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第21話 激闘、バハムートVSワイバーン

 ウサミィを着せ替え人形にして、何着もブラウスやドレスを試してみました。

 自分の物より、人の物を選んであげる方が楽しいのは、なぜなんだろうね。大好きなウサミィのために、頑張って可愛いのを選んだよ。

 あたしとグレースもせっかく来たので、あたしは新しいリボンを買い、グレースは大人っぽいブラを買いました。


 買い物も終わり、あたし達は学校の近くで解散しました。


「じゃあまた明日、学校でね~」

「うん。ばいば~い」

 ウサミィは大きな紙袋を抱えて、空を飛んで行き、グレースは獣人らしく、凄い勢いで走って帰りました。




 さて、あたしはと言うと、バハムート様とワイバーンの事が気になります。ワイバーンはここから東に20kmぐらいの距離にいるようです。その辺りは町外れで、ほとんど家が無い場所です。

 そこにワイバーンの恐ろしい気配を感じる。魔力が変動しているようで、どうやらドラゴンブレスを使っているみたいだ。

 バハムート様の気配が高速で接近してるのも感じる。あの辺りで一戦やらかすようだ。待機って言われたけど、見に行ってみようかな……。バハムート様の勇姿なら、ぜひとも見てみたいしね。


 それに……例の疑惑は、まだ晴れて無いからね……


 とは言え、実際問題として今日の現場は危険すぎかも? 場所もよく分からないし、下手したら戦闘に巻き込まれるかも?

 魔力の気配を探ると、2つの魔力がぶつかってる感じがするし、ムリそう……


「ああ、こんな所にいたのね、ナナミィ」


 気が付くとミミエルが、あたしの正面に浮かんでいた。今日はバハムート様に付いていなくて大丈夫なの?


「あなたの力も必要なのよ。バハムートを助けてあげて」

 慌てたミミエルが、あたしの服を引っ張って訴えた。

「え? えぇっ、どういうコト?」

「さあ、早く行くわよ!」

 あたしは、有無を言わせず連れてかれた。




 学校の近くの住宅地からいきなり、郊外の景色になった。

 自分がどこにいるのか理解する前に、目の前が真っ赤に染まった。

 そして、でっかい鳴き声が……!


「ギエエェエェ~~~~~~~~!!!!」


 あたしの前にある草原が、炎に包まれてるよっ!

 そして空をにらむバハムート様。

 上空には、地上にブレスを放ちつつ旋回するワイバーン。


 目の前で繰り広げられるのは、怪獣大決戦だ~~~!!

 バハムート様が飛び立とうと、翼を羽ばたかれた時、風圧であたしは飛ばされてしまいました。

「きゃ~~~~!」

 悲鳴を上げて転がるあたし。


 バハムート様は気付いて振り返りました。

「ナ……ナナミィちゃん? どうしてここに?」

 彼の動きが一瞬止まった。

 それを見逃さなかったワイバーンが、口を開けて迫って来た。


 やばい! 狙われてるのあたしじゃん!!


 ワイバーンの口の中は、恐ろしい牙が並んでる。それがあたしに食い付こうとしてます! いきなり絶体絶命です!!

 え? なんで? さっきまでお買い物してたのよ、あたし。


 バハムート様はとっさに、ワイバーンの前に立ち塞がり、その牙を受け止めた。


「は……早く逃げて、ナナミィちゃん!」


 ワイバーンは、自分の牙を受け止めた手を、ギリギリと噛み砕こうとしてます。ワイバーンは知性ある魔物だと言うのに、その目はまるで野獣のように理性が感じられません。我を失っているかのようです。


「ちょ……ちょっと早く逃げなさいよ!」

 ミミエルがあたしの背中に、飛び蹴りをかましてきた。


「あんたが連れて来たんでしょうが~~~!」

 あたしはミミエルへの怒りで、少しだけ復活した。そして急いでその場を離れるため、低空で飛んで行った。


 あたし達が離れたのを見届けると、ワイバーンにかじられてる手を引いて、そのまま地面に叩き付けた。ズドンと頭から突っ込んでいった。

 しかし敵もさるもの、ワイバーンは長い尻尾を振り回して、バハムート様を弾き飛ばした。


「ちょっとミミエル! あたしは待機って言われてるのに、何で連れて来たのよ? バハムート様の足手まといになってるでしょ~が!」

 あたしは一気に捲し立てて振り返ってみたら、ミミエルが転がっていた。ワイバーンが地面に激突した時の爆風で飛ばされたみたいだ。

「ななな……なにやってんの? しっかりしなさいよ~~!」

 慌ててUターンして、ミミエルをガッシリ掴んで脱出した。


「そうだ! 今回は敵が強くて、バハムートも苦戦してんのよ。だからナナミィも手伝ってよ」

 ミミエルはあたしに、逆さに抱えられたまま言った。

「ムリムリムリ! あんなの怪獣大決戦じゃないの!」


 上を見れば、バハムート様とワイバーンが相手を牽制しながら、ぐるぐる飛んでいますよ。お互いにブレスの応酬をしながら。


「どうやってあんなのに参戦すんのよ!」

 あたしは上空を指差して叫んだ。

「じゃあ、あんたの大好きなバハムートが負けちゃうよ?」

「うぐぅ……」

 あたしは言葉に詰まった。

「毎日何のために訓練してんのよ。こういう時のためでしょう?」


 そこまで言われたらしょうがない。あたしはドラゴン用の服を脱いで、ブレスレットからスク水を出した。へたにドレスなんて着たら、燃やされそうなんだもん。

 そして『リゲイル』と唱えて人間に変身した。

 あたしはいそいそと水着を着て、ブーツを履き、グローブをはめ、肘とひざパッドを付けた。可愛くないけど、戦闘準備OKだ!


「ドラゴン・ウイング!!」

 背中からドラゴンの翼を出して飛び上がった。


 こういう時は、相手より高い位置にいた方が有利です。ワイバーンは図体が大きいので、動きは素早くない。こちらは小さく、機動力でまさるので撹乱してやります。その隙を突いて、バハムート様が攻撃すれば倒せるはず。


 牽制だけなら、今のあたしでも出来るよ。

 ヨシ、これで行こう!


 あたしはワイバーンの真上に来ました。ブレスではたぶん効かないでしょう。それなら物理攻撃だよ!

 ここからワイバーンまでの高低差は100mぐらいある。全力で魔力弾をぶちかませば、倒せないまでも混乱させる事ぐらいは出来るかも?

 それにはまず、タイミングを合わせないといけませんね。よけられたり、下手をしたらバハムート様に当たってしまいそうです。フレンドリーファイアです。


 なので、下を見て攻撃のチャンスを伺います。するとどうでしょう、バハムート様が押されてるじゃないですか。ワイバーンのブレスの方が強力で、バハムート様は近づけないでいます。


「ああっ、危ない。くそっ、もうちょっと……ああ~~」

「なにやってんの? 早く攻撃しなさいよ」

 あたしが一人でエキサイトしてる所に、ミミエルがやって来た。

「なに言ってるの、闇雲に攻撃したって、効かなきゃ意味無いでしょ? そうだ。ミミエルの人形で攻撃すればいいんじゃないの?」

「無茶言わないでよ。私の大切な人形よ。それにあんな大きな魔物に、通用する訳ないでしょう」


 などと、あたし達がギャーギャーやってたら、バハムート様に気付かれた。


「なっ……! 君達なにをやっているんだ! ここは危険だ!」


 バハムート様は上を見上げて叫びました。そしてそれが一瞬の隙になり、そんな隙をワイバーンが見逃すはずもなく、襲いかかって来た。勢い良く突進して来て、あろう事かバハムート様に掴み掛かったのです!

 飛んでいる時は、手が使えないんじゃなかったの? 自分と同じぐらいの大きさのワイバーンに組み付かれて、バハムート様は倍増した重さに耐えるために、必死に羽ばたいてます。

 しかもワイバーンのやつ、首の辺りに噛み付いてるよ。


「きゃ~~~! ちょ……バハムート様、やられてるっ!!」

 あたしはミミエルを引っ掴んで叫んだ。

「お……落ち着きなさい、これしきじゃやられないわよ」


 バハムート様は、片手でワイバーンの頭を掴んでます。彼の強力なかぎ爪に耐えられなくなったのか、噛み付きをやめた。

 でも、至近距離からブレスを放ちやがった! バハムート様にはかなりのダメージだったのか、ガクッと高度が落ちた。


「ナナミィがワイバーンを攻撃して! 奴の注意がそれた所で、バハムートを助けるから」ミミエルが慌てて言った。

「わ……わかった!」

 あたしは溜めていた魔力を手の平に集めています。ワイバーンがバハムート様から離れた所を狙うのです。

「今だっっ!」ミミエルがあたしのお尻を叩いた。

 あたしは振りかぶって、魔力弾を全力で投げつけた。

「どりゃ~~~~~!!」

 魔力弾はワイバーンの頭に吸い込まれるように命中。ワイバーンは体勢を崩した。


 そのすきに、ミミエルがバハムート様のもとに飛んで行った。

「ムート・リゲイル!」

 そう叫ぶと、バハムート様の姿が消えた。


 はっとして目を凝らすと、そこには小さな人間の少年がいた。


 それは、気を失っているムート君だった。

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