゃなくて、ひれを差し出されました。あたしは跪いて、そのひれを握って握手をしました。


「初めましてルカエル様。あたしがナナミィ・アドレアです。お会い出来て光栄です」

「そんなに畏まらなくてもいいよ。様付けはやめて欲しいな。ラビエルと話すぐらいに、気楽に接してよ」

「いえそんな……ならせめて、ルカエルさんと呼びますね」

「そうなの? まあそれでもいいか」

 ルカエルさんは、ちょっと残念そうに言った。


「ああそうそう、今日来たのはリップちゃんに用事があったんだ。ここから近い海域に、クエレブレが出没したとの情報があったんだ。こいつを何とかするまで、シードラゴンへの通知活動はお休みだよ」

「ええ~~?」

 リップはがっかりしたのか、不満げに言った。


「ねえ、クエレブレって、どういう魔獣なの?」

 あたしはこっそり、ラビエルに聞いた。

「うむ、クエレブレというのは、海の魔獣だが、海中だけじゃなく、空も飛ぶ厄介な魔獣なのだ。体が20m以上もあるのに、姿を消す事も出来るのだな。気配が探れなくては、見付ける事も出来んぞ」

「へぇ~~、それはやっかいだね」

 あたしは呑気に答えた。取り敢えず、関係無いみたいだし。

「そこで七美の出番だ。七美が現場に行って、魔獣の気配を探るのだ!」

 関係あった!

「たった今ペギエル様より、討伐隊に指令があったのだ。我々でクエレブレ討伐をするぞ!」

「おお! それは心強い。まずはクエレブレの気配を探ってくれないか?」

 ルカエルさんは感激してますが、そう上手くいくのだろうか?


 あたしは目を閉じて、魔獣の気配を探ってみました。皆に注目されて、ちょっと恥ずかしいけど、頑張ってみました。


「魔獣の気配は感じるけど、そこら中に感じて、クエレブレがどれだか分かりません。会った事が無いので……」

 そうなのだ、会った事も無い相手の気配なんて、分からないのだ。

「なるほど、相手の魔力の質とかが分からないと、特定出来ないのか……」

「すみません……」

「いいよいいよ、無理を言っちゃったね」

 お優しいルカエルさんの言葉に、救われます。ミミエルなら「え~~? 分かんないの?」とか言いそうだし。


「え~~? 分かんないの?」

 予想通りの事を言うミミエル。くそ、殴ってやりたいぞ。

「じゃあさ、魔獣に襲われてる、動物や魔物の気配は探れないの? 例えばそれがシードラゴンだったら、リップが分かるんじゃない?」

 おおっ! ミミエルとは思えない、ナイスな意見だ。


「ちょっとナニ? たまには良い事言うじゃん、みたいな表情は?」

 ああ……みんな同じ事考えてたんだね……思わず顔に出ちゃったんだ。


「そうだな……襲われてる魔物だけじゃなく、戦っている魔物の気配も探るのだぞ。この前のクラーケンも、クエレブレと縄張り争いをするそうだからな。七美もクラーケンなら分かるだろう?」

「そ……そうね、それなら分かるかも……」

「じゃあ私は、シードラゴンの気配を探ってみる」

 あたしとリップは目を閉じて、気配に集中してみた。


「それはいいんだけど、二人共ずっとそこで座ってるつもり? そしてナナミィは、何でリップの手を握ってるの?」

 などとルージュに水を差されてしまった。

「いやほら、乙女二人が力を発揮する時は、手をつなぐのがお約束だし」

 と、言い訳がましく言ってみた。本当は単に、リップを触りたかっただけなのよ。

「へ~~、そうなんだ」

「そういうものなのか?」

「すごいよナナミィちゃん!」

 誤摩化せたようだ……

「どうせ、お触りしたかったんでしょ」

 鋭い事を言うミミエル。うるさいよ。


 結局、玄関で座り込むと邪魔になるので、リップのお部屋に行く事になりました。

 わ~~い、女の子のお部屋だ~。

 いや、あたしも女の子のお友達のお家には遊びに行った事はありますが、シードラゴンのお部屋は初めてなんだもん。どんな可愛いお部屋なんだろう?


 が、思ったよりシンプルだった。

 ドレッサーにはヘアブラシが一つだけで、ベッドはシードラゴン用の大きな物です。うう……ガーリーさが足りない。つまり、女の子らしさが足りませんってコトですよ。ぬいぐるみの1つも置いてないし、今度プレゼントしてあげようかな? あ、でも可愛い箱がいくつも置いてあった。


「これ、ちょっと見てもいい?」

「いいよ~」

 開けてみたら中には、たくさんのブラジャーが入っていました。あと、リボンとかシュシュなんかが入ってたけど、ブラはけっこう大きくて、人間だったら付けるというより、体に巻く感じになりそうな物です。シードラゴンには肩が無いので、肩ひもは付いていませんし、付けたまま海に潜るので、水着素材で出来てます。

 あたしは手に取って、まじまじと見つめてしまいました。


「それ可愛いでしょ? こっちはリボンいっぱい付いてるのよ」

 リップがいくつも広げて見せてくれた。みんな可愛いぞ。

「いま付けてるのも可愛いよ。触ってみてもいい?」

「いいよ~」

 話の流れで、サラッとお願いしてみた。

 これで、リップの可愛くて小さなお胸を、モミモミ出来るぞ~~。


「……七美は仕事を忘れているんじゃないか?……」

「……そうですね、凄くにやけていますね……」

 ハッ! しまった、ラビエルとムート君もいたんだ。

 可愛いおっぱいを触ってもいいじゃない、ドラゴンだもの。



「あれ?……これ、シードラゴンの気配? すごい興奮してるような……」


 なんて突然リップが言い出した。

「来たな! よしっ、七美はどうだ? 何か感じるか?」

「ちょっと待って、う~~……むむむ……む? むむ?」

「……どうやら七美はだめみたいだな。シードラゴンの方に向かうぞ!」

「そうですね」


 あたし達は再び食堂に集まりました。

「シードラゴンが、襲われてるかもしれないの」


 リップの報告に、クエレブレが出たと判断して、現場に転移で向かう事になりました。海の事なので、ルカエルさんが運んでくれます。

 事態は切迫してます。つまり超ヤバイかもしれないので、今すぐ転移します。

 ちなみにミミエルは、万が一の時のためと、王子様達の護衛に残ってもらいます。



 あたしとラビエルとムート君、それにリップがルカエルさんの周りに集まり、「行くよ」と言う声を聞いた途端、景色が変わり、全員海の上に転移ました。

 あたし達は飛べるので、空中に留まり、リップは落ちて海に入って行きました。そしてそこで見たのは……


 空中を泳ぐ、巨大な魔獣だった!


 魚のような恐竜なような顔で、口には鋭い歯がずらりと並んでいた。そして胸びれがある所には、まるでドラゴンの翼のようなひれがあった。背びれもカジキのような大きな物だし、胴体も長細いウナギのようだった。しかも、どう見ても20mなんてサイズじゃないよ。25mはありそうだよ!


 それが、海面を泳ぐ魔物を攻撃していたのです。

 その魔物は、やはりシードラゴンです。ルージュよりも少し大きなシードラゴンが、クエレブレに向けて、水の魔法で反撃しています。


「チークお姉様……チークお姉様なの!?」

 戦っているシードラゴンを見たリップが、驚いて叫んだ。


 お姉様って……、リップのお姉さんだったのか~~~!

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