罪と罰
真実を知った時、人はどう動くか
勇者は真っ直ぐ立ち向かい、智者は最善を考える
愚者は真実から目を背け、弱者はただ絶望する
状況が理解できない。──数分前、おれは"開けてはいけない"箱を開けた。中にそいつはいた。
身長は…だいたい130cmぐらいかな、巫女服みたいな白黒の服を着た髪の長い女の子がそこに立っている。よく見たら狐みたいな耳と尾がある。…喋らないし、動かない。置き物なのか……?ちょっと触ってm
「気安く触れるでない!!!」
うわーーーーー!!!!!!!!???!!?しゃしゃしゃ喋った!!!??───幼女は声を発し続ける
「偶像ではないのじゃ…声など発して当然であろう。なんじゃ、わらわが何なのか知りもせずにこの箱を開けたとでも言うのか?」
「知るも何も…箱の中にこんな幼女がいるとか検討もつかないし、何が起こるかも知らない…てか誰だよお前!!?なんでこんな所にいるんだよ!何してんだよ意味わかんねえ!!」
「幼女…わらわが…?」
「どう見たって幼い女の子じゃねえか、話し方はババアみたいだけどな」
「ふはははははは!!!わらわを幼女と呼ぶか!…いやすまない、何せ目覚めるのも鎌倉時代ぶりでのう、実年齢はとうに1200歳を超えておるのじゃ」
さらっととんでもない事を吐きやがる。2000歳オーバーだと?ただの人外じゃねえか何なんだこいつ一体…
「何も知らぬようじゃな…では教えてやろう、わらわは一体何者なのか、この箱は何の為に存在しているのかを」
箱に蓋をして、幼女(って呼んでいいのかな)は腰掛けた。はだけた太ももが眩しいなちくしょう
「ギリシャ神話の"パンドラの箱"は知っておるか?」
「ああ、開けたらとんでもない事になる、ってやつだろ?」
「雑じゃがまあいい。大まかな内容は同じゃ、この世に存在する災いや怪異…いわゆる負の力を世に出さないよう封じ込めてある箱。封魔箱と呼ばれておる。」
「ふのちから?かいい?」なんじゃそりゃ
「そうじゃ。神社の家系なのに何も知らんのじゃな…まあいい。そして、わらわは何故ここにいるのか、わらわは何者なのか──一応聞いておくが、お主にとって衝撃的な話かもしれん、本当に聞くのか?」
「ここまで言っといて出し惜しみはなしだぜ…どのみちおれはもう禁忌を破っちまったんだ、今更後には引けねえよ」
「そうか…分かった、お主に全てを教えよう。先程説明したように、この箱にはこの世の災いなどが封じ込めてあった。じゃが、あまりにもその負の力が膨大すぎて、とても封印しきれるものでは無かったのじゃ。その為に、人間たちはある方法を編み出した──ちょうど平安時代じゃったかな?1人の霊媒師が、自らの命を投げ打って、膨大な負の力を1人のおなごの体に封じ込め、封印する事に成功した。そして、子に伝えまたその子へと伝えていく事で、永遠に封じ込める──というものなのじゃ。」
大昔の記憶を辿るのはかなり疲れるようで、疲弊が見て取れる。
「…つまりわらわは、この世の負の力の結晶のような存在、絶対に目覚めてはいけない存在なのじゃ。生贄にされたおなごの怨念と負の力が結びつき、この世の全てを破壊し尽くす為に存在する死神──それがわらわじゃ。」
「…箱を…開けるなって…」
「ふむ。中に死神が封じ込められていることをお主の親は知っておったんじゃろうなぁ。だが、お主にまだ教えなかったばかりに、愚かなお主は封印を解いてしまった。じゃが、箱の中は些か退屈じゃったからのぉ、すぐに覚醒するのも面白くない。そこでじゃ、1年間の猶予をやろう。」
「い、1年の猶予?」
どうゆう意味だよ…1年後には世界滅ぼすよって宣告か?
「1年間の間に、再びわらわを封印出来れば、お主らは救われる。出来なければ滅ぶだけじゃ。お主かて世界を滅ぼすきっかけとなるのは嫌であろう?悪い話ではないと思うが」
こいつ…可愛い見た目で恐ろしい奴だ…だが、開けちまったのはおれだ。おれのせいで世界が滅ぶなんて、そんなの御免だぜ。
「…あぁ、やってやるよ。この世界はおれが護る、それがおれの贖罪だ!」
「面白い。おかしな話じゃが、わらわも協力はしてやろう。その方が面白くなりそうじゃからなぁ。」
「…あんたのこと、なんて呼べばいいんだよ。幼女って呼ぶのもなんか変だろ」
「名か…そうじゃな、妖狐、とでも読んでくれ」
ヨウコ?普通な名前だな…
「まあせいぜい楽しませてくれ。宜しく頼むぞ、ミコトよ」
「ああ、こっちこそ絶対また封印してやるからな。覚悟しとけよ、ヨウコ!」
生暖かい目は継続でお願いいたします☆