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第20話 疑惑のバハムート様

 ムート君の教え方が良かったのか、ミミィはすぐに飛べるようになりました。


 おかげで、ある疑問がでてきたよ……


 バハムート様とムート君は同一人物なのか?

 名前を見ると、共通の部分があるしね。それに、ムート君はドラゴンに詳しすぎます。ムート君の前世がドラゴンならば、すべて納得出来ますよ。


 さて、本人に聞けば答えてくれるだろうか?

 本人も含め、周りの誰も言わないので、秘密にしてるのかな?


 ……ならば

 探ってみるべし!!



 と言う事で、いま街にいます。50mぐらい前をムート君が歩いていて、あたしはこっそりと後をつけています。


 そう、ムート君の住んでる家を探すのです。


 なぜ歩いてるかと言えば、空を飛ぶと魔力を探知されるかもしれないからです。本当にムート君がバハムート様なら、あたしの魔力が分かってしまうからね。

 学校から出て、あたしの家の反対方向に歩いてます。こちらは高級住宅地のある方向です。遠くに大きな住宅が点在する、なだらかな丘が見えてます。なんとかヒルズと言った雰囲気です。

 一人暮らしをしてるって事だけど、お金持ちなんだろうか?


 いやそんな事より、初対面の時にラビエルと親しそうにしてたぞ。もうこれ、絶対怪しいよね? 同一人物確定じゃね?


 なんて事を考えつつ、尾行をしてると、ムート君が曲がり角を曲がった。見失わないように、急いで角まで行ったけど、姿が見えない……!

「なぁっ! ど……どこ?」

 思わず声に出してしまった。

 あたしは近くをウロウロ探したが、影も形も無かった。


 逃げられた……のか?



・・・



 今日は空中神殿で、ミミエル相手の戦闘訓練です。

 戦闘と言っても、ミミエルと直接戦う訳じゃなくて、ミミエルが操るパペットと戦ってます。なんかよく分からない格好の、人形みたいなのです。


「ほらほら~~~っ。後ろからも行くよ~~、てぇーい!」

「そりゃ~! ていっ! だぁっ!」


 襲いかかって来る人形相手に、魔力弾を放って反撃します。人形と言っても人の形の物と、昆虫みたいな形の物です。それらを、どかばか弾き飛ばし、駆け回ってます。

 今は人間の姿ですが、激しく動くため、ドレスじゃなくてスクール水着に制服のジャケットを着てます。色が同じ紺色なので、そんなに変じゃないかな?

 そんなあたし達を、バハムート様は楽しげに見てます。


「今日はここまでとしましょう」

「おつかれ~~……」

 あたしは疲れて座り込んでしまった。


 あたしはバハムート様の方をちらっと見て、さり気なく聞いた。

「バハムート様は、訓練とかはしないのかな?」

「彼はとても強いので、訓練は必要ないのよ」

「そう! そうよね。バハムート様は最強よね!」

 と言って、うふふとほくそ笑むあたし。

「ナ……ナナミィは、そんなに彼の事が好きなの?」

 ミミエルがちょっと引き気味だけど気にしない。

「好きと言うか、理想のドラゴンなの~」

 女の子の好きそうな話題なのに、何でミミエルが引き気味なのか理由が分かった。知らず知らずのうちに、あたしがにやけ顏で体をクネクネさせてたからだ。

 そりゃ、気持ち悪いわ……


「ふ~ん。じゃあさ、もしバハムートが負けたらショックかしら?」

 ちょっといやな事を聞くミミエル。

「ショックどころか、寝込むかもしれないな」

 返事を盛ってみた。さすがに寝込むなんて無いよ。

「そうなんだ」ミミエルは素っ気なく言った。


 訓練も終わり、ミミエルは自分の部屋に帰って行きました。

 あたしは立ち上がり、バハムート様の側に歩いて行った。


「ねえ、ムート君」「お~い、バハムート~」

 あたしと誰かの声が重なった。

「はい?」返事をするバハムート様。


 横を見たら、ラビエルがトテトテ歩いて来た。気を抜いてる時にいきなり呼び掛けたら、ボロを出すかと思ったけど、これじゃどちらの呼び掛けに返事をしたのか分からないよ!


 でもバハムート様は、あたしの方を見て、しまったと言うような顔をしてた。

「な……なんです……かな? ラビエル様」

 何事も無かったかのようにバハムート様は言うけど、怪しすぎます。いま絶対ごまかしたよね?


「お! 今日の服は可愛いな!」

 などと言うウサギ。あんたのおかげで、確認し損ねたよ。

 そして、あたしのお尻を見てニヤニヤ笑うな。



・・・



 翌日あたしは、いとこのウサミィや獣人のグレースと一緒に街の中心部までお買い物に来ました。この前ディアナ様に服を買って頂いた、ベイス商店です。あまりいい思い出はないけど……

 あれからドラゴン族向けの商品が増えたそうで、今日はウサミィが新しい服を欲しいというので、皆で来ました。


「こんにちは~、ハンナさん」

 あたしはドアを開けて声を掛けた。

「ああ~、いらっしゃいませ、ナナミィさん」

 いそいで奥からやって来たハンナさんが、例のごとくつまずいた。

 あたしは、さっと腕を出して倒れるハンナさんを受け止めると、店にいた他の店員さん達が「おぉ~~」と拍手した。

「す……すみません……」

 ハンナさんが恥ずかしそうに言った。

 今日はフレアースカートなので、転けたら盛大にパンチラした事でしょう。それもちょっと見たかったかも?


 店長は新しい人に変わっていて、今度はイヌの獣人さんだった。

 ちなみにグレースはネコの獣人の女の子です。


 あたしがこの世界に生まれ変わって一番驚いたのは、トリエステには犬や猫が存在していなかった事です! それなのに犬や猫の獣人がいるのは、人に進化したからだというのがあたしの説です。

「ちょっといい店じゃない?」

 とグレースが言った。

 ネコなのに、語尾が『ニャン』じゃないなんて、凄くガッカリだ。


 話が脱線しましたね。


「ウサミィには、こんなのが似合うよ」あたしは服を見せながら言った。

「ん~~、ちょっと大人っぽくない?」首を傾げるウサミィ。

「あなたはこれぐらいシンプルなのが、雰囲気に合ってるのよ」

「これもいけてるよ~」グレースが持って来たのは、ゴスっぽいブラウスだ。

「あ~~っ、それそれ。それもイイ! ヨシッ、試着だ!」

「えぇっ?」あたしのテンションに、びびるウサミィ。

「ハンナさ~~ん。試着室借りる……」


 そう言った瞬間、体がビクンとなった。

 こ……これは、すごくイヤな感じだ……


 魔獣が現れる時に感じる、圧迫される感触。


 背筋がゾワっとして来た。



 そう感じた時、ブレスレットが震えた。通信機のバイブ機能です。

 あたしはブレスレットに指を触れた。こうすると声を出さずとも、頭の中で考えるだけで話が出来ます。

『はい、ナナミィです。魔獣ですか?』

『あなたも感じましたか? なら話が早いわね。ちょっとまずい事になりました。ワイバーンが出たのよ』

 いつも通りの口調で話すペギエル様ですが、言葉の端々に焦りが感じられます。


 ワイバーンは体長7~8mはある、ドラゴンの親戚みたいなものです。飛竜とも呼ばれています。空を飛び炎を吐き出せるし、知性もあるので魔物に分類されてます。ドラゴンと違うのは、翼が背中ではなく、腕の下に付いている事です。ゆえに、飛んでいる時は手が使えないと言うのが、唯一の欠点なのです。


『ワイバーンはドラゴニアに向かってますが、まだ距離があるので、バハムートさんに対処してもらいます。あなたは……ベイス商店でお買い物ですか? 今回はナナミィさんに出番は無いでしょうけど、一応待機してて下さいね』

 そう言われてペギエル様は、通信を切った。


 まだ遠くにいるのにこんなにプレッシャーを感じるなんて、何て魔力量なんだろう。でも、バハムート様なら大丈夫でしょう。



「ナナミィ、ナナミィ? どうしたの?」

 ウサミィがあたしの顔をのぞき込んだ。

 しまった。ちょっとボーッとしてた。


 取り敢えず今は、ウサミィの着せ替えが最優先ね。うふふ~~♪

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