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爆弾拾いがついた嘘 【改稿版】  作者: 生津直
第3章 血の叫び
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三人の夜


 一希が夕食の支度に取りかかると、ミレイは座敷でテレビを見始めた。このカラーテレビはいよいよガタが来ており、ときどき白黒になってしまうが、ミレイは側面を叩いてカラーに戻す技を心得ていた。勝手知ったる新藤宅といったところか。


 まもなく、作業を終えた新藤が座敷に顔を出した。


「あ、先生、お疲れ様です」


「こいつ今晩()まってくから、よろしく」


「はい、もちろん大歓迎です」


と答え、ミレイに目配せしてみせる。家出というからには泊まりがけは当然だろう。


 シャワーを浴びて戻ってきた新藤がミレイの頭をつつき、


「お前も何か手伝ったらどうなんだ」


と、一希の方を(あご)で示す。


「あ、先生、いいんです、そんな大がかりなものはないんで。ミレイちゃん、ゆっくりしてて」


 ミレイが「ほら見ろ」と言いたげな勝ち誇った顔になる。


「宿題ちゃんと持ってきてんだろうな」


「今日はないの」


 新藤は断りなくブツッとチャンネルを変えたが、ミレイも文句はないらしい。


「リアンとは仲良くやってんのか?」


「仲良くも何も、泣いてばっかじゃん」


「そりゃ泣くのも仕事のうちだからな」


「大体なんで今さら三人目なのよ」


「今さらってことないだろ」


「この年で妹生まれましたとかいう人いないから。学校で恥ずかしいよ。お前んちまだやってんのか、って笑われてさ。ほんと、いい年して何やってんのよ」


「いいじゃないか夫婦なんだから。年は関係ないだろ」


「子供の前でチューチューすんのとかも、どうかと思うし」


 一希は密かに感心する。さすが檜垣稔(ひがき みのる)伊達(だて)に世界を股にかけていない。


「夫婦仲がいいのはありがたいことだ。外でほいほいこしらえてくるような親父だったら恥ずかしいなんてもんじゃないぞ。学校でしっかり自慢しとけ」


「ね、ところでさ、二人はどうなの?」


と、ミレイは一希の方に視線を投げてくる。


「どうって何だ?」


「付き合ってんの?」


 一希がギャフンと叫ぶ前に、新藤が即答した。


「アホか。そんなわけないだろ」


「なんで?」


「なんでもクソもあるか。バカも休み休み言え」


「一緒に住んでて何もないとかあり得ないってみんな言ってるよ」


「おい、みんなって何だ? お前まさか学校でそんな話してんのか?」


「私がしてるわけじゃないよ。よく聞かれるの」


 ミレイが通っているのは、県内でも学力レベルの高い中学だ。軍や訓練校の関係者の子供が同級生にいても不思議はない。だとすれば、彼らが一希の住み込みについて親から聞きかじり、新藤と付き合いの長い処理士仲間の娘に質問を浴びせるのは当然かもしれない。


「適当に尾ひれ付けて盛り上げてんじゃないだろうな」


「あのね、でっち上げで盛り上がるほど世の中甘くないの。だから、ちゃんと真相を突き止めようと思ってお父さんに聞いた」


「そしたら?」


「『大人の事情に口出すな』って言われたから、みんなにもそう言っといたけど」


「あいつ、またなんでそういう誤解を招く言い方を……」


「事情って何? 微妙にいい感じとかそういうやつ? 今はそっと見守ってみたいな……」


「いい加減にしろ。それ以上しゃべってると物干しに吊るすぞ」


「そんなことしたらお父さんに言いつけるからね」


「お前ほんっといやな奴だな」


 まるで漫才だ。息の合った掛け合いに、一希は笑いを噛み殺した。




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