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06 【なんでもステータスオープン】

「それで、どんな感じかな? 強くなれた?」


 ミスラは笑顔のままぐいぐいとくる。だが、強くなったというか、自分に何か変化が起きたという感じはない。これはザンギルと契約した時もそうだったから、加護を受けても体感的にすぐわかるものでもないのだろう。


 俺は能力やスキルに変化がないかステータスを開いてみた。


「わぁ、これがウィンくんのステータス?」


 ミスラが顔を横に寄せ、覗き込んでくる。

 近い……近いって……。

 俺の人生で、女の子がこんなに接近してきたことないんだけど、女の子ってこんな良い匂いするもんなの?


「スキルいっぱ~い! すごいねぇ!」


 心臓の鼓動が早くなり集中できない俺とは対照的に、ミスラは中空に映し出されるステータスに興味津々だ。


「ま、まあ、初級ばっかであんまり役には立たないけどね」

「え~、そんなことないよ。さっきだって【フラッシュ】使えたおかげでみんな逃げられたんだもん。ウィンくんはすごいよ!」

「そう、かな」

「うん。それに、初級スキルだってこれだけ取るのはそうとう大変だったはずだよ。ウィンくんは、努力できる人なんだね」


 えへへと言って、すぐ近くでミスラは笑顔を向けてきた。

 俺の能力を、こんな風に評価してもらったのは初めてだ。裏での努力、影での頑張り、やって当たり前だと思ってたことを、こういう風に言ってもらえるだけで救われる。


 俺は目頭の奥がじぃんと熱くなるのを感じた。


 いかん、このままだと涙が出てしまう。


「あ! これ!」


 感情が目のふちまで溢れそうになった瞬間、ミスラが声を上げた。

 おかげで涙は引っ込んでしまったが、泣いてるところを見られなくてよかったとしよう。


「【なんでもステータスオープン】! これがウィンくんの固有スキルなんだ。なんでもなんてすごそうだね」

「実際はそんなすごいスキルじゃなくて、他者のちょっとした情報しか……ん? なんでも?」


 俺の固有スキル名は【他者のステータスオープン】。【なんでもステータスオープン】なんて名前じゃなかったはずだ。


「そうだよ。ほら、【なんでもステータスオープン】」


 ミスラが指し示す先には、確かに固有スキル名として【なんでもステータスオープン】と書かれていた。


「どうしたの?」


 不思議そうな顔をする俺に、ミスラが尋ねてくる。俺は自分の本来持っている固有スキルをミスラに説明をした。


「そうなんだ。もしかしたら、私の加護の力で、スキルが変化したのかも」

「加護の力で……確かに」


 前のアステルでも、ザンギルの加護を受けてスキルの威力が上がるだけでなく、スキル自体が変化したりレベルアップしたりする場合もあった。

 今回の俺の状況も、加護が影響してるとしか考えられない。


「好奇心は未知への探求とか、そういった感情だよな」

「うん。知りたいっていう心への加護と、ステータスオープンっていう知ろうとする能力が合さった結果なのかも」

「まさか、俺の固有スキルと相性のいい加護があったなんて」

「私も、初めて加護が役に立って……嬉しい」


 ミスラは泣きそうになりながらも笑ってみせた。その表情を見ていると、俺まで泣きそうになってしまう。

 だけど、手放しで喜べない。スキルが変化したとはいえ、それがこの先の戦いで役に立つかどうかはわからないのだから。


「そうだね。早速試してみよう」


 ミスラも俺の意見を聞いて、顔を引き締め直した。

 まず俺は、【なんでもステータスオープン】の効果を調べた。スキル説明には、『なんでもステータスを見ることができる』と書かれている。


「そのまんまだな」

「だねえ」


 元々のスキル【他者のステータスオープン】は、人間や神、モンスターと使える対象が限定されていた。それがなんでもとなったと言うことは、植物だったりアイテムだったりにも使えるようになったということだろうか。


 もしそれだけなら、鑑定スキルとしては強化されたが、あまり戦闘の役に立つスキルではなさそうだ。


「ねえ、せっかくだから、私のステータス見てみてよ」


 ミスラはそう言って、ぴょこんと俺の目の前に立った。

 彼女の能力はさっき見たからあんまり意味はなさそうだけど、せっかくの好意だから受け取っておこう。


「うん、それじゃあ【なんでもステータスオープン】!」


 俺がスキルを発動させると、目の前に光る板のような物が浮き上がった。ステータス表示は変わらないようだ。


「へぇ、自分と見てるやつと変わんないんだね」


 ミスラも俺の後ろに回って自分のステータスを見る。

 表示方法は変わった感じはないが、なんだろう、表示されてる内容がさっき見た時となんか違うな。


 ミスラ

 種族:神族

 性別:女

 年齢:172歳

 身長:158センメル

 体重:43キルグル

 スリーサイズ:バスト8


「わぁわあわぁ! だめ! 見ちゃだめ!」


 俺が表示される情報を上から眺めていくと、ミスラが両手でステータスボードをかき消した。

 俺の背後から両手を伸ばしているから、胸がむにむにと背中に当たる。

 こ、この感触は、はちじゅう……いくつなんだ!


「だめだよ! 女の子には見ていいものと悪いものがあるよ!」

「ごめん、ってか、俺もここまで情報が見れるようになってるとは思わなかったから」


 表示内容が強化されたとはいえ、スリーサイズまで見れるようになるとは。

 しかし、ミスラ俺より年下っぽいけど172歳なんだ……。神族の寿命は人間の十倍って聞いたことがあるけど、本当なんだな。


「ほんとごめんね。でも、前まではこんなに詳しいステータスは見れなかったよ」

「そ、そうなんだ」


 ミスラは真っ赤になった顔を、両手で扇いでいる。


「他の項目を見てみるから」

「そうして。スリーサイズは見ちゃだめだからね!」


 俺は項目をスライドさせ、スリーサイズの項目を欄外に移動させた。

 次に出てきたのは能力値だ。


 攻撃:77

 防御:64

 魔力:124

 魔防:118

 敏捷:101


 以前よりも数値が細かく見れる。

 さらに項目を下に送ると。


 耐性属性:光・聖

 弱点属性:闇・呪


「このスキルすごいな。弱点属性までわかる」

「ほんと、すごいね!」

「おっと、まだ項目があるな」


 神族説明:

 好奇心を司る神。未知への探求を司る神の一族。

 170歳の時に地上へと降りたが

 

「わ、わ、これも見ちゃだめ!」

「え? あ、ごめん」


 神族説明って、こんな物まで見れるのか。

 だが、ミスラが必死になって隠そうとしたので、ほとんど項目は読めなかった。


「ほんとに見る気はなかったんだよ」

「それはわかってるよ。ちょっと恥ずかしかっただけ」

「おかげで、弱点属性が調べられるのがわかった」

「うん。あいつの弱点が分かれば、ウィンくんは色々スキル持ってるから、有利に戦えるよ」

「でもなあ……弱点を突けたとしても、初級スキルは基本威力が低いからなあ」


 さっき見たキメラ亜種のステータス、大体の数値ではあるが防御や魔防も200を超えていた。いくら有利属性でも、生半可な威力では致命傷には至らないだろ。


「ウィンくんは、もっと自信もっていいと思うんだけどなあ……そうだ、なんでもステータスを見れるんだったら、スキルのステータスも見れないかな?」

「スキルの?」

「うん。スキルの説明がもっと詳しく分かったら、効率的にダメージを上げる方法も分かるかも」


 その発想は盲点だった。知ることへの貪欲さは、さすが好奇心の神ってところだろうか。

 しかし、スキルも『なんでも』の中に入るんだろうか。


 俺は自分のスキルボードを開き、物は試しと【ファイア】のスキルのステータスをオープンしようとしたその時。


「ぐおぉぉぉぉ!」


 森から雄叫びが響き渡った。

1センメル=1センチメートル

1キルグル=1キログラム

です

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