表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/407

第18話 ナナミィ、ドレスをもらう

 今日もディアナ様の空中神殿で、魔法の特訓です。

 人間の七美の姿でやってますが、服はドラゴン用のままなので、寸足らずの服を着てるみたいで格好悪いですよ。ペギエル様は、下着を用意して下さったけど、上着は用意して下さいませんでした。ラビエルが用意してるそうだけど……


 この話題になると、ラビエルが目を逸らすんだよね。おかげで、今もって人間の姿で人前に出られないでいます。


 しかし今日は違った。

 ラビエルが自信満々に荷物を持って来た。

「待たせたな七美。さあ! 人間用の新しい服だぞ」

 上に掛けてあったカバーを取ると、ハンガーラックにたくさん服が掛かってた。


 色々なデザインのドレスや普段着が20着ばかりあった。

 そのどれもが、あたし好みの物だった。っていうか、見覚えのある服ばかりなのだけど? その中にあった服に、あたしは心臓が止まるかと思った……!


 それは、あたしが高校で着ていた制服だった……


 ジャケット、ジャンパースカート、そしてブラウス、どれも懐かしい物だった。

 他の服もよく見てみれば、お気に入りだったワンピースや、親戚の結婚式で一回しか着なかったドレス、そして……いつも着てたパジャマまであった。


 あたしは、パジャマを見てたら涙が止まらなくなりました。


 だって、ここにあるのは、永遠に失ったはずの物達なのだから……


「こ……これは、あたしが前に着てた物なの?」

「いや違うぞ。これらは七美の記憶から再現した物なのだ」

 確かに、よくよく見れば細かい部分が違う。


 でもそんな事はいいの。あたしは嬉しくてラビエルを抱きしめた。

「ありがとうラビエル。こんなに嬉しい事はないよぉ……」


「でも、これはナナミィがもと居た世界、『アース』の服でしょう? トリエステで使われている服とは、雰囲気が合わないんじゃないの?」とミミエル。

「あ……! そ……それは、また後で準備するのである」

 ラビエルが慌てて言った。そりゃそうか、地球の服じゃデザインが違うしね。


 それに、前世での世界は『アース』って言うんだ。


「こんなにたくさん、あたしの大好きな服を作ってくれて嬉しいんだけど、何で体操服とスクール水着があるの?」

 体操服と言っても、ハーフパンツなんだけどね。スク水は、男性に人気の旧式のタイプだ。ラビエルの趣味か?

「い……いやほら、懐かしかろうと思ってだな……、決して変な意味じゃ……」

 あたしが、抱いている腕に力を入れたら、苦しそうに笑っていた。


「まあ、いいんじゃない? ビキニとかきわどい物じゃなくて」と、ミミエルは言うけど、あたしにしてみれば、可愛くないのが問題なのだ。フリルを付けろ。


 なぜかペギエル様が、うんうんと頷いていた。



 あたしはさっそく制服を着てみた。なんと、背中が開くようになっていて、翼が出せますよ! よく出来てるな~~。さすがに服地はサージじゃなくて、似たような素材だった。あ、サージとはセーラー服とかに使われてる、厚手でサラサラした手触りの布の事だよ。


 で、次はワンピースを着てみた。レースとフリルがばっちり付いた、甘ロリ風のワンピだ。アースでは、ちょっと浮いてしまうデザインだったけど、トリエステでは逆にぴったりな服です。


 もちろん、ゴスロリ風のドレスも持っていましたよ。黒とピンクのすっごい可愛いの。これはドラゴンの方が似合うかも? でも着てみたら、なんていうコト! 以前は正直あまり似合わなかったけど、今のあたしなら超似合ってるよ!


 転生の効果なのか、顔つきが日本人的じゃなくて、ハーフのような雰囲気です。だからゴスロリでも違和感が無いのかも?

 じゃあ、次は次は……


「ねぇ。さっきから一人ファッションショーしてるけど、魔法の訓練は?」

 ミミエルが、すっかりあきれてた。

「あ~~……忘れてた……」

 あたしも自分にあきれた。

「今日は訓練になりそうも無いので、ここで終わりましょう」

 ペギエル様の一言で、今日の訓練はお開きです。




 ラビエルに送ってもらい、新しく貰った服と共に帰宅しました。

 帰り際、ラビエルにはいっぱいキスしてあげた。……ほっぺにだけど。


 自分の部屋に置かれた、たくさんの服と下着を見ると、また人間の女の子としてオシャレが出来るので、嬉しくてニヤニヤが止まりません。

 さて、これをどこに仕舞おうかな?


 ……そうだ、これどうしよう?


 冷静に考えたら、ドラゴンのあたしが、人間の女の子の服を持ってるのって変じゃない? おっぱいが無いのに、ブラジャー持ってるのは、変態趣味っぽいよ。パンツだって、どうやってもドラゴンには使えない形だし。そもそもドラゴンに、下着は必要ないし……


 あれ? 困ったぞ。


 どこに仕舞うかじゃなくて、どこに隠そう、だよ。


 隠したエッチな本を、見付からないか心配する男子の気持ちが理解出来てしまった。ほんと、これどうしよう?


 今数えてみたら、ドレスや水着なんかが23着、下着もブラが10枚、パンツは15枚もあった。けっこうな量があるよ。あたしの使ってる部屋の隣は、あたし専用のウォークインクローゼットだけど、この量は全部入りそうもない……


 部屋の中のタンスや本棚に、下着が入りそうな隙間がないか調べたが、まったく無かった。なんとかベッドの下なら入りそうだった。


 やってる事が、中学男子と変わらないので泣けて来た。

 あたしは女の子なのに……


 もちろん、ペギエル様やラビエルには、感謝してますよ。

 でも、こんなにたくさんじゃなくても良かったのに……

 そうだ、それに……


「どうせなら、物が入るブレスレットもくれたら良かったのに……ですか?」

「うん、そうそう。それも欲しかった……って、ペギエルさまぁ~~」

 気が付いたら、ベッドにペギエル様が座っていた。

 本当に心臓に悪い。


「私もあなたの事情を、考慮していませんでしたね。特別にそのブレスレットにも、収納スペースを付けてあげましょう」

 と、ペギエル様は言った。

「えぇっ? 本当ですか?」

「ただし、服が入る程度の……ですがね」

「え~~……」

 ちょっと落胆するあたし。


「じゃあ、腕を出して」と言ってペギエル様は、あたしの腕からブレスレットを抜いて、ご自分の翼で包み込み、何やら魔法を掛けておられます。


「さあ、これでいいわ。入れてごらんなさい。出したり入れたりする時に、呪文は必要ありません。考えるだけで出し入れ出来ますよ」

 あたしはブレスレットをはめて、ハンガーラックにくっつけて「入れ」と念じてみました。するとスッと消えて、ブレスレットがわずかに震えた。これは作動した事を知らせるバイブ機能かな?


「ではまた明日に」

 と言ってペギエル様は、帰られようとしました。

「いきなりパッと来られると、ビックリしますよ……」

 あたしはちょっと皮肉ってみた。

「ふふ……、あなたが可愛くてつい……ね」

 小さく笑うと、ペギエル様は消えた。


 いつもはジト目をしてるペギエル様が、あんなに優しい笑顔をされるなんて、予想外だった。あの方こそ可愛いペンギンですよ。


 でもやっぱり、わざとだったんだな……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ