悲劇
バツン、と耳をつんざく音。正体を確かめる間もなく、体当たりでもされたかのような衝撃。一希の幼い体は宙に浮き、どさりと地べたに投げ出される。
――何⁉
耳の奥がキュイーンと鳴る。水中に投げ込まれたがごとく、外界ははるか遠い。波打つ視界。強烈な吐き気。手に触れた草をつかんで堪え、必死に呼吸を保つ。
――タッちゃんは?
すぐそこにいたはずの従兄。さっきの大きな爆発音と爆風。一つの理解に行き着きそうになり、一希は反射的に拒んだ。拒むための涙が滔々と流れた。
――嘘だ、嘘だ、嘘だ……。
この国の地中に無数に埋もれている大小の爆弾。図鑑やテレビにかじり付いて毎日見つめてきた、恐ろしい破壊兵器。それが目の前で炸裂したという事実を受け止めるなど、七歳の少女でなくとも不可能に近い。
身動きするたび、一希の左半身に刺すような痛みが走った。お気に入りのヒマワリ柄のTシャツには、不気味な染み。
――これは……血?
一希が真相を知ったのは何日も後のこと。あれは自分の血ではなく、従兄の忠晴のものだったのだと。
忠晴の血。
父や叔父、叔母と同じ血。
一希自身の体にも半分だけ流れている、声なき者の血だ。