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お父さんのロケット  作者: 水沢ながる
3/8

3 お父さんの元部下

 入院や看病に必要な荷物を用意するために、わたしはお父さんとお母さんが二人暮らしをしてる実家に向かった。

 お父さんの部屋に入ってみると、何だかやけに散らかっている。お父さんは几帳面な性格で、何事もきっちりしているのが好きだったのに。

「どうしたの、これ?」

「何だかね、お父さん最近何か探しものをしてたみたいでね。邪魔すると不機嫌になるから、そのままにしてたんだけど」

 ……とすると、やっぱりお父さんは返すべきものを探していたのだろう。真面目できっちりしていたお父さんが、返さなければならないものって、何だろう。余程のことがない限り、借りたものは翌日には返すような人なのに。

 着換えなどを出しながら部屋を適当に片付けていたら、押入れの中にダンボールの箱を見つけた。開けてみると、何かの部品のようなものがたくさん入っている。

 これは、お父さんが開発に関わっていたロケットの何かだろうか。

 ……お父さんと一緒に仕事をしていた人なら、何か知ってるかも知れない。そう思ったわたしは、以前家に来た年賀状やお父さんが使っていた手帳を開いた。

 退職した後も、変わらず年賀状などを送ってくれている人が何人かいる。その人達に連絡を取ろうと思ったのだ。


 突然電話をしたのに、お父さんの部下だった堀川さんは親切に対応してくれた。

 お父さんが仕事上で何か返していないものはないかと尋ねたが、堀川さんは首をひねった。

「そんなものはないと思いますよ。ご存知のように、伊藤さんは実直できちんとした方です。返さなければならないものは、退職までにちゃんと返却している筈ですよ。総務や他の課からもそんな問い合わせはありませんでしたし」

 ですよね、としかこちらも言いようがない。お父さんを知っている人なら、お父さんが返さないものなんてあったら印象に残らないわけがないのだ。

 それから近況などを話しているうちに、お父さんが現役だった時の話になった。

「伊藤さん、ロケットの開発には本当に力を入れてましてね。奥さんへのプロポーズの言葉も『あなたのためにロケットを作ります』だったらしいですし」

 ……え、そんな話、わたし知らないぞ。

「愛妻家で子煩悩で、若い社員からも伊藤さんみたいな家庭を築きたいと言われるくらいでしたよ。伊藤さん、真面目な反面、ちょっと天然なところがありましてね。部下からも人気があったんですよ」

 しみじみと言う堀川さんの言葉を、わたしは少しこそばゆいような気持ちで聞いていた。

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