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第24話 ワイバーン再び

 ワイバーンが暴れてから2日が経ちました。


 再び討伐に向かう際、皆で一緒に行けるよう、関係者全員でムート君の家に集まってます。空中神殿じゃなくて、ムート君の自宅なのは、学校に行き易いからです。それに、ワイバーンがいつ現れるのか分からないので、ここでお泊まりするのです。両親の許可はバッチリ取ってあるし、お泊まりセットもブレスレットの中に入れて来たので安心ですよ。

 今ここにいるのは、あたしとラビエル、ムート君とミミエルのペア。それに、サリエルちゃんとフワエル様です。


 討伐のためにお泊まりなんて建前で、本当の目的はサリエルちゃんと仲良くする事です。なので、あたしとサリエルちゃんとミミエルの3人で、おしゃべりの真っ最中です。

 使徒様は服を着ないものですが、サリエルちゃんは珍しく服を着てます。昨日はエプロンドレスでしたが、今日は可愛い甘ロリ風のドレスです。最高です。ポイント高しです。サリエルちゃんは結構な衣装持ちで、20枚ぐらい持っているそうです。

 で、それらを床に広げ、あたしとミミエルとで、サリエルちゃんを着せ替えてキャピキャピやってるのです。


「ちょっ……これやばいよ。超かわいい~~!」

「本当ね~~。あ、このフワフワしたのも可愛いよ」

「あ~それは、ドロワースだね。あれ? 今まではいてないよね?」

 ちょうど今サリエルちゃんは裸だけど、下着は付けてなかった。

「ああ、それはペギエル様が、服を着るなら下着も付けなさいってくれたんだけど、尻尾の出し入れが面倒で、使ってないの」

 だよね~、パンツの穴に尻尾を通すのって、面倒くさそうだしね。知らんけど。

「そう言えば、ドラゴンってパンツはくの?」

 サリエルちゃんがあたしの尻尾を見てたずねた。

「はかないね~。そもそもドラゴンは、服を着ないのが基本だしね」

「ねえねえ、今度はこれ着てみてよ~」

 ミミエルが、スカートの長いドレスを持って来て、はしゃいでいた。


 などと女の子3人で、かしましくやってたら、男性陣は隅で微妙な顔をしてた。そりゃそうか、自分達の事ほっぽり出して、ファッションショーしてるからね。

 でも大丈夫だよ、別にあなた達の事、忘れたわけじゃないからね。


「さて、女の子だけで騒いでてもしょうがないね、ほら、ムート君達もおいでよ」

 あたしは、手持ち無沙汰な男子に声を掛けた。

「ねえ、ナナミィは今、人間用の服持ってるよね? よ~し、ムートも着飾ってあげよう~!」

 ミミエルがとんでもない事を言いだしたよ。やめたげて。


「ははは……、すみませんねぇフワエル様、騒がしい連中で……」と、ラビエル。

「いいのですよ~。皆さん可愛らしくて」

 本当にフワエル様はマジ天使です。でも、ムート君が女装させられそうなのは止めないんですね。あたしも止めないけど。


「ほ~らほら、君にはこの可愛いワンピースが似合うよ~~」

 ミミエルがフワフワ浮かびながら、あたしの出したピンクのワンピを持って、ムート君に迫っていた。

 ムート君もさすがに「それはちょっと……」と言って困ってた。



「あなた達は、緊張感がありませんねぇ……」


 ミミエルの後ろに、いつの間にかペギエル様がおられました。ミミエルはギクリとして、笑顔のまま固まっていたよ。

 あたしはミミエルからワンピを取り返して、ブレスレットに仕舞った。


「まあ、仲が良いのはよろしいのですが、気が緩み過ぎですよ」

「ひょっとして、ワイバーンが現れたのですか?」

 ミミエルが、表情を引き締めて聞いた。

「ええ。ついさっき、ワイバーンの魔力を探知しました。ここ、ドラゴニアに向かっているようです」

 ペギエル様の言われる衝撃の事実。この街に来るって?

 もう、お泊まりなんて言ってる場合じゃありません。


「ではさっそく準備して下さい。ラビとミミには、場所を教えますよ」

 ペギエル様はブレスレットから、透明なタブレットを取り出しました。この前みたいに振ってデータを送るのかと思ったら、タブレットでラビエルとミミエルの頭をコツンコツンと叩かれました。あれでもデータが送れるもんなの?

「もしかして、そうやると、場所データを直接頭の中に送れるのですか?」

 あたしは、恐る恐る聞いてみた。

「まさか。二人の緩んだ顔を見てたらついね」

 あ。単に喝を入れてただけでした……


 さて、出撃の前にあたしとムート君は、変身しないといけません。ムート君は竜王バハムートに、あたしは人間の七美に。


「リゲイル」と唱えると、変身開始です。翼と尻尾が引っ込み、お腹がきゅっとくびれて体型が変わります。一瞬で髪の毛が伸びてきて、かつての髪型になって行きます。最後に胸からおっぱいがポヨンと飛び出して変身完了。

 イメージとしては、魔法少女の変身シーンみたいですよ。

 ムート君は、変身すると服が破れるので、全部脱いで全裸になってます。


 ちょっと待って。今あたしも裸の人間の女の子なので、やばい事になってる。あたしはドラゴンだし、ムート君も元ドラゴンなので、裸でも気にしないだろうけど、元人間のあたしは気まずく感じちゃう。

 ムート君はこっちをちらっと見たけど、そのまま庭に出て行った。分かってはいたけど拍子抜けだね。ちょっとは、あたしの『女の子』な所を意識してほしいな……


 庭に出たムート君も変身だ。呪文を唱えるとズドンとでっかいドラゴンになった。あたしとは逆で、首と尻尾が伸びて頭の形も変わり、背中から翼が出て来て、バサっと広がって変身完了。バハムート様になった。


 あれ? そう言えば今まで『バハムート様』と『様』付けしてたけど、正体がムート君だと分かったのに、『様』付けした方がいいのかしら?

 いや、でもあのムート君だしなぁ……

 なんて考えながら着替えをしていたら、ミミエルに不審がられた。


「なにぼけっとしてんの?」

 ミミエルはあたしの顔をのぞき込んで言った。

「いや、バハムート様の呼び方は、今まで通りでいいのかなと思って……」

「は? どういうこと?」

「だって、ムート君は『君』なのに、姿が変わると『様』なのは変かなと」

「じゃあ、どっちもムート君でいいじゃない」

 まあ、そうよね……

「ほら、早く準備しなさい」

 そう言ってミミエルは、あたしの鼻の頭をつついた。


 今回の衣装は水着ではなくて、上は長袖のセーター、下は短いプリーツスカート、それに足にはブーツです。ラビエルがあたしのブレスレットの中から出して来た物だけど、鏡で確認してみれば……これはチアリーダーだ! 

 見た事の無いセーターが混じってると思ったら、このスカートと組み合わせると、チアのコスチュームになるのか。

 しかもこのスカート、テニスの時にはくスコートだよ。


「これまさか、あんたの趣味なの? ラビエルさま~~?」

「いやいや、動き易い服と言えば、これだろう?」

 あたしに顔を掴まれて、ラビエルが言い訳した。まったくもう!

 それを見て、ミミエルは溜め息をつき、フワエル様は微笑んでおられた。


「ふ~~ん、ラビエル君そんな趣味があったの?」

 サリエルちゃんが小首を傾けて尋ねた。もっと言ってやって。

「いやいやいや……」焦るラビエル。見ていて面白いな。


「い・い・で・す・か? 皆さん」


 ペギエル様の目が吊り上がってる。こ……恐いです。

 一同、ぴしっと固まったところで、ラビエルとミミエルが並んで手をかざした。


 その瞬間、景色が一気に変わった。あたし達は郊外の街道を少し外れた、草原のただ中にいた。




 頭上には青空が広がり、小さな綿雲が、のんびり浮かんでいます。


 顔には爽やかな風が当たっています。


 こんなにきれいな風景なのに、ピリピリした気配が近づいて来る。


 バハムート様ことムート君も、牙をむき出し低くうなってます。普段のムート君からは想像出来ない姿に、いやがおうに緊張感が増して来る。


 遠くにあったいやな気配が、どんどん近づいて来た。


 空の彼方にあった黒い点が、みるみる間に大きくなって行きます。

 ここまで近づくと、バッサバッサと羽ばたいてるのが分かる。そう言えばワイバーンって、テレビで見た怪獣に似てるな……、何だったかな?


「ギャオーーーーーーーーース!!」


 そうそう、ギャオスだ。

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