表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/56

#50


 そこで目が覚めた。

 この季節だというのに、寝汗をかいていた。まったく、なんという夢だ。

 今は何時ぐらいだろう。いずれにせよ二度寝はできない。目を閉じると、また夢の続きが始まってしまいそうだから。シャツをめくり上げる里琴の続きが。


「・・・里琴?」


 ベッドには里琴の姿はなかった。先に起きたのだろうか。そういえばカーテンの隙間から差す光が、いつもより強い。もしや。時計を見ると、案の定8時を過ぎていた。寝坊だ。


 俺は慌ててベッドを降り、リビングへの扉を開けた。


「わ!起きたの?」


 里琴はリビングにいた。着替えの真っ最中だったようで、まさにパジャマをめくり上げて脱ごうとしているところだった。まるで、さっきの夢のように。


「あ・・・すまん」

「おはよう。なんか目覚ましが鳴らなかったみたい!」


 里琴は後ろを向くと、そのままパジャマを脱いでいく。細い背中が露わになり、俺は思わず目を反らした。同居初期よりも恥じらいというか、遠慮がなくなっていっている気がする。授業参観どころか、いつ家で「お父さんに見てもらいましょう」が発生するとも限らない。


「寝てるみたいだったから、起こさなかったよ」

「ああ・・・」

「なんか、寝顔がニヤニヤしてたけど。なんの夢を見ていたの?」

「・・・忘れた」

「ふうん。今日は朝ごはん食べないで学校に行くね」


 里琴はてきぱきと着替えを終えると、ランドセルを背負った。

 そういえば今日は集団でダンスをする課題があるとかで、昨日は熱心に練習をしていた。


「忘れ物はないか?」

「大丈夫!行ってきます」


 慌ただしく靴を履き、里琴は駆け足で出ていった。この時間に出れば、何とか遅刻は避けられるだろう。

 俺は里琴の時間割表のコピーを確認した。1時間目は体育と書いてある。おそらく、それがダンスの授業なのだろう。


「なるほど、1時間目は体育か」


 この寒い中の体育は大変だろう。いや、この季節は体育館で授業を行うものなのだろうか。俺の頃はどうだっただろう。遥か昔すぎて思い出せない。かろうじて思い出せるのは、体操着に着替えるのが寒くて辛かったことだ。


 今の子どもたちも、着替えのときの寒さに苦労しているのだろうか。いや、今の御時世、空調が効いているのかもしれない。俺は机の上に置いてある体操着袋を見ながら、ぼんやりとそんなことを思った。

 里琴を送り出して気が抜けたのか、頭がぼうっとしている。もう一眠りするとするか・・・。


「・・・!」


 俺はあることに気が付き、現実世界に引き戻された。俺が見ているのは、まさに体操着袋だ。中には体操着も入っている。1時間目に体育がある以上は、ここにあってはいけないものだった。


 だから忘れ物はないかと確認したのに。言わんこっちゃない。


「・・・ま、俺の責任じゃないか」


 俺は声に出して呟き、ソファに腰を下ろした。そう、俺はちゃんと注意した。責任は果たしているのだ。

 やはり二度寝することにしよう。ごろりとソファに寝転がる。

 

「・・・」


 眠れない。頭の片隅では計算が始まっている。着替えに3分。家を出て学校まで、ダッシュで7分。計10分。


 俺は薄目を開けて時計を見た。時刻は8時15分を回ろうとしている。始業時刻が8時30分。

 間に合う。

 いやいや、待て。だいたい、学校までたどり着いたとして、どうやって教室まで届ければ良いというのだ。校門をくぐった時点で不審者ではないか。保護者だと主張したところで、それをどう証明する?


 俺は目を閉じた。また薄目で時計を確認する。17分。まぶたがピクピクしてしまう。

 ええい、鬱陶しい!

 俺は跳ねるように起き、1分で着替えを終え、つむじ風のように家を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ