#46 変態の正体③
「あまり・・・クラスに溶け込んでいるとは言えないかもしれません」
「・・・」
「里琴ちゃんは転校してきて、昔テレビに出ていたこともあって・・・生徒たちも少し遠巻きに見ているのかもしれません」
たまちゃんから聞いたとおりだった。担任ではない伊藤先生になついているのも、クラスにいたくないという理由があったのかもしれない。
「出る杭は打たれてしまうということですか」
「そう、ですね。あとは、あのクラスには、芸能活動をやっている子もいるので――」
伊藤先生がそこまで言いかけたときだった。俺は背後に気配を感じ振り返った。すると、里琴の顔がすぐ近くにあった。
「タヌキ、タヌキ!」
「こら!」
里琴は俺の頭に葉っぱを乗せようとしていた。俺が追いかけるふりをすると、たまちゃんと2人でわーっと駆け出していく。
「ふふふ。子どもって面白い。どうしてタヌキなのかしら」
「さあ・・・不思議ですね」
まさか伊藤先生にタヌキのキンタマ話をするわけにもいかず、俺はあいまいに誤魔化した。
2人がベンチに戻ってきたので、里琴の学校の話はそれきりになってしまった。
「では、私もそろそろ学校に戻らなければいけないので」
「えー、ウチに来ればいいのに」
「無理を言うんじゃない。伊藤先生はお忙しいんだ」
「そうだ。里琴ちゃんは授業参観のことは話したの?」
「あ・・・」
里琴はばつの悪そうな顔を浮かべた。
「ダメじゃない、ちゃんと言わないと。実は来月、授業参観があるんです」
「授業参観・・・」
「平日ですが、お母さんだけでなく、お父さんが来る生徒もいます。お時間があれば是非いらしてください」
「はあ」
授業参観という言葉が現実味を帯びてこない。
もちろん、頭の中では分かる。母親や父親が教室の後ろに並び、子どもたちが授業を受ける光景はすぐに浮かぶ。だが、その中に混じっている自分の姿は、頭の中で像を結ばなかった。
「里琴ちゃん?お知らせのプリントは先生に渡されたわよね?」
「うん・・・」
「じゃあ、あとでお父さんに渡しておくこと。お父様、詳しくはそれを見てください」
伊藤先生は丁重なお辞儀をして去っていった。




