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爆弾拾いがついた嘘 【改稿版】  作者: 生津直
第2章 修練の時
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疑念


 帰りの車で尋ねる。


「永井さん、長年のお友達なんですか?」


「まあそんなとこか。元はといえば親父が世話になった人でな」


 といっても、永井は新藤の父親よりはだいぶ若そうだった。隆之介と新藤のちょうど間の世代だろうか。


「俺自身は実質、親父が死んでからの付き合いだから、六年……ぐらいか。出前の恩恵だけはその前から受けてるけどな。俺が高校入った頃から親父が取り始めて、お陰でうちの栄養事情が飛躍的に改善された」


 思わず笑みを誘われる。どこか人好きのする空気を持った永井を見ていれば、食堂の店主と客という間柄(あいだがら)が親しい友人関係へと発展したのだろうと想像がつく。




 一度本物のストロッカの解体を課してからというもの、新藤は自分に来た持ち込みの仕事を必ず一希に手伝わせた。


 新藤の月ごとの報酬明細にも、一希が解体した分が含まれるようになった。それに気付いた一希は、直接手に入るわけではないとはいえ、自分の作業が収入を生んでいるのだと誇らしくなった。


 しかし、喜びを感じたのはほんの一瞬。新藤が一希を実務に慣れさせるためだけにルールのグレーゾーンに踏み込んでやらせてくれていると思うと、申し訳ない気持ちで一杯になる。


 しかも、新藤自身には何のメリットもない上、一希にやらせれば失敗のリスクも高く、(みずか)ら手を下す以上に命がけだ。


 一方、一希の胸中ではナガイでの一件が尾を引いていた。


 星野の冗談を許さなかった新藤。同性愛を笑いものにすることが良いとは一希も思わないが、この国ではまだまだよくあることだ。ましてや相手は高校生。あれほど怒りを(あら)わにするのには何か個人的な理由があるのではと勘繰(かんぐ)ってしまう。


 永井氏はもしかしたら本当にそうなのだろうか。だとすれば新藤が彼をかばうのもわかる。が、一希の本当の関心事はその先にあった。


――あるいは先生自身が永井さんと……?


 ときどき一緒に釣りに出かけ、毎年元旦をともに迎えるというのは、友人間でもありうる話だと思う。ただ、もし恋仲にあるのだとすれば二人ともが未婚であることも説明がつくし、新藤が一希を住み込ませて支障なく暮らせるのも、そもそも異性に興味がないからだとすれば納得がいく。


 しかし、改めてそういう目で見ても、新藤が男同士仲睦(なかむつ)まじく過ごしているところなどは想像がつかなかった。


 かといって、どういう人なら想像がつくのかと問われれば、決して具体例を知っているわけではない。新藤にはそうであってほしくないからこそ否定したくなるのかもしれない。それはつまり……。


 一希は、自分の中に芽生(めば)え始めていた感情を改めて直視させられた。


 事実を知りたい。正面切って本人に聞こうかとも考えたが、なぜそんなことをと返されたら答えようがない。


 では、誰に聞くべきか。一希の頭にはすぐに答えが浮かんだ。




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