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#52

どう投稿するのか、すっかり忘れてしまいました。

 さて、それから数分後。俺はまだ学校にたどり着けないでいた。


 いや、正確には学校の場所自体にはたどり着いていた。つまり、校門の前までは。俺はそこで立ち尽くしていたのだ。


 俺の目の前には小学校の校門があり、校庭越しに壁に備え付けられた時計が見える。8時30分を過ぎようとしている。見たところ、まだ校庭に体操着を着た生徒たちはいないようだ。まだ間に合う。早く、この体操着を届けてやらなければならない。


 だが――。


 このまま中に入ってしまって良いのだろうか。中年に差し掛かった男が、挙動不審に校門をくぐる。客観的には「事案」ではないか。通報されても文句は言えない。頭に新聞記事が浮かんだ。いや、新聞だけなら良い。朝っぱらから小学校に侵入しようとした男がとっ捕まったというニュースは、さぞやネットの暇人どもを盛り上げることだろう。


 やはり、このまま帰るか。

 考えてみれば、体操着だって忘れ物の一つに過ぎない。大したことではないし、私服で参加できるかもしれない。うん、そうに違いない。俺はきびすを返して後ろを向いた。


 すると。


「あなた、何をやっているの?」


 ランドセルを背負った女の子が俺を見上げていた。濃紺に白いラインの入った、一見制服にも見えそうなワンピースをびしっと着こなしている。眉根を寄せたその表情は、好奇心というよりは不信感に満たされているのは明らかだった。


「いや、その・・・」

「あら、あなた、もしかして」


 女の子が言いかけたところで、車のエンジン音がした。音のした方を見ると、黒塗りの車が走り去っていくところだった。エンジン音が遠ざかるのを待ち、女の子は再び口を開いた。心なしか先程よりは表情の不信感が和らいだような気がした。


「さっき、車に轢かれかけてなかった?」

「え?」

「黒い車」女の子は道の向こうを指差した。「もう行っちゃったけどね」


 なるほど、さっき走り去っていった車は、俺を轢きかけた車だったのか。この女の子はそれを目撃したというわけか。


「見ていたのかい」

「うん。・・・近くでね。大丈夫だった?」

「ああ、おかげさまで」


 俺は体操着袋を小脇に抱え、腕をぐるぐると回した。女の子は体操着袋をじっと見た。


「その袋は何?」

「ああ、これは・・・忘れ物を届けに来て」

「忘れ物?あなたの子どもの?」

「あ、ああ。そうだよ」

「ふうん」


 女の子はじっと俺の顔を見てきた。俺は耐えきれず目線を逸した。


「男?女?」

「え?」

「その子、男なの?女なの?」

「ああ・・・女だけど」

「なんて名前?」

「里琴っていうんだ」


 女の子の眉がピクリと上がった。「もしかして、後藤さん?」


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