【真実に辿り着く】
【真実に辿り着く】
斉藤邸のインターフォンを鳴らす。
ヒロシが確認した80代くらいの男性が出てきた。
「おはようございます。突然申し訳ありませんが、以前こちらに住んでいた海野さんはご存知ですか?」
見ず知らずの人の突然の質問に不信感を抱いた斉藤は見るからに嫌そうな顔をしている。
斉藤 「知らん。おたくどちらさん!?」
ハルヤ「突然ですみません。25年ほど前にこちらに住んでいた同級生を探してまして...。」
事情を可能な範囲で説明して斉藤の顔色を窺う。
こういったケースの場合、知っていても素直に教えてくれるとは限らない。
斉藤 「越してくる前のことは知らんから、隣の山口さんにでも聞いてくれ。」
ハルヤ「ありがとうございました。」
斉藤は本当に知らないのであろう。
ただこれだけでも重要な情報だ。
山口に聞いてくれということは、少なくとも斉藤より長く隣に住んでいるということになる。
早速、山口邸を訪ねてみると、70代後半くらいの女性が玄関から出てきた。
ハルヤ「おはようございます。突然申し訳ありませんが、以前こちらに海野さんが住んでいたと思うんですが...。」
山口 「海野さんはだいぶ前に引っ越したよ。」
山口にも可能な範囲で事情を説明する。
山口 「恵ちゃんね~...かわいそうだったね~...いい子だったのに~...。」
ハルヤ「やっぱり亡くなったって本当なんですか!?」
山口 「もう15年くらい経つんじゃないかな~?難しい病気だったみたいよ。」
ハルヤ「今更ながら、せめてお墓参りに行きたいんですが、どこのお寺かご存知ですか?」
山口 「海野さんの連絡先知ってるから、聞いてあげるよ。」
ハルヤ「え?連絡取れるんですか!? 引っ越し先の住所も教えてもらえないか聞いてください!」
トントン拍子に話が展開されて驚いたが、海野が承知してくれたらほぼ調査終了じゃないか...。
山口 「海野さんから、是非会いに行ってやって欲しい...とのことだよ。お墓の場所と今の住所はこれ...。」
渡されたメモには、霊園の名前と現在の住所、母親の連絡先が書かれている。
山口にお礼を告げ、霊園に向かう途中、いたたまれなくなりヒロシに電話してみる。
ヒロシ「お疲れ様です。進展ありました?」
ハルヤ「昨日の夜、酒井さんから連絡来て衝撃の結末に向かってる...。」
恵がすでに亡くなっていたことや、聴き込みで判明したことをヒロシに伝える。
ヒロシ「まじすか?依頼者に伝えました?」
ハルヤ「今からお墓と海野邸の確認行ってから報告しようと思うんだけど...めっちゃ気が重い。」
ヒロシ「ですよね。でもこれで調査終了ですよね?」
ハルヤ「終了といえば終了なんだけど、やりきれない心境だわ~。」
そうこうしてると霊園に到着したので、ヒロシとの電話を切り、受付で墓石の場所を聞いてみる。
海野家の墓石。まだ新しい墓石の横に恵の名前が刻まれている。
手ぶらで来てしまったので、後日花と線香を持って出直そうと思う。
《本日の調査経過》
・恵の他界確認
・海野家の引越し先住所
・母親の電話番号
・恵の墓石確認